完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

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体育祭当日
開会式が終わり、競技が始まった。各学年8クラスあり、それぞれ赤、青、黄、緑に組み分けされている。皆、それぞれの応援席に座って応援を始めたが皆の視線が一つの応援席にくぎ付けなっていた。理由は簡単でそこに目立つ人物が居たからだ。それは言うまでもなく青のハチマキを巻いた櫻井と琴吹だった。しかし、そこには神崎と桐野の姿はなかった。


桐野は生徒会で応援席とは真逆の本部にいて、神崎は一番最初に1500m走があるので、グラウンド横に並んでいた。去年の事もあり、周囲からは恨めしい視線が神崎に集中していた。1500m走は1人1人の明確なスタート位置が決まっているわけではない。つまり、他の男子はスタートラインにべったりと張り付き、神崎を一番、後ろへと追いやっていた。


その状態で開始のピストルの音が鳴り響く。


この学校のトラックは400mなので1500mだと3.75周走らなければならない。神崎は一番後ろからのスタートなので追い越すには1レーンから2レーンというふうにレーンの外側を回らなければならない。


男子たちは総勢16人、直線のレーンは並んでいたが、流石にコーナーでは内側に入り始めた。その瞬間を神崎は見逃さなかった。


1番外のレーンの選手が内側に入った瞬間、神崎は一番外のレーンから1番後ろから、1番前に躍り出た。


他の選手はその様子に信じられない視線を送っていた。


結局、神崎はそのままトップを維持してゴールテープを切った。


「流石だな」
走り終えて応援席に戻って来た神崎に櫻井は賞賛の言葉を掛けた。


「そっちもな」
神崎は、櫻井の方を見て改めて、櫻井の女子人気を思い知った。声を掛けてきた櫻井は、女子に腕を掴まれてその場から動けなくなっていた。


「お前ら、もうすぐ櫻井の出番だから、流石に離れてやれ」
その言葉にしょうがないという風に女子たちは離れて行った。
「いつも、ありがと」
「そう思うなら、自分でどうにかする術を身に着けろ」
「は~い」


「あっちも大変そうだな」
神崎が見たのは、生徒会のテントの方だ。そこには世話しなく人が訪れていた。しかし、その数は尋常ではなく、例年の数倍とも言える数の人だかりが出来ていた。理由は単純で琴吹がこの学校にいることを嗅ぎつけたファン達で溢れかえっていたのだ。



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