スポットライト

三浦しがゑ

伴侶⑨

ほどんど泣きそうになっている。
 「真面目にお付き合いをさせてもらっています。彼女にはまだ話してませんが、来年には結婚も考えています。でもその前に先生のご意見も伺いたいと思っていました。おかしな形になってしまいましたが、丁度いい機会ですから。先生、この話、どう思われますか?」
 どうもこうもないだろう。僕が最も信頼を寄せている男が、優しさも才能も持ち合わせた女性と結婚する。しかも彼女は僕の友人でもあり、そして、仕事上欠かせない大切なパートナーだ。これで僕はこれからも菅原家の家族とも遠慮なく付き合っていける。僕にとってもこんな嬉しい話はない。
 「菅ちゃんが、僕に秘密の彼女を作っていた事は、僕にとっては許しがたい。」
僕は、役者になったつもりで、少々きつい視線を向けた。
「ただし…。その相手が洋子だという事で、この事全てを水に流そう。菅ちゃん、本当に素晴らしい女性を選んでくれたよ。そして、よくぞ、よくぞ洋子という素晴らしい女性から愛を勝ち得たもんだ!。」
 そう言って立ち上がり、強く彼と抱きあった。
 「ありがとうございます。僕らにとって最高の褒め言葉です。」
 そして彼は、深々と頭を下げた。二人の愛に乾杯をして、その日は長々と幸せな時間に身をゆだねた。
祝杯のビールを飲みながら、「そうか、菅ちゃんもとうとう生涯の伴侶を見つけたか…。」自分の事の様に、いや、それ上に感慨深い気持ちになっていた。そしてどこかで、「いつか僕にもそんな相手が見つかる日が来るだろか?」とぼんやりと考えていた。

「スポットライト」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「文学」の人気作品

コメント

コメントを書く