完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

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神崎の髪から手を石沢が離した時には、先ほどいた人物とは思えないほどのイケメンが現れていた。
「ほら、できたわよ~優君~」
「ありがとうございます、石沢さん」
「ほんとは、ちょっとだけ髪を切りたいんだけどね~」
「毎回、俺のわがままに付き合わせてすみません」
「いや、いいのよ~。お願いして来てもらってるのはこっちなんだから~。それよりも髪を切った方が後々大変でしょ~」
「それはそうですね」
絶対、女子に囲まれて身動きが取れなくなると思い、面倒ごとを避けようとする神崎的には勘弁してほしい展開だった。


「ほら~、来たみたいわよ。本日のゲストさんが」
石沢に言われ、今先ほど到着した車へ神崎は視線を向けた。その車から出てきたのは今朝のニュースでも取り上げられていた人気上昇中のアイドル琴吹響だった。


神崎はチラッと一瞥しただけで石沢に視線を戻した。
「特に興味は湧かないですね」
「やっぱり、男子高校生らしくないわね~」
「まぁ、それが俺ですから」
「それもそうね~。神崎くんがモデルを始めた頃は一緒に撮影したモデルが神崎君を好きになっちゃったなんてこともあったから大変だったもんね~。それも一人じゃなく複数~」
「それは言わないでください」
神崎はその時を思い出すと苦い思い出しか込み上げてこなかった。撮影の合間に本を読みたくても女子が群がって来てそれどころではなくなってしまったからだ。無下にすることも出来ずに話をしてしまったのがいけなかったと今では反省している。


「あの時は面白かったわね~。今回はそんなことにならなければいいけど~」
「流石にそれはないんじゃないですか」
「あら~、どうしてそんなこと言えるのかしら~?」
「モデルならともかく現役アイドルが恋人を作る真似なんてしないと思うので」
「普通はそうなのよね~。でも優君に関してはちょっと心配だわ~」
「なんでですか?」
「基本的に人たらしだから~」
「そんなことはないですよ」
否定をしながら、今まで経験から改めて気を付けようと心に決める神崎だった。

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