戦場の悪魔

8話 訓練 1

「ふっ、ふっ、ふんっ!」

 兵舎に戻った俺は早速素振りをしていた。
 中庭には兵士たちのために用意された訓練用剣もあるが、俺がいま振っているのは今日買ったばかりの黒剣だ。

 四方から迫ってくる敵をイメージし、足腰を使って長剣を振る。
 その流れるような動きが、決してワンパターンにはならないように意識する。
 剣が体に馴染むのを感じながら、俺は明確な成長を感じていた。

「強く、なってる……」

 先の戦争を乗り越え、俺は強くなった。
 それも――複数回レベルアップを経験したかのように、数段上へ。

これはどう考えてもおかしな成長速度だ。
 早く比較的落ち着いた状況で、脳内に響く声を聞けるタイミングが欲しい。

 満足いくまで剣を振り続け、ひとまず水分補給でもするか……と切り上げる。
 その時――視線を感じ、俺のことを見ていた人物がいたことに気が付いた。

「……あ、お疲れ様です!」

 1階級昇進されたばかりの、俺の直属の上官である――バルト中尉だった。

「ご苦労、アルキス曹長――って、そんなに堅くなるなよ。オレが勝手に見ていただけだからな」

 慌てて敬礼をすると、俺の元に歩いてきた中尉はそう言って笑う。

「それにしてもいい剣筋だ……それは?」

 興味深そうな視線を向けられたのは、俺が持つ長剣。
 剣筋を褒められ喜びながらも剣を軽く持ち上げ、説明する。

「褒賞で戴いたお金で買いました。かなり高かったんですが、これが一番しっくりきて」

「命を預ける武器だからな、良い判断だ。……そうだ」

 そこでバルト中尉は何か思いついたのか、立て掛けられている訓練用剣の方に歩いていき……2本手に取って戻って来た。

 そして……こう持ち掛けてくる。


「どうだ――手合わせ願えないだろうか」


 突然の申し入れ。
 その真意を測りかね、俺は間抜けな声で反応した。



「……ふぇ?」

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