美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜【完】

邪神 白猫

君の為にできる事〜side響〜









 これはまだ、響が小学四年生だった頃のお話しーー。










 小さな寝息を立てながら気持ち良さそうに眠る花音を眺めて、俺は優しく髪を撫でると小さく微笑んだ。


「ーーあら? 花音寝ちゃったのねぇ」
「うん」


 俺の膝の上でスヤスヤと眠る花音を見たおばさんは、そう言うとクスリと小さな笑い声を漏らした。


「ごめんねぇ。重たいでしょ? ……今退かすわね」
「ううん、平気」


 申し訳なさそうな顔をするおばさんに向けてニッコリと微笑むと、その視線を再び花音へと戻す。


 少しだけ丸くなって眠る小さな花音は何だかとっても可愛いくて……。
 その姿を見ているだけで、自然と顔がニヤケてしまう。


「響……。お前、凄く気持ち悪い」


 少し痙攣った顔をしながらそんな事を言ったかける


(……気持ち悪い? ただ膝枕してあげてるだけなのに……。あっ……そっか! 翔も膝枕がしたいんだ。翔は花音のお兄ちゃんだから……ヤキモチ妬いちゃったのかな?)


 普段から花音の面倒見がいい翔を思い出した俺は、その妹思いな発言にクスリと笑い声を漏らす。


「大丈夫だよ。順番こねっ」
「……何の話しだよ」


 ニッコリと笑った俺を見た翔は、そう言うと更に顔を痙攣らせた。


(翔ったら、あんなに照れちゃって……)


 何だかそんな翔が面白くて、俺は小さくクスッと笑い声を漏らした。


 一人照れている翔をそのままに再び膝へと視線を戻すと、未だ膝の上でスヤスヤと眠る花音を見つめてニコリと微笑む。


「何だか……ひぃくん、今日は凄くご機嫌ねぇ。何か良い事でもあったの?」


 幸せそうにニコニコと微笑む俺を見たおばさんは、そう言うと小さく首を傾げる。


「うんっ! さっきね、花音が俺の事好きって言ってくれたんだー!」
「まぁ! ……良かったわねぇ、ひぃくん」


 満面の笑みでそう告げると、とても優しく微笑んでくれるおばさん。


「じゃあ、将来は結婚かしらねぇ」


 そう言って嬉しそうに微笑むおばさんは、「楽しみだわー」と言いながら花音の頭を優しく撫でる。


「……嘘つくなよな、響。アイスとお前、どっちが好きか聞いたらどっちもって答えただけだろ、バカ」


 俺達の会話を聞いていた翔が、呆れた顔をしながらそんな事を言ってくる。


「花音はアイスが好きだから、それと同じって事は好きって事なんだよ? 翔」


 先程見たばかりの、嬉しそうにアイスを食べている花音の姿を思い浮かべながらニッコリと微笑む。


「あっそ。……お前はアイスと同じなわけね」


 呆れた顔をして俺を見ている翔は、そう言うと小さく溜息を吐いた。


「ねぇねぇ! 花音はどれぐらいアイスが好きかなー?! いっぱい?」
「そうねぇ。いっぱぁーい、好きだと思うわよ?」
「それって、どのくらい?」
「んー。……両腕で地球を一周するぐらい……かな?」


 そう言ってニッコリと笑ったおばさん。


(地球一周……。花音の好きは、地球一周しかしないの? ……俺なら何周だってするのに……)


 それこそ、両腕でぐるぐるに包んで地球が見えなくなってしまうぐらいに。
 ーーそれぐらい、花音の事が大好きだ。


「俺は、地球が見えなくなるぐらい好きなのに……」


 小さな声でそう呟きながら悲しい顔をさせると、それを見ていたおばさんは焦り出し、その横にいる翔は「地球が見えなくなるって何だよ、それ……」と呆れた顔を見せる。


「だっ、大丈夫よー、ひぃくん。花音にも同じぐらい好きになってもらえばいいのよ。ね?」


 俯いてしまった俺の顔を覗き込み、困ったような顔を見せるおばさん。


「……同じぐらい?」
「そう。同じぐらい」


 目の前でニッコリと優しく微笑むおばさんを見つめながら、どうすればそんな事ができるのかと思案する。


(花音は王子様が好きだから……)


 きっと、王子様みたいになればいっぱい好きになってくれるかもしれない。


 頭が良くて、運動神経だって良い、強くて優しい男になればいいんだ。


 外人にはなれないから、そこはとりあえず髪を染めて何とかしてみよう。


(……うんっ! 王子様みたいになればいいんだっ! それで一生、花音を守ってあげればいいんだっ!)


 そこまで考えると、沈んでいた気持ちがパァーッと明るくなる。


「うんっ! 同じぐらい好きになってもらえるように、頑張るっ! ……いっぱい、いっぱい、大好きになってくれたら、花音と結婚できるかな?!」
「そうね。いっぱい大好きになったら、結婚できるわね」


 興奮気味に話す俺を見てクスッと笑ったおばさんは、そう答えると優しく俺の頭を撫でてくれる。


 そんな光景を冷めた目で見ている翔を他所に、すっかりと機嫌の良くなってきた俺。


 未だスヤスヤと眠る可愛い花音を見つめてニッコリと微笑むと、その小さな頭に触れて優しく髪を撫でる。


(……俺は花音の為なら、何にだってなるよ)




 ずっと君の側で君を守ってあげる。




 だから……


 早く俺と同じぐらい大好きになってね。




 俺の可愛い可愛い、小さなお姫様ーー。










 ーー完ーー














 


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