完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

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じめじめした時期が過ぎ、校庭には蝉の鳴き声が響いていた。


「早く夏休み来ねぇかな~」
「そんなこと言っている暇があったら課題を終わらせろ」
いつものコンビこと神崎と櫻井は屋上ではなく、図書室に来ていた。理由は簡単だ。屋上がクソ暑いのだ。日に当たったアスファルトの温度は軽く50度を超えてくるので流石の2人も暑さに根を上げて、クーラーの効いている図書室に逃げて来たのだ。


さて、この2人の関係は置いといて、もう一組の関係は少しだけ進展していた。
「あら、今日は図書室で暇を潰しているの?」
「クーラーが聞いてるのはこの部屋だけだからな」
生徒会を引き連れて、図書室にやって来た桐野に対して、神崎は普通に受け答えしていた。桐野の後ろには生徒会の役員が神崎を睨んでくるが当の本人は何もないかの様にしている。


いつもの神崎であれば、この状況での受け答えはせずに無視を決め込んでいたのだが、あの実家の事以来、人目を気にせず、返事をするようになった。まぁ、どちらにしても睨まれてしまうのだが。


「私は生徒会の用事があるから、またね」
「ああ」
あまり桐野には表情の変化は見られないが、いつもそばにいた副会長だけは会長の表情の変化に気が付いていた。その顔の頬はわずかに上がっていた。


生徒会の面々は先生たちが使う資料室の方へ消えて行った。


「流石に寝てるだけだと、飽きてく来るな~。俺も課題するか~」
櫻井は眠そうに顔を擦りながら、学生鞄から、ノートと筆記用具を取り出した。


ボギっといういい音が神崎の前方から聞こえた。


神崎が音の方へ顔を向けると櫻井が、またやっちまったという顔をして手の中にあるシャープペンを見ていた。


「だから、いつも言っているだろう。お前は力を入れ過ぎたと」
「またか~」
「また買うのか?」
「これ、お気に入りだったのに」
神崎は自分の腕に巻かれている腕時計で時間を確認した。
「仕方ないか、まだこの時間なら、いつもの店は開いているし、今から買いに行くか?」
今日は土曜の課外授業の帰りだけあって、時間は15時、買い物をするだけなら十分な時間は残されていた。


「はい、お願いします」
いつもの通り、1人で歩くと女子に囲まれる櫻井は神崎に頭を垂れるのであった。







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