スポットライト

三浦しがゑ

仲人⑫

会長を待つ時間は、1時間にも2時間にも感じられた。
“もともと僕もエイトナインも、偶然から始まった奇跡だ。これで全てが終わりになったとしても、それはそれでなるがままよ…。”
 僕にしては珍しく、落ち着き払っていた。
 「彼らは、僕が守るべき家族です。」
 菅ちゃんの言葉が、僕の心に響き渡っていた。

 「カチャリ」とドアが開いて、小野瀬会長が入って来た。そのオーラに押されて、僕達は、弾ける様に立ち上がった。
 さっきまでの落ち着きはどこかに行ってしまい、僕も菅ちゃんもチラリと会長の顔を見ただけで、それこそ、前に倒れてしまうかと思う程、頭を下げた。
 「この度は、うちの雪野が大変失礼な事をしてしまい、大変申し訳ございません。どの様にお詫びすれば良いものか、正直申し上げて、言葉もございません。全てはわたくしの責任です。いかなる処分もお受けします。大変申し訳ございませんでした。」
 二人とも、息もできぬまま、ただただ頭を下げた。
 しばしの沈黙が続いた。
 「はっ、はっ、はっ。やはり詫びに来るのではないかと思っていたよ。」
 会長の朗らかな笑い声に、僕と菅ちゃんは、頭を下げたまま顔を見合わせた。
 「さぁさ、先生も菅原君も、どうか顔をお上げなさい。」
 おそるおそる顔を上げると、会長は続けた。
 「いやぁ、実に楽しい夜だったよ。そして、彼女は…真奈美君は、実に素晴しくアトラクティブなお嬢さんだ。彼女の様にまっすぐな女性と話ができたのは、何十年ぶりだろう。」
 会長はそう言うと、僕たちに座る様、促した。

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