完璧会長と無関心な毒舌読書家

スリーユウ

9

「行ったか」
男子生徒たちが見失った神崎は屋上にいた。


「よくこんな場所知ってたわね」
今、神崎と桐野がいるのは、屋上の給水塔の裏だ。屋上の出入り口の真上なので、人が気づくことはほとんどない。神崎はここを1年生の時に見つけて以来、昼食はここで食べている。
「たまたま、見つけてな」
神崎はそういうと何処からか取り出したお弁当を広げ始めた。


「あら、いつお弁当を取ってたの?」
「教室で隠れたときだ。」
「それにしても、神崎君、以外に先生方に人気なのね」
神崎は午前中に回った先生たちに必ずと言っていいほどからかわれていた。


「暇なときに、いろいろと手伝っているからだろう」
「そんなことをしてるの?」
「暇だからな。何か面白いことがないかと思ってな」
「先生たちから面白いことを探しているの?」
「正確には教材などを見せてもらってる。先生が個人的に持っているものとかな」
「へぇ、面白いことをしてるのね」
桐野も質問しながら、弁当を広げて食べ始めた。


そんな会話をしてると給水塔に上ってくる梯子から上ってくる音が聞こえてきた。


緊張が走るはずが神崎は弁当を普通に食べていた。
「神崎、いるだろ」
「ああ、ここにいるぞ」
そう言って上ってきたのは櫻井だった。


「あれ、桐野さんもいる。どうして連れてきんだ、神崎?」
面白そうに、にやにやした笑みを見せながら櫻井は聞いてきた。
「はぐれると面倒だからだ」
「そんなことだと思ったよ」
「お前のパートナーは?」
「今後のためにもここを知られるわけにはいかないから、おいてきたよ。集合場所を決めてあるから大丈夫」
「そうか」
神崎は相川らず弁当を食べ続けている。櫻井も弁当を広げ始めたところで、桐野さんがいることを思い出したようにはっと顔を上げた。


「ごめん、桐野さん、2人だけで話し込んじゃて」
「別にいいのよ、私がお邪魔してるんだから」
「あ、そうだ。桐野さん、神崎の弁当食べてみてよ。おいしいよ」
「そうなの、以外ね」
桐野は話していて、あまり神崎の弁当をよく見てなかったので顔を弁当の方にに向けた。
そこには至って普通の弁当があった。弁当箱の中身は半分が白米で、あとはおかずがだし巻き卵、から揚げ、サラダだった。


「神崎君、少しお弁当を分けてくれないかしら?」
「なぜ、俺が一方的に弁当を分けてやらなきゃ、いけないんだ?」
「ごめんね、桐野さん、こいつの言い方が悪いんだ。何かと交換じゃないとくれないんだ。やらないって言ってるわけじゃないから安心して」
「うん、わかったわ。じゃあ、ハンバーグとと神崎君のだし巻き卵を交換しましょ」
神崎は無言で弁当を桐野の方に差し出した。
「それじゃあ、交換ね」
桐野は自分の箸を使ってハンバーグとだし巻き卵を入れ替えた。桐野はさっそく、だし巻き卵を食べてみた。口に入れると、だし香りが広がり、卵も半熟でとろけて、絶妙な味が口に中に広がった。


「おいしい」
桐野の口からは自然に感想が出てしまった。
「でしょ」
「お前のは普通だ」
神崎も桐野のハンバーグをいつの間にか食べていて、桐野にハンバーグの感想を言ってきた。


「え」


桐野は自分の料理にある程度の自信を持っていた。女子の友達にもおいしい言われていたし、家族にも褒められたぐらいだ。なので神崎に言われたことにショックだった。
「すごいよ、桐野さん」
「どうして、櫻井君?普通って言われたのよ」
「神崎は料理に拘っていて、少しでも気に入らないと必ず指摘をするんだ。その指摘がなかった人は桐野さんが初めてだよ」
「そうなの」
「うん、あいつとは中学から一緒だけど、一人も見たことがないから自信もっていいよ」
櫻井は興奮した様子で桐野に昔、神崎がどんな指摘をしたのかを話し始めた。


昼休みも櫻井が桐野に一方的に話しかけて、残り15分になってしまった。


「おい、そのくらいにしとけ」
「え、なんで?」
「時間を見ろ」
「わ、もう集合する時間だ。ごめんね、桐野さん」
「別に気にしてないわよ。早くいってあげないとパートナーの女子を待たせちゃうわよ」
「そうだね。先に行かせてもらうよ。桐野さん、神崎、それじゃ」
櫻井はそう言い残すと急いで梯子を降りて行った。


そこで丁度、放送が聞こえてきた。



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