(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

孤独の戦い 前編

???視点 


「グゥー!」


魔獣は遂に動き出した。
街にいる全ての人間の心力を食い尽くすため、


「グゥー!」


今までは、待ちながら獲物から心力を奪っていった・・・・・・が、チカラも溜まり、自分から奪いに行く、という欲望がヤツを動き出させたのだ。


「グゥー!!」 


暴れ回るぞと言っているかの様に、進み出そうとする。


「悪いけど・・・」


後ろから、声が聞こえた。


「これ以上・・」


振り向くと女がいた。


「行かせない!」 


魔獣は理解した。
・・・こいつは敵だ!


********
佳奈視点
人気のない、廃墟の建物の外、  
何とか間に合ったのは良いけど、


「どうしたものかしら?」


もう辺りは真っ暗・・・夜だ、
辺りはに家はなく、灯りらしき物も無いのだ、なのにはっきりと見える。
目の前にいる、魔獣の特徴は、簡単に言えば 岩の塊だけど、


「・・・無茶苦茶暑いわね」


額の汗を拭きながら呟く。
熱を帯びた岩と表現した方が正しいのかも知れない。
高さ3メートル、体長2メートル位で、二足歩行、両手両足がデカく、先が鋭くなっている岩の爪。
長い尻尾付きだけど、全然可愛くないと彼女は思った。 
あと、とにかく硬そうだ、全部が岩だ、しかも黒い岩の皮膚?から炎の様な赤い血管みたいなのが浮き出ている。


「下手に近づいたら、焼け死ぬかも・・・」


魔獣とは6〜7メートルほど距離を空けているが、正直この距離でもしんどい。


しかも、
「気の所為か、段々暑さが増してきてる、気がするわ。」


身体中から汗が止まらず出てくる。 
これ以上気温が上昇したら、いよいよ死人が出るかも知れない。
もう一刻の猶予もないのだ。


「増援を待ってられない、私1人でやるしか」


勝てるかどうか分からないが、もうそんな事言ってる場合では無い。
彼女は、一気に戦闘態勢に入る。


ただ気がかりなのは、
「来ないわね、謎の異能者さんは」


この状況を打開できる、僅かな希望・・・この街を守っている異能者、その者がまだ来ていないのだ。


「でも、もう待てないわね」


来ない以上1人で戦うだけ


「でも・・これで良かったわ・・・」
  

・・・・せめてもの救いは・・・・周りに人がいない事だった・・・・・つまり・・・この場には・・・彼女を障害するものは・・・・無いのだ。 


「人がいなくて、助かったわ」


胸ポケットから、白いダイヤが填まった指輪を取り出し、右手中指にはめる。
 

「これで、何の心配も無く」


手の平から、真っ白な光が、   
球体になり、魔獣に向かって、


「全力で戦える。」


放たれた。


********
20分経過  
ガ・・タ・・・ガ・・・タ・・・


周辺の地面が破壊しつくされている・・・  
目の前にある廃墟の建物も、一部破壊されている。


「・・・やり過ぎたかしら?」 


相変わらず、加減が難しいと、ぐっちりたくなるが、
あとで上司達が始末する事を考えると、やっぱり
気を付けた方が良かったか?と考えてしまう 


「いえ、相手を考えれば、これでも足りないわ。」


仕方ないのだ、そう割り切った佳奈であったが、
その時割れた地面から、岩の塊が出現する。


「グゥー・・・」 
「ホラ見なさい、ピンピンしてる。」
 

また更に暑くなった気がしたが、
気の所為ではない、魔獣のチカラが増したのだ。


「ッ!、これ以上強まるとヤバイわね!」 


このままだと脱水症状が起きてしまう。
次はもっと強力なのを放つ・・・・・・・
佳奈は指輪のはまっている、右手の平を前に出し、 


「これで、どお!」


彼女の手の平から巨大な白い光の玉が放たれる!!!  


光の玉は、魔獣を丸ごと覆うほど巨大で、凄まじいスピードで魔獣に迫る。


「グゥー!」
回避は不可能と考えたのか、体を丸めて防御体制をとる魔獣に、光の玉が直撃した。


「・・・・」 
直撃した瞬間爆音が起きて、辺り一面に煙が上がる。
しばらく様子を見る彼女、 


「・・・効いたかしら?」 


僅かな可能性でも信じたい気持ちで、彼女は見守る。


「・・・・追撃は危険だわ。」 


仮に致命所を負っていたとしても、相手は格上なのだ、少しでも油断したら、命はない!


さすがに倒したとは思えないので、次の手を考えていると、 
 煙の向こうから、魔獣の雄叫びが、


「グゥー!グゥー!!」 
「全然か・・・」


煙から出てきた魔獣は、殆ど無傷でいた。
岩の部分が削れている所や、ヒビが入っている箇所もあるが、それでも全体の一部に過ぎない、ダメージとも呼びにくい程、少ないのだ。 


「少しくらい効いてくれても、いいでしょ!?、嫌になるわね!」


ウンザリしていたのだ彼女は、
「さっきから、ずっとコレだもの」


彼女の攻撃は決して弱くわない。
他のBランクの魔獣が相手なら、多少ダメージがあってもおかしくないのだ。 


「以前団体で討伐した、Bランクには効いたのに」 


しかし、この魔獣には、全然効いていない、そこまで考えていったら、もう答えは一つだけ。


「コレがこいつ魔獣の能力ってわけね?」 


でも何の能力か?・・・普通に考えれば、防御型の能力なのは分かるが、
「ただ硬いだけで、私の【玉白ぎょくはく】を受け切れるとは思えない。」


先程から彼女が魔獣に放っている、白い光の玉の事だ


「アレは、見た目の割りに、破壊の塊だから・・・・」


あの光の玉には、接触した対象を、跡形も無く粉々にしてしまう威力があるのだ・・・因みに先程放ったのは、Cランクは難しいが、Dランクまでなら、一撃で倒せる威力があるのだ。


「当たれば、幾らBランクの魔獣でも・・・ん?」


そんな事を考えていると、何かに気づいた。


「・・・よく眼を凝らすとこいつに・・・何か・・・覆ってる?」 


佳奈が見えたのは、魔獣の体を何か薄い紫色の何かが、魔獣を覆うようにしている光景だ。


「・・・瘴気の膜といった所かしら?、コレがこいつの能力なのね!」  


彼女の予想通り、魔獣の能力の一つだ、魔獣は自分の瘴気を操り、自分の体を覆うようにして、障壁の役割にしているのだ。
 

「だとしたら厄介ね、」


この障壁、いや瘴壁・・と呼ぶ方が正しいか、とにかくこの瘴壁は強固だ、そっとやそっとじゃ、破れない、しかも本体も相当頑丈な筈だ、これでは幾ら攻撃しても、致命所を与える事が出来ないのだ。 


「もっと強力な一撃を出せたらいいけど、」


確かに彼女の出す光の玉の威力を、更に上げれば、倒すのは無理でも、ダメージぐらいは与えられる筈だが、しかし 


「今の私には、これ以上の出力は・・・・制御が効かなくなる」


この戦いにおける彼女の、最大の不安は、自身の異能だ。
佳奈の異能は、酷く扱いにくのだ。
制御が難しく、まだ完全に操り切れていない。
下手に威力を上げようとすると、暴走する可能性がある。


「せめて、もう少し形状変化が出来たらいいんだけど、」 


長い鍛錬の末、何とか指輪・・を利用してここまで扱える様にはなったが、それでも何とか・・・というレベルだ、細かな動作や形の変化などは、全くと言っていいほど、出来ない。


「・・・マズイわね、このままだと、ジリ費ね、そのうち心力が尽きる!」


その次に問題なのは、彼女の心力の残量だ。
異能を発動するには、心力が必要、他の異能者に比べ心力の量が多い彼女でも、さっきからずっと、巨大な光の玉を放ち続けているので消耗が激しい、みるみる内に心力が減っていく。


どうしたものかと思った時、


「グゥー!」


魔獣が動き出した、彼女を倒すため、 
彼女に向かって、跳躍する。


「ッ!」


一瞬で、熱気が増した。
あっという間に魔獣に接近されてしまった彼女は、


「うっ!、こっこの!」


暑過ぎて、意識が飛ぶ前に魔獣から距離を取り、
再び光の玉を作り出す。


「これなら!」


先程よりも巨大で濃縮された光の玉、


「グゥ!」
魔獣も危険を感じ取り、受けるのはなく、避けようとするが、


「遅いわよ!」
魔獣の動きが遅いのだ。
魔獣の弱点だ、前方や上の跳躍などは出来ても、後ろや横の跳躍が出来ないのだ。
更に小回りが利かず、俊敏な動きが出来ないので、いざという時は、防御をするしかない。


その一瞬の隙を彼女は見逃さない! 


「フッ!、もらっ!?」
筈なのだが、光の玉を放とうとした瞬間、眩暈めまいでも 起こしたように、手の平で額を押さえて、膝がくずれて、倒れそうになる。 


「いっいけない!・・・これ以上は・・・」


どうやら、異能の制御が難しいくなった様だ、光の玉が消えて、彼女は息を切らしながら、その場で膝をつく。


「ハァ・・・ハァ」


今の制御ミスで、心力を消耗した様で、息が更に乱れている。
・・当然魔獣も・・・この機会逃さない!


「グゥー!」


彼女に向かって跳躍して、その勢いで突進して来た!! 


「くっ!」


ギリギリの所で、佳奈は横に避けるが、
魔獣は体を上手く動かして、スピンをして尻尾で追撃する!  


「がっはぁッ!!」 


予想外の攻撃に、佳奈は躱す事が出来ず、
太い尻尾が鞭の様に、彼女の腹部にあたり、 
その衝撃で、吹き飛び、地面へと叩きつけられる。


「グゥー!」 
「ケホッ!ケホッ!・・」


吐きそうになるのを堪え、何とか起き上がろうとする彼女の目の前で、魔獣がこちらの様子を伺っている、少しでも動いたら殺すと言われているみたいだ。


「ハァ・・・参ったわね・・・」


さっきの攻撃でアバラ骨を数本逝ってしまった。
他にも心力の残量が残り僅か・・・ 


「うっ!」


痛みで意識はハッキリしているが、もう動けそうにない、それ以前動いたら即、殺られるだろうな・・と彼女は思った。


「グゥー!」


魔獣は佳奈を踏み潰そうと、足を上げて、彼女の頭上に位置を合わせる。
足のデカさは、彼女の頭部を丸ごと、潰せるほどデカイ。
降ろされた一巻の終わりだが・・・もう遅い。
魔獣は佳奈目掛けて足を振り下ろす! 


ダメか・・・ 


「・・・・ごめん」


佳奈が・・・何に対して・・・・謝ったかは・・・・誰にも・・・・・聞こえなかった・・・・ 










******** 


彼以外は・・・・ 


「誰に謝っている?」
「!?!?」
突然の声!!!!
彼女は瞑りかけた目を開けると


「下らん、謝っている暇があるなら、生きる為に、努力しろ。」 


黒い槍持った少年が、魔獣の足を槍で押さえていた。 


「え!?」


彼女が驚いたのは、彼の持つ黒い槍でも、それを使い凄まじいチカラを持つ魔獣を防いだ彼の力でも無い。


「あ・・・あな・・たは」


呆然と呟く彼女に彼は溜息を吐き、
魔獣へ目を向けたまま、 


教育してやる・・・・・・


誰に言ったかは、彼女には分からなかった。 
彼女は今それどころでは無かったのだ。


彼を・・・知っている・・・けどいつもと違う
だって彼は・・・ 


「よく見ておけ」


こんな・・・冷たい・・・声で
話さない・・・ 


こんな・・冷た・・い・・眼を
していない・・・  


それでも彼女の目には、確り彼が見える。
学園に入ってできた・・・私の友だち・・  


「い・・ず・・み君?」 


いつもふざけて、私をからかってくる彼、泉 零が普段は見せない、冷たい眼と口調で、


異能の戦いを」 


そう呟いた。




此処からの戦いが始まった。 
同時に彼の日常の歯車が崩れだした。




孤独の戦い 後編へ続く。




おまけ
とある家の暑さの悩み (兄妹)


「・・・暑いですね、兄さん」


「そうだなぁ」


「う〜・・・」


「そんな、唸れても困るぞ?」


「う〜!」


「エアコンが壊れちゃなー」


「ガクッ(ガーン!)」


「修理に来るのは、明日らしいから今晩は地獄だなぁ」


「は〜」


「俺も苦手だけど、お前もそれ以上だな」


「・・・兄さんは何で平気なんです?」


「まぁ・・・何とかな(隣で俺以上に酷そうな妹を見ればな)」 


「はふ・・・暑いです」ハタッハタッ!


「ハハハ・・・!!!!」 


「うん?兄さん?」 


「グハァ!!!!」吐血


「へ?、兄さん!?どうしたんですか!?」


「た・・頼むから俺の前で・・・服で扇がないで」


「え!?・・・あ!(頬が赤くなる)」 


「あ・・あと 」 


「べっべつに私、にっ兄さんになら(テレ)」チラッ
 

「家でもさ・・・上・・着けて・・・」
 

「・・・・!?!?(服の中を見る)」バッ! 


「ガク・・・」ドサッ!


「おおお兄ちゃんのエッ、ってお兄ちゃん!?お兄ちゃん〜!!!!」 




*2時間後に目を覚ました零だが、何故気を失っていたか、記憶を失っていた。(妹に聞いても、顔を赤くされて、目を逸らされるだけだった。)

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