異世界クロスロード ゆっくり強く、逞しく

アナザー

第49話 新しい家族

ラスクさん達を屋敷に招いて初めての朝が来た。
昨日は面倒な一日だったがそれなりに楽しめた。
決闘も無くなってくれたしね。
決闘で死なずに済んだのが一番の報酬だろう。
朝の食卓には結構な大人数が居た。
セリス、マルチ、ミミ、サリスさん。
ラスク、リンク、マナ、ガンダルさん。
うん、いつの間にか賑やかになってるね。

・セリス
「みんな、おはよう。
今日はみんなに集まってもらった。
既に知ってる人もいると思うが、
改めて自己紹介をしておこうと思ってな。」

いつもならサリスさんはギルドに向かってる時間だから、何故食卓にいるのかちょっとビックリしていたが納得できた。
確かに自己紹介は基本だよね。
しかし、ミミさんの真剣な表情が気にかかる。

・セリス
「食事しながらで良いから順々に挨拶していこう。
まずはライオット、お前から頼む。」

・「え?俺から?」

・セリス
「この屋敷の主なんだから当たり前だろう?
それとも最後にするか?」

・「ん~、どっちでも良いよ。
主ってのには慣れないけどね。
折角発言してるからこのまま自己紹介するよ。」

俺は息を整えて挨拶する事にした。
とは言え殆どの人が知ってるから適当でいいか。

・「えっと、ライオットです。」

、、、、
、、、、
、、、沈黙。

・サリス
「ブッハ!」

サリスさんが噴き出す、俺変なこと言いました?
急に恥ずかしくなってきた。
周りを見渡すとみんな唖然としている、、、

・セリス
「屋敷の主の自己紹介じゃないな。
お前らしいと言えばらしいけどな!」

どうやら自己紹介が淡白すぎたようだ。
どうしよう、もう少し話すべきか、、、

・セリス
「まぁいいや、ライオットはこういう奴だ。
特に着飾りもしないし気負ったりもしない。
何考えてるか解らないことが多いが、、、
一言でいうと良い奴だ。
だから安心してくれ、ガンダル。」

ガンダルさんに安心をアピールしたかったんだな。
そうならそうと教えておいてほしいです。

・セリス
「すまんなライオット。
実は既に自己紹介は終わってるんだ。
お前の人柄を知りたいとガンダルから申し出があってな。どうだ?ガンダル。」

・ガンダル
「我が名はガンダル、獣人国出身だ。
ライオット殿、助けてくれた事誠に感謝する。
ひとつ聞きたい、あの土地を明け渡したのは何故だろうか?」

確かに疑問に思う所だろうね。
その気になれば取り返す事も出来ただろう、、、

・「後腐れない様にしたかっただけだよ。
丸く収まるなら手放す事も考えれば違う答えも出てくると思ってね。
どうしてもあの土地が必要なら手に入れようか?」

思いもよらない発言に驚くガンダル。
考えもつかなかった答えが出てきたようだ。

・ガンダル
「いや、それには及ばない。
それ程思い入れは無いからな。
失礼な発言をしたようだ、謝ろう。
しかし、ライオット殿は直ぐにでもあの土地を取り戻せるほどの力を持っているんだな、、、
無礼を承知で聞こう、、、
この先、我々をどうするのだ?」

ふむ、かなり警戒しているな。
守るべき者が居るんだし慎重になるのは当然か。
見た目からは想像できないけど意外と知能派だな。
しかし気になる、ミミさんの眉間にしわが寄っているのだが、どうしたのかな?

・「具体的には何も考えてないかな。
とりあえずガンダルさんや皆がどうしていきたいか、要望が聞きたいと思っているよ。
俺としては君達の支援をしていきたいかな。」

・ガンダル
「何故だ、、何故昨日知り合ったばかりの我らに味方する?」

おっとそう来たか。
美味しい話には裏があるっていう言うからな。
でもこうなると説得が非常に難しいよな。
ん~、どうしようかな。

・マルチ
「私はハーフエルフです。
同じ境遇の仲間に味方する事はおかしくないと思います、この理由では納得できませんか?」

マルチからの援護射撃。
ありがたやぁ~
よく見るとやっぱりミミさんが更に凄い真剣な顔をしている、何かあるのだろうか?

・ガンダル
「君もハーフエルフだったのか、、、
それならば納得しなくもない、しかし今までの我々の受けた傷を考えれば人間を信じる事に関しては簡単にはいかないのも理解して欲しい。
私はラスク達を危険に晒したくないのだ、、、」

・「難しい問題ですよね、、、。
どうしようかな、俺的にはこの屋敷を住居にして暫く住んでもらおうと思ってましたけど、居心地悪いかな?」

・ガンダル
「本当に申し訳ない、、、
ライオット殿を信じないわけではないんだ。
ただ、自分自身今までの裏切りが多すぎてどう捉えれば良いのか解らなくなっている。」

余程の事があったんだろうな、、、
ミミさんは目を閉じで腕を組みはじめた。
何を考えてるんだろう?

・「こちらこそ申し訳ない。
ガンダルさん達の苦しみは、経験していない俺には理解できない事だと思う。
解った様な発言は簡単には出来ない。
出来れば、少しだけ時間が欲しい。」

・ガンダル
「時間?それはどういう意味だ?」

・「直ぐに信じろとは言わない、俺がどんな人間でガンダルさんにとって信用できるかどうか見極める時間が欲しいという意味ですね。
深い意味なんてないですよ。
ただ俺がそうしたいだけです。」

暫くガンダルさんは俺を見ていた。
鋭い視線、獣人族独特の目だ。
半獣人とは言え殆ど見た目は獣人だからな。

・ガンダル
「この屋敷に俺の様な半獣人が居ると分かれば周りの奴らに何を言われるか解らないぞ?」

・「その辺は気にしないので大丈夫です。
騒ぎ出したら俺が動く前に国が動きそうな予感がしますしね」

ここは正直に答えておこう。
何てったて国の隠密が居ますしね。
てかミミさん、今コクっとなってませんでした?

・ガンダル
「国が動く?ただ一人の為にか?
国がそれほど軽率に動くわけないと思うが。
流石に自己評価が高すぎなんじゃ、、、」

あ、、、何だか殺気が、、、

・「ストップ、ミズキ!」

気が付くとガンダルさんの首筋に刃物が当てられていた、ミズキの登場である。
やっぱり居たね、ミズキさん。

・ミズキ
「国の事をバカにするのは良いが、
アタシの旦那をバカにすることは許さない。」

凄まじい怒気ともに現れたミズキ、まずは国の事に対して怒りましょうね?
そして脅さないで、この場の空気が悪くなるから。
ほら、ミミさんがちょっとビックリして起きちゃったじゃないか。

・ガンダル
「い、いつの間に、、、」

・ミズキ
「黙って聞いていたが、、、
ライオットの悪口は許さない。
マルチとセリスも我慢していたと思う。
だがな、あくどい貴族の中に単身で乗り込み、あんたらを救ったのは誰だ?
疑う気持ちは解るがな、、、
だが信じる事を忘れれば救いは無いぞ。」

ミズキのキャラがイマイチ掴めない。
でも確かに言ってることは正しいと思う。
俺も引きすぎたかな、ちょっと反省。

・「無償じゃ流石に信じきれないよね。
じゃあ、こうしよう。
ガンダルさん、あなたには俺の護衛を依頼したい。
報酬はラスクさん達を含めた4人の生活できる環境を提供する。」

依頼形式で頼んでみた。
どう出るかな、、、

・ガンダル
「もしも、その依頼を断ったらどうなる?」

・「ん~、自由にしていいよ。
この屋敷にそのまま住んでもいいですし、どこかに移りたいなら手配しますし、あの土地に帰りたいなら取り返しますし。」

・ガンダル
「疑うだけでは救いは無いか、、、
解った、護衛の依頼を受けよう。
いや、受けさせてくれ。」

ガンダルさんが頭を下げてきた。
どうやら交渉成立みたいだ。
安心したのか、ミミさんが今度は露骨にコックリコックリし始めた。

・「ミズキ、助かったよありがとう。」

・ミズキ
「妻として当然の事をしたまでです」

渾身のドヤ顔でマルチとセリスを見る。
マルチもセリスも特に気にしていない様子だったのが不思議ではあったが、その後のミズキの悔しそうな仕草が印象的だった。
なんだろう、気にしない様子なのがドヤ顔に対してのカウンターなのかな?

・セリス
「話は纏まった様だな。
我慢するのは少しきつかったが上手く纏まってよかった、ラスク達もこれで安心だろう?」

・ラスク
「はい、本当にありがとうございます。
セリスさん、マルチ様。
これからよろしくお願いします。」

ラスクに続き、リンクとマナも頭を下げる。
ガンダルさんはその様子をボーっと見ていた。
どうやらラスクさん達の答えは最初から決まっていたようだね。

・ガンダル
「これは一体どういうことだ?」

・マルチ
「簡単な話よ。
ラスク達は初めからここに住むつもりだったの。
あなたの気持ちを知りたかったから一芝居うっただけ。当然、あなたがここを出ていく選択をしたら付いて行くつもりだったらしいけど。
あなたがラスク達を必死に守ってきた事が伝わる話よね。これからは一人じゃなくて私たちと一緒に守っていけば良いんじゃないかしら?」

俺を見るガンダル。
俺もぽけーっとしていたらしい。
結局、俺とガンダルさんだけが知らない話で、無駄にやりやってただけという事だった。
ミミさんは遂に限界が来たようで、完全に眠りに入っていた。

・「なんだか、無駄なやり合いだった気がする。」

・ガンダル
「確かに、、、初めから言ってくれれば。」

・サリス
「そうでもないわよ、私たちが和解しても肝心のガンダルさんがライオットさんを信じないと意味がないと思うの。
必死に守り続けてきたガンダルさんは慎重になりすぎ、一方でライオットさんは楽観的過ぎ。
お互いを理解しないで生活してもどこかでぶつかることは明白だもの。
だったらお互いに言いたいこと言って話し合った方が分かり合えるんじゃない?
お互いに良い人なのは分かり切ってることだし、最悪殴り合えば分かり合えるんじゃないかしら。
男って面倒だけど単純よね。」

最後の方で結構ディスられたな、、、
でも何となく話が分かった、そしてサリスさんがここに居る理由も。

・「楽しんでましたね?サリスさん」

・サリス
「ふふふ、どうかしらね!」

セリスやマルチが怒らなかったのも、
ラスクさん達が発言しなかったのも、
全てサリスさんの策だな。

・「とりあえず話がまとまったから良いか、、、
サリスさん、あんまり俺を虐めないでね。」

クスクスと笑うサリスさんはとても綺麗だ。
そして楽しそうにしている姿が印象的だった。
こうして俺の護衛にガンダルさんが付くことになったが、策にはめられた2人は意外とあっさり仲良くなった。
ガンダルは護衛の仕事をするべく屋敷を出る時は必ずついてくる事を誓う。
心強い仲間が出来たが、二人きりで出歩きたいマルチにとっては迷惑な話となってしまった。


 
~登場人物~
・ライオット 主人公
いつの間にやら嫁が3人になり、デカい屋敷も手に入れたラッキーな人。
他にも2人ほど嫁の仲間入りをしようと動いている人物が居る。

・セリス
ギルド長で氷の魔法使い。
ライオットの新生の義を受け止めて妻となる。
ライオットが一番頼りにしている人物

・マルチ
ハーフエルフの魔法使い。
ライオットの妻という事を誇りに思っている。
2人きりでいたい、けど常に邪魔が入ることが最近の悩み

・ミズキ
オルドラ王国元隠密でライオットの妻。
元とはいっても国王からの命令は一応聞いている。
ライオットの身辺調査と護衛を頼まれているが、身辺調査の事はあまりやる気がない。

・サリス
ギルドの総務でセリスの姉。
ライオットの近くで起こる騒動が想定外の事ばかりで楽しくて仕方がない。その事でギルドのローズと話している時が至福の時。

・ミミ
ギルド工房の昼部門受付。
ライオットから新生の義を受けたいのだが母に猛反対されて受けられなかった。
虎視眈々とライオットを狙っている。
母は拳聖ナナ。

・ラスク
ハーフエルフの娘。
前回ライオットとマルチに助けられた人物。
マルチの素性を知り慕い始めた。

・リンク
ラスクの弟
ラスクと共にマナを守っている

・マナ
ラスクの妹と言っているが血の繋がりはない。
正体は土の精霊界の姫、マルチを心底慕っている。

・ガンダル
ラスク達を死に物狂いで守ってきた半獣人の男性。
信じる事を怖がっていたがサリスの策にはまりライオットと行動を共にすることになった。
 

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