世界実験開始
第一章 その1
大日本皇国の本土奪還作戦は順調に進行し、いよいよ下田を残すのみとなった。
今回の戦闘に勝利すれば、十六年に及ぶ共同国軍との本土戦闘も終わり、皇国軍は息を吹き返すだろう。
だがすぐに終わると思われていた下田奪還作戦は、共同国軍の激しい抵抗と味方の連戦による疲弊により、思わぬ接戦となってしまった。
戦いの勝敗は主に勢いで決まることが多い。当然だ。負けるかもしれない戦に、人は好んで命を差し出したりはしない。我が身可愛さに戦場を離れ、勇敢な兵士は孤独の中でその生涯を終える。
軍数 ではなく 軍勢 と書くことからも、戦いにおいて勢いがいかに重要かわかるだろう。
今回の任務は、敵軍への強行奇襲による戦線支援。つまりいつも通りの戦闘だ。
  上代涼河率いるイシュターク部隊は、伊豆半島沿岸を沿うように戦場に向かっていた。
「もうすぐで接敵する。二人とも、準備はいい?」
戦友へ向け、涼河は声をかける。
「問題ないよ」
落ち着いた声音で答えたのは、戦闘支援型イシュタークの一条時雨。
「私のことは気にしなくていいから、自分の戦闘に集中して」
「了解。圭佑は?」
「大丈夫に決まってんだろ? 任せとけって!」
走りながらも胸を叩くのは、涼河と同じ単独戦闘型イシュタークのら片山圭佑。
二人から放たれた言葉の中に恐怖はなく、戦いへの迷いなき覚悟が周囲の空気を震わせ、大きな波となって涼河に伝わる。
初陣から早二年。数々の戦場を生き抜いた戦士達の塊は洗練され、宝石の如き見事な輝きを放っていた。
その光が生み出す闘志の強さは、まさに猛者という表現がふさわしい。
一人を除いては。
「涼河! あそこだ!」
敵軍の後続部隊が見えた。銃剣部隊と大砲による遠距離支援部隊混合である、共同国軍第二戦線だ。
「戦闘は迅速かつ最小限を心がける!」
涼河の号令が響く。
そして──、
「──戦闘開始!」
今回の戦闘に勝利すれば、十六年に及ぶ共同国軍との本土戦闘も終わり、皇国軍は息を吹き返すだろう。
だがすぐに終わると思われていた下田奪還作戦は、共同国軍の激しい抵抗と味方の連戦による疲弊により、思わぬ接戦となってしまった。
戦いの勝敗は主に勢いで決まることが多い。当然だ。負けるかもしれない戦に、人は好んで命を差し出したりはしない。我が身可愛さに戦場を離れ、勇敢な兵士は孤独の中でその生涯を終える。
軍数 ではなく 軍勢 と書くことからも、戦いにおいて勢いがいかに重要かわかるだろう。
今回の任務は、敵軍への強行奇襲による戦線支援。つまりいつも通りの戦闘だ。
  上代涼河率いるイシュターク部隊は、伊豆半島沿岸を沿うように戦場に向かっていた。
「もうすぐで接敵する。二人とも、準備はいい?」
戦友へ向け、涼河は声をかける。
「問題ないよ」
落ち着いた声音で答えたのは、戦闘支援型イシュタークの一条時雨。
「私のことは気にしなくていいから、自分の戦闘に集中して」
「了解。圭佑は?」
「大丈夫に決まってんだろ? 任せとけって!」
走りながらも胸を叩くのは、涼河と同じ単独戦闘型イシュタークのら片山圭佑。
二人から放たれた言葉の中に恐怖はなく、戦いへの迷いなき覚悟が周囲の空気を震わせ、大きな波となって涼河に伝わる。
初陣から早二年。数々の戦場を生き抜いた戦士達の塊は洗練され、宝石の如き見事な輝きを放っていた。
その光が生み出す闘志の強さは、まさに猛者という表現がふさわしい。
一人を除いては。
「涼河! あそこだ!」
敵軍の後続部隊が見えた。銃剣部隊と大砲による遠距離支援部隊混合である、共同国軍第二戦線だ。
「戦闘は迅速かつ最小限を心がける!」
涼河の号令が響く。
そして──、
「──戦闘開始!」
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