女神の手違いで殺された俺は、異世界にて機械装甲を纏い美少女達と共に冒険ス!

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8話「女神についての噂」

「おーきーてー! 下さいよー! もう朝を過ぎてお昼真っ只ですよ!」
「……何だよ? もうちょっとだけ寝かせろよ……」

 床で寝ている俺の耳元でヴィクトリアの高音ボイスが響くと、心地良かった夢から強制的に現実世界へと引き戻される。

「ユウキもヴィクトリアと同じく寝相が悪いんですの? それとも起きてきた私達にあわよくば踏まれたいという願望でもお有で?」
「何だそうなのか? ならオレが魔王軍四天王を倒したご褒美に好きなだけ踏んでやろう。だけど昨日は一日中ブーツを履いていたので蒸れていて少し匂いがするかも知れないけどな。……それともユウキはブーツを履いたままの方がいいか?」

 俺はヴィクトリアから視線を外して二人に向けると、そこにはパトリシアが食器を片手に机に料理を並べていて、ユリアは椅子に座りながら足を組んでいる。

「いや、それは魅力的な提案だが今は遠慮しとくよ」
 俺はその言葉と同時に重たい体を床から起こして立ち上がる。

 すると後ろから。
「キモッ。いまこの男は踏まれる事を魅力的と言いましたよ」
 ヴィクトリアが人数分のナイフとフォークを手に持って言ってきた。

「今更何を言ってますのヴィクトリア? ユウキの変態は今に始まった事ではないでしょうに」
「なーあー。そんな事よりも早く飯食べようぜ。ずっと寝ていたせいで胃の中が空っぽだ」

 パトリシアは食器を並べ終えるとそのまま席へと座り、ユリアは並べられた美味しそうな料理に目が釘付けのようだ。
 このクオリティの高い料理を見るに恐らくヴィクトリアの手製だろう。
 相変わらずこれぐらいしか取り柄のない女神だ。






「「「「頂きます!!」」」
 全員が席へと座ると俺達は手を合わせて恒例の言葉を述べる。

 そして俺を含め皆は相当お腹が減っていたのか、物凄いスピードで目の前料理に喰らいつている様子だ。
 それでもパトリシアは流石はお嬢様と言うべきだろうか、他の二人と比べて食べ方が圧倒的に上品なのだ。これは見てて実に気持ちが良い。

「あっ、そう言えば魔王軍関係の話はどうなったんだ?」
 ユリアはサラダを食べる手を緩めると俺に聞いてきた。

「あぁそれならお前達が寝ている間に済ませといたぞ。……ちょうど良いし今ここで少し話しとくか」
 俺はコップ入っている水を一口飲むと皆に昨日の夜の出来事を話し始めた。
 
 その時にローレットから貰った首飾りを見せるとパトリシアとヴィクトリアは「こんな綺麗な宝石は私の家にもないですわ」とか「その首飾りは言い値で売れそうですね!」と言っていた。

 しかしユリアだけは「それには何か禍々しい念が込められているから、余り身に着けとかない方がいいぞ」っと何気に怖い事を言っていた。

 皆は俺が話している間に食事を終えると、パトリシアとユリアがこんな事を言ってきた。
「そう言えばローレット達と戦っている時にヴィクトリアがとかとか言ってましたけどアレは何なんですの?」
「あーっ、言われて見れば確かにそんな事を言っていたな。二人とも一体どういう意味なんだ?」

 …………あぁぁぁ!! しまったぁ!!
 やべえ完全に忘れていた!
 そうだよあの馬鹿女は戦っている最中に自身の事を堂々と公言していたんだっけか!
 
 おいおい、これどうするんだよ?
 一応バレてはいけないとかそういう規則は無いと思うが……。
 女神ってこれ言った所で信じて貰えるのか?


 俺はさり気なくヴィクトリアに視線を向けると、ヴィクトリアのヤツも困っているのか口元を歪ませて俺を見ていた。

 だけど今更誤魔化しが効くとも思えないし、ここは思い切って言った方がいいのではないだろうか。
 思い返せばパトリシアとユリアには明確に俺達の目的を話していたかった気がするしな。
 むしろこれはそれらを明かす絶好のタイミングかも知れない。

 
 俺はそう決心すると。
「それは俺からは話すよ。ついでに俺達が何で冒険者をやっているのかもな」

 パトリシアとユリアに交互に視線を送ると二人は真面目な表情で俺を見てくる。

「実は俺とヴィクトリアは魔王を倒す事が目的で日本と言う国から遥々ここに来たんだ。そしてヴィクトリアことコイツは……」
「だあぁっ!! 待って下さい! わ、私から話します! 自分の事は自分で話しますっ!」

 この流れでヴィクトリアの事もパパッと説明して終わらせてしまおうと思ったのだが、変なとこでヴィクトリアにはポリシーがあるらしい。

「……コホンッ。見ての通り私の正体は”勝利の女神ヴィクトリア”です。そしてこのユウキを勇者としてこの世界に送り込んだ張本人なのです!」

 まぁ……確かにそうだけどさ。そんなに胸を張っていう事かね?
 しかも無駄にドヤ顔決めてるし。

 さて、あの二人の反応はどうだろうか? やはり簡単には信じて貰えない話ではないだろうか。
 女神の実在とか神話級にぶっ飛んでるしな。

 俺はそんな事を思いつつパトリシアとユリアに視線を向ける。
 しかし二人は俺の想像していた反応ではなく――。

「「はぁ……。やっぱりそうだったか……」」
 と、何故か深い溜息を吐きながら二人は頭を抱えていた。

 あれ? 意外にも驚かれないだと?
 俺の想像ではてっきり「マジですの!?」とか「いやいや、そんな話あるわけないだろ」とかを期待していたのだが……。

 これにはヴィクトリアもどう反応したらいいのかと、二人を交互に見ながら困っている様子だ。
 まさか自身の事を公言してこんな反応されるとは……やはりコイツは本当に女神なのか?

「てか二人とも。そのやっぱりそうだったって何の事だよ? 俺すごく気になります」
 
 すると二人は抱えていた頭を上げて俺を見てくる。

「私は日本と言う国を知りませんが、女神ヴィクトリアという名前には凄い覚えがありますわ……」
「あぁ奇遇だな。オレも凄い覚えがあるぞ……。通りで名前が似ていると思ったわけだ。てっきり私は信仰心が高すぎて同じ名前にした痛い娘かと思っていたのだがな……」
「な、何だよ……二人してそんな勿体ぶって……」

 しかも信仰心って気になるワードが聞こて来たのだが。
 もしかしてコイツ、この世界ではちゃんと女神として信仰されているのか?
 いやそもそもヴィクトリアはこの世界の女神だったのか!?

「い、痛い娘じゃないですよ! ちゃんと女神ヴィクトリア本人です! 見て下さいよこの純白の髪に人間離れした美肌をっ!」

 ヴィクトリアは机に身を乗り出すと自らを必死に女神だとアピールしている。

「はいはい。分かったらお前はちょっと黙っていてくれ」
 俺はヴィクトリアに落ち着くように声を掛けると、再びパトリシアとユリアが口を開く。
 その口振りは明らかに重そうだ。

「女神ヴィクトリアとは圧倒的なまでに白く美しい女神……そして無類のギャンブル好きと表向きは広まっていますわ。更にヴィクトリア教に入信すれば圧倒的な幸運が付いてくるとされていますの。しかし入信した者は皆ギャンブル好きになってしまうと言う呪いのような物が付いてくるんですの……」
「あぁパトリシアの言う通りだ。そしてヴィクトリア教を崇拝する信徒達で作られた街、通称”眠らない街ラストベガス”そこには毎日多くのギャンブラーが出入りし賭け事をしている……。しかも信徒達はより多くのお金を動かす為に日夜、非合法な手を使って一般人を無理やり入信させている何て噂も……」

 パトリシア達からヴィクトリア関係の事を聞く分に……やはりコイツは女神だけど頭のオカシイ部類の女神だと言うことを再認識させられた。

 てかこの世界にヴィクトリアを崇拝する信徒達が居たことに俺は驚きを隠しきれない。
 こんなの見た目と家庭的なことしか出来ないただのギャンブル狂いだぞ。
 きっと信徒達もこれが本物だと分かったら幻滅するだろうな。

「何ですか二人してその言い方は! 私の愛すべき信徒達が作り上げた街と入信特典に何か不満でもあるんですか!? そうなんですか!? 良いでしょう、ならば今ここで懺悔しなさい! この女神ヴィクトリア前で! さあぁぁ!!」
「いえ遠慮しますわ。私が信仰しているのは女神ですし」
「オレは無信仰者だから特にないが。そもそも懺悔なんてしないぞ」

 ヴィクトリアは二人の何とも厄介そうな説明の仕方に強い反応を示すと、パトリシアから女神パメラと言う単語が聞こえてきた。
 
 この世界にはヴィクトリアの他に幾つかの女神が居るのだろうか? 
 そしてパメラとはこの世界の通貨の単位を指している意味だと思っていたのだが……女神の名前から取っていたのか。

 俺にはまだ異世界知識が不足しているらしい。
 魔王を倒す前にまずは知識を増やす事をした方がいいのかも知れないな。

「それで、とにかく二人はこれで信じてくれるか? 俺達の事を」
「まぁ……取り敢えずは信じますの」
「オレも取り敢えずって感じだな」

 二人は歯切れの悪い感じで言うと勇者と女神についての話は一旦終わりとなった。
 新事実ばっかり明かされると、本当にヴィクトリアはネタに関しては事欠けない存在だと思う。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「という事で俺はさっきの説明で言った通り、この首飾りをギルドに持って行っていくから、また後で、そっちで合流しよう」
「えぇ、分かりましたわ」
「パパッと済ませて直ぐに向かう!」

 宿屋の前で俺達は一旦解散すると、俺とヴィクトリアはローレットに言われた通りに面白い事を期待してギルドへと足を進めた。
 パトリシアとユリアは服が汗でベトベトなのが気になるらしく風呂に入ってからギルドで合流することになっている。

 隣では終始むすっとした表情をしているヴィクトリアが一緒に歩いている。
 ヴィクトリアはまだ信者達の言われようを気にしているのだろう。





「すみませーん! ちょっと見て欲しい物がありまして受付のお姉さん居ますか?」
 俺はギルドへと着くと急ぎ足でカウンターまで向かい、いつも俺達の担当をしてくれるお姉さんを呼んだ。

 ちなみにだが、ヴィクトリアはギルドに着くなり酒場の方へと駆けていったぞ。

「はい居ますよ。あら? 今回はボロボロな姿じゃないんですね」
「え、えぇまぁ。それよりもこの首飾りを見て欲しいんですが……」
 
 いつもの受付のお姉さんが奥の方から姿を見せると、俺は早速問題の首飾りを受付のお姉さんへと手渡す。
 きっとこれは傍から見たら、俺がお姉さんにプレゼントを渡してる姿にしか見えないだろう。

「おやこれは中々に綺麗な首飾りですね。では少々お待ち頂けますか? 鑑定士に鑑定をお願いしてきますので」
「はい! お願いします!」
 そう言ってお姉さんはまた裏方の方へと姿を消していった。

 それから数十分が経過しただろうか。
 俺は酒場のウェイトレスさん達のお尻をじっくりと見て時間を潰していると、受付のお姉さんが血相を変えて姿を現した。

「あ、あの! これは何処かで拾った物ですか!?」
「い、いえ。とあるヴァンパイアを倒して手に入れた物ですけど……」

 受付のお姉さんの鬼気迫る表情に圧巻しながらも、俺は自分で手に入れた物だと言うとお姉さんは大声でこう言ってきた。

「こ、こここ、これは魔王軍四天王のローレットと言うヴァンパイアが持っている伝説の首飾りブラッドハートですよぉぉぉ!!」

 その声はギルド内に響き渡ると俺は思わず後ろに仰け反ってしまい、ガヤガヤと盛り上がっていたギルド内は一瞬にして静かになり、背中からは数え切れない程の視線を向けれている感覚が伝わってくる。

「おいおい……あの兄ちゃんが魔王軍の四天王を倒したってか!?」
「「「「「おぉぉぉぉ!!!」」」」
 
 一人の冒険者がその言葉を言うと、少しの間が空いてからギルド内では他の冒険者達が一斉に叫び始めて、その声はやがて共鳴し建物が揺れるほど響いた。

「こ、これがローレットが言っていた面白い事なのか!?」
 両耳を手で塞ぎながら俺は呟いた――。

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