完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

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いろんなことがあった神崎の夏休みはやっと終わり、学校の始業式を迎えた。


「まだ、暑いな」
「9月に入ったと言っても気温はまだまだ夏だらね」
相変わらず、神崎の横には櫻井があった。本を読みながらの登校だが、スイスイ障害物を避けて、歩いていて学校に着く。


「なんか、今日、機嫌いいな、神崎」
「別に何でもない」
口ではそういっているが櫻井は明らかに神崎の歩く速度が速くなっているのが分かった。


教室に着くといつものように桐野が話しかけてきた。
「おはよう、神崎君、櫻井君」
「おはよう、桐野」
「おはよう、桐野さん」
神崎の発言に少しだけ櫻井は驚いたがすぐに自分の席に座った。


「この前は遊園地で随分のお楽しみだったみたいね」
「大変だっただけだ」
「ほんとにそうかしら」
「そう言われても、ずっと追いかけられっぱなしだったからな、他に表現の仕様がない」
「まぁ、いいわ、それにしても今日でこの席ともお別れね」
「そうだな」
その時、僅かに神崎の声が上がったのを桐野は見逃さなかった。


「安心してしっかりと期待に応えてあげるわ」
本を読みながらだが神崎の背中にはしっかりと悪寒が走り抜けた。


そのまま、担任の本郷先生が入ってきたので、会話はお開きになった。


始業式の間、神崎は桐野の言葉が頭から離れなかった。


始業式が終わり、教室に帰ってきて、神崎が待ちかねていた席替えの時間が訪れた。本郷先生がさっさと決めるぞと言って用意していたくじを名簿順で引かせ始めた。


名簿順なのですぐに神崎の番が回ってくる。神崎はくじの前で柄にもなく、少しだけ神に祈った。


神崎はゆっくりとくじを開く。そこには窓際の一番後ろの席が書かれていた。
「あら、いい席ね」
その一言に神崎は凍り付く、直ぐ後ろにいた桐野にしっかりと席を見らえてしまった。神崎は頭を抱えたが、もう遅い、すぐに桐野が引いたくじには神崎の前の席が書かれていた。


「そんな顔で見られても私は何もしてないわよ」
「・・・」
本当かと心で思いつつ、こいつなら、くじで引きたい席を引くのも可能なんじゃないかと神崎は疑いたくなった。


「ほら、くじ引いたなら、さっさと席に戻れ、神崎、桐野」
ガックリと頭が下がりつつも神崎は席を移動するための自分の席に戻った。


クラス全員の席の移動が終わったが、神崎の横の席は何故か、ぽっかりと空席になっていた。


「ああ、言い損ねたが、琴吹は今日仕事が忙しくて来れないそうだ」
本郷先生は思い出したようにクラス全員に話したが、その話を聞いて、神崎はさらに頭が呆然となった。
「ということは・・・」
思わず声を出してしまった神崎だが、本郷先生が次に何を言おうとしているかが分かってしまってされに頭を抱えた。


「ということで、琴吹の席は神崎の隣だな」


2学期はさらに神崎の周りは騒がしくなりそうな予感もとい悪寒が神崎に走った。

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