完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

52

いつもの教室はたわいもない雑談によって、賑わっているが今日の教室は段違いに五月蠅くなっていた。


もちろん、その理由はこのクラスにやって来た現役高校生アイドル琴吹響だった。


毎回、休み時間のたびに大勢の人が神崎たちの教室に押し寄せてきた。そんな中、そんな事にも気を止めず、読書を続ける人物が居た。


「貴方も変わらないわね」
「何がだ?」
「そうゆうところよ」
「?」
神崎は桐野の方を向いて、何のことを言っているんだというような怪訝そうな表情をするが、すぐに読書に戻った。


「それにしても、この光景にも飽き飽きしてきたわね」
「そうだな、まぁ、取りあえず、明日からは1ヵ月は見なくて済む」
「その後、また続くわよ」
「・・・」


2人がこんな会話をしているのは、7月の後半、終業式当日だ。普通の学生ならば、長期休みということで浮かれているだろうが、この2人にはそんな調子は微塵もない。


「所で神崎君は、夏休み中は何をするの?」
「別に特にすることもない。普通に生活するだけだ」
「私はその普通が聞きたいの」
「図書館で読書」
「・・・それだけ?」
「それだけだ」
「他に何か、しないの?」


「宿題なら、もう終わってるからな」
「え」
桐野は自分の聞いてることが間違いなのではないかと錯覚に陥るほど、おかしい発言を聞いた。


「まだ、夏休みは始まってないわよね」
「そうだな」
「なんで夏休みの宿題が終わってるの」
「俺は先生たちと仲がいいからな。先にプリントやら課題を貰ってやっただけだ」
それも昨日に貰ったのだがと思い出した様に発言する神崎だが、それにしてもやることが異常だ。基本は、早めにやるか、計画的にやるか、終盤にやるかの3択なのだがこの男はそれすらも超えて、夏休み前に宿題を終わらせるという誰もやったことがない偉業と呼んでいいか、悩ぬものを達成していた。


「それはわかったわ。他には図書館で読書以外にするこはないの?」
「大輔さんのとこでバイトが入ってるぐらいかな」
「ホントに何もないのね」
思わず、ガックリした桐野だが、取りあえず、諦めずに質問を続けた。


「それじゃ、急に押しかけても問題ないわね」
「それはどうゆう心理だ」
「そのままの心理よ」
「せめて、連絡をよこせ」
「したら、行っていいの」
桐野は、思いかけない返事に驚きながら、思わず再度確認を取った。


「ああ、別にいいさ。急に俺の家来ても、いない可能性があるから、連絡してくれって意味だ」
「わかったわ」
そんなのの何がいいのか、神崎の心には響かなかったが桐野は期待に胸を膨らませて、夏休みに入るのだった。


琴吹本人は男子生徒たちの対応に追われていて、ずっと神崎と会話出来ていなかったが、桐野との会話はしっかりと盗み聞きしていた。
(何よ、あの女すごく美人だけど、神崎君に近づいちゃって、ふんだ、OK、図書館ね、必ず見つけて見せるわ)
もうすでに発想はストーカーのそれに近くなっていたがそこは恋する乙女ということでぎりぎりセーフということにしておこう。





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