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(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

嫌な出会い 後編

前回からの続きで昼の時間だ。
俺達は白石転校生に学校の説明するついでに食堂を案内していた。 


「へ〜私と桜井さんと石井君以外は、弁当なんだ」


感心したように言ってくる。珍しいのか? 俺達のグループって結構弁当を持ち込んでる奴いるが。


「うむ、手作りじゃ! 毎回作る際に母上がうるさいのじゃが……」


不満そうな呟きを聞いて「ああー」って思った。
得意気に大きめな弁当を掲げているが、どうやって届かない筈のキッチンで調理したのかと思ったが、なんてことはない。言葉を濁したが、保護者様がしっかりと専用の台を用意しているようだ。よく見るとお子様系の料理が多い。ちゃっかり母親が介入しているのが、よく分かる弁当であった。


「はい、妹と一緒に作るのが日課になってます」


若干照れた感じでシンプルだけで可愛らしい弁当を見せる。
学校のアイドル的な藤堂には妹がいるらしい。見たことないが、中学生で葵の学校にいるそうだ。葵と接点あるかな? 訊いてみようか迷ったが、転校生の前で余計な情報を流すのは遠慮した。


「あ〜ボクも偶に作るよ」


ボクっ娘でクールキャラな桜井は偶に作る派らしい。そのクールな感じが誰かさん・・・・を彷彿をさせるが、あっちはクールじゃなくてサディストなだけだから違うな。……あと牛乳とかある1点に栄養が行きそうな食材が多いが、ツッコマナイことにしましょう。


「作れねぇことはないが、自分の分は面倒」 


貴様には訊いておらんのだよ武氏よ。
基本購買の弁当かパンしか食わんだろうが。まぁ、由香さんの分だけは親と交代してでも作っているらしいから料理の腕は悪くないと思うが。え、由香さんはって? ふん、ノーコメントさ。(*禁則事項です)


「俺は、妹が作ってくれるんだ」


はい、とうとう俺の番が来てしまった。おや? 転校生以外、可哀想なものを見るような目で見ているよ。アハハ! 泣きそうなくらいなら分けてあげようか? ……え、いらないって? 全員首を横にブンブン振った。……はぁ。


なんてやり取りを訳も分からず見ていた転校生。何を思ったか俺達の回答に聞くと、ガクリと肩を落として項垂れた。


「はぁ、凄いなぁ〜。私なんて弁当を作るのが面倒くさいから全然作らないのに」


作れるかどうか分からないが、どうやら面倒くさがり屋のようだ。
分からなくもないが、弁当の方が健康的にも良いぞ? 作って貰っている立場なので言えませんが。


黒河くろかわさんから聞いたけど、みんな同じ中学出身なんだね?」
「美希で良いぞ。楓は違うのじゃがな」
「え、そうなの?」
「はい、私はこの学校に入学してからお友達になりました」


美希と桜井が懐かしそうにしている。まだ入学して2ヶ月の筈がえらく昔に感じる。気になったのか、白石転校生が首を傾げて訊いてきた。


「へ〜、何か切っ掛けでもあったの? やっぱり同じクラスだったから?」
「うむ、それもあるのじゃが……」


話を振られた美希が言い辛そうにする。
うん、俺も振られた返答に困る。……何故なら。


「原因は……アレ・・じゃな」チラッ
「そうだね。アレ・・だね」チラッ 
「あはは……(苦笑)」チラッ
 

「「……」」


女子3名がこちらに視線を送っています。いや、正確には武だけだと思いたい!
何か言いたそうですが、ハッキリ言います。アレは俺、関係ありませんから!
アレは、そこで黙って学食のラーメン食べてるバカ武とバカ久保の『ダブルバカコンビ』の所為だ!!


因みに何があったかは、ご想像にお任せします。……機会があったら語るかもしれんが、出来れば遠慮願いたい。


「えー!? そこまで言われたなら余計に気になるよ!」


気まずい空気を察しても気になるのか、遠慮なく藤堂に訊いてるよこの転校生。


「え!? えーと……」


ほれ見ろ、藤堂の奴も困っちまってる。俺達に、じゃなくてバカコンビに気を遣っている。優しいな本当に。その優しい声に当てられた所為か、さっきから武の奴が苦しそうに胸を押さえてグスグス泣いている。辛いならやるなよな。


「それのぐらいにしてやれ、白石よ。そろそろ武のバカが死んでしまう」
「え〜? ん〜仕方ないかぁ。うん、気になるけど止めとく。……あと私のことも佳奈って呼んでね?」 
「あー、善処しておく」


不承不承といった表情で白石転校生は、訊くのをやめた。その後も色々と学校について話しておいた。案内はまた今度すればいいので武が胸を痛めること以外、とくに面倒なことはなく昼食時間を終えた。




******




いつの通り授業もあっさり終わった。
放課後。クラスの奴らは部活に行くか、そのまま帰宅するかして移動している。


俺達の中でも、武は助っ人でバスケ部に行っている。特定の部活には入っていないが、ああ見えて運動能力は高いから各運動部から助っ人として頼まれたりしている。
美希は空手部だ。期待のエースらしい。つえーからなアイツは。
桜井は陸上部。足が速くて中学時代から陸上をやっている。
藤堂は以前言ったと思うが、剣道部だ。あんな清純なアイドルみたいな子が剣道だとイメージが付かないかもしれないが、実際結構強い。まぁ栞の奴やその姉の『姫将軍』に比べたら劣るけど。


因みに英次は帰宅部だ。本人曰く忙しいらしい。
まぁそんな感じで俺以外は全員いない。今日は生徒会に行く予定もないので、帰ることにする。
そうして教室を出ようと思ったら……。


「あっ泉君、ちょっと待って!」
「うん? どうした?」


呼び止められてしまった。
後ろへ振り向くとカバンを持ったポニテが、白石転校生が笑顔で立っていた。


「泉君も帰るんだよね? 折角だし一緒に帰らないかなって」
「うん? 部活見学とかはいいのか?」


誘われたからそれっぽい理由で誤魔化す。1対1はなるべく避けたい。
てっきり転校して来たばかりだから、学校を見て回ると思った。案内してほしいと言うならまだ分かったのだが。


「バイトがあるから、部活とかは入らないんだ」
「へ〜バイトかぁ。それじゃぁ仕方ないか」


お忙しいようだ。確かにこの学校はバイトは禁止じゃない。部活したくてもバイトしている奴も少なからずいる。……俺の場合は少し違うけど。


「で、どうかな?」


しかし、異性相手に2人っきりの下校を受け入れるのはどうだろうか? 面倒で余計な噂が立ちそうであるが。
まぁこっちも暇だし。いいかな?


「いいぞ。折角だし、辺りを少し案内してやるよ」
「え、本当!? 1週間前にこの街に来たばかりで何も知らないから助かる!」


満面な笑顔で言われました。大変だな転校も。
気付いたら噂云々のことも忘れて街の中を案内しようと、2人で帰宅することにした。


「「「グッ、おのれ泉めぇぇぇ……」」」


教室に残っていた男子や廊下にいた男子などから、物凄い殺気をぶつけられたが。……やっちまったか。




******




うん、男子達の殺気も一旦忘れましょう。
転校生を連れた俺は、よく寄る商店街を案内していた。


「へ〜こんなのもあるんだ?」
「おう」


電化製品の所を見て回っているが、どうやら珍しいようだ。田舎暮らしでもしてたのか?


「以前いた場所では、無かったのか?」
「あ〜前にいたところはド田舎だったから。こういった物があんまり置いてなかったのよ」


疑問に思ったので訊いてみると、白石転校生は苦笑いする。……それはなんと言うか。


意外だな・・・・


割と本気でそう思った。
転校生は不思議そうにしているが、そうゆうイメージが無かったから、思わず口に出てしまった。


「そうかなぁ? こう見えて結構世間知らずだよ? 私」
「そうは思えないけどなぁ」
「え、何でそう思うの?」


意味が分からないといった顔で尋ねる転校生に、俺はなんでもない風に口を開いた。


「だって転校して来たばかりなのに、もうバイトしてる」
「……え?」


俺の言ったことが予想外だったのか、変な声を出してポカンとしている。そんなに驚くことか?


「田舎からこの街に1週間前に来たんだろう? 色々準備が必要だから、普通この短期間でバイトを探せるとは思えなかったから、意外と行動力のある奴だなぁって。最初はてっきりずっと都会の方で慣れていたからと思ったけど」
「ッ!? え、え〜」


なにやら焦っている白石転校生。うっかりさんのか? 挙動不審だぞ?
本人はそんなことお構いなしに一生懸命考えているが、田舎暮らしだった設定・・に無理があったか、言葉が見つからないようで悩んでいた。
そこまで気にする必要もないと思うが。


「お金が必要でバイトしているならまだ分かるけど、別に貧乏って訳じゃないだろう? 昼も学食で食べてたし、そんな雰囲気は全然なかった」
「あ、え……」


……柊さんには機関所属だろうと言ったけど、ちょっと自信をなくしてきた。
追い詰めているつもりはないが、白石転校生は固まり焦っているよ。探られている立場かもしれないが、大丈夫なのか? 巻き添えはイヤだぞ?


「「……」」 


言葉が思い付かないのか、沈黙してしまう。ああ、空気が重い。転校生も分っているようだが、これ以上はボロを出せないと黙り込んでいる。心なしか徐々に目に涙が溜まっている。
可哀想に、誰にイジメられたんだ! ……ああ、俺か。


「まぁ人には色々事情があるからな。不快に思ったのなら謝る」
「う、ううん、こっちこそゴメン」


申し訳なさそうに謝る転校生。いや、こっちこそスミマセン。
追い詰めたの俺だから頭を下げられても困るよ。


「いや、変な質問した俺の所為だ。本当にスマン」


どうにもイジメキャラが出てしまう。……ドS症候群とかかな? ちょっと加減を見極めないとそのうち墓穴を掘りそう。


「うん、気にしないでね。こっちも色々とあるだけだから」
「ん? そうか?」


頷いて許してくれたようです。スマンのぉ。
けど隠したいなら最後に色々あるとかは余計だと思うぞ?


「ええ、その代わり私からも1つ質問したいのだけど、いいかな?」
「俺の答えられることなら……」


面倒事でないならオッケーだけど。頼むからいきなり異能話は勘弁してくれよ?


「さっきから不思議に思ったんだけど、何で名前で呼んでくれないのかしら?」


……は?


「え? 名前? なんで?」


何を言ってんのこの白石転校生は。


「だって、さっきからずっと私のこと「なぁ」とか「おい」とか、適当にしか呼んでないじゃない」
「お、おお?」


少し不機嫌そうに言って来るので、おどおどしつつ少々記憶を遡って見ます。
そうだったかな? 言われてみればそんな気もするが、意識してなかったか。


「あ〜確かにそう……かも?」


と自信無さ気な返答が不満だったか、一層不機嫌そうな顔となってジッと見つめて来た。


「せめて白石でもいいからそう呼んで欲しいの!」


若干頰を膨らませて怒った感じで言ってくる。え、そこまでのことですか?  
しかし、詰められるとどうにも言い辛いわけで……。


「あ、ああ……分かったよ───転校生・・・さん」
転校生・・・!? 白石でいいって言ってるでしょう! なんでそんな意地悪するの!?」


えー 、だってよ。


「なんかメンドイ?」
「面倒い!?」


そうメンドイのです。何がって? 好感度的なヤツがだよ。


「しばらくお前のことは、転校生と呼ばせてもらうわ」
「普通にイヤなんだけど!? ってちょっと待って!?」


先に進むと後ろからぎゃーぎゃー叫んでいるが、気にせず歩いて行く。商店街のお店を見つつ、ついでに買い物でもしようかと考えていた。


「薄々感じてたけど、泉君ドSだよね!? 石井君の時もそうだけど、相当性格悪いわねっ!」 
「そりゃどうも」
 

すっかり緊張も解けたか顔を真っ赤にして、ダンダンと足を鳴らして追って来た。
結局解散するまでこのやり取りは続いた。普段なら折れていたかもしれないが、今回だけは俺も断固として譲らなかった。不貞腐れたように地面を足蹴りしている転校生には悪いが。


……いつか敵になるかもしれない相手。慣れ親しんだら最後に後味が悪いだろう?
憤慨して接近を許した際、彼女を仕留めた自分の姿が脳裏に過ぎる。


「……」


油断するなと、俺の中に居る異能者としての俺が警告していた。




“暑さは突然来る”前編へ続く。


 

おまけ───『とある疑問・お弁当編』


佳奈「ねぇ? 泉君」


零「あ、転校生」


佳奈「だから転校生はやめてって、あー……話が進まないから置いとく」


零「学習したか。……で、どうした?」


佳奈「お昼ご飯の時にも思ったんだけどさ? ……何でアレ食べれるの!?」


零「……」


佳奈「何か表現出来ないような状態だったけど! アレって食べたら絶対ダメな物だと思うけど大丈夫なの!? もぐもぐ食べてたけどどうして平気なの!?」


零「はは、アレは妹の手作り弁当だからなぁ。我が家では、妹が料理を作ってる。……俺も作れるけど」


佳奈「あなたの妹さんは、あなたを殺したいのかしら?」


零「ただ純粋に、俺の為に、料理を作ってるだけ。……本人は普通に食べてる」


佳奈「人間じゃないの!?」


零「失敬な! 天使のような可愛い妹だわっ! だから俺は! 一生懸命に作れた妹の為にも、絶対に弁当を食べるんだッ!!」


佳奈「た、食べないという選択肢は、無いの?」


零「ない!」


佳奈「即答!?」


零「たとえどんな料理だろうと妹の手作りである限り、この命がある限り、俺は食い続ける!! たとえ最後に朽ち果てても!」


佳奈「朽ち果てる前に上手くなるといいわね(何気にの危険は感じているんだ。一体どんな調理の仕方したら普通の食材がああなるんだろう?)」


*こうして葵の料理はまた更に謎が深まった。ついでに、零のシスコン具合に佳奈がドン引きしつつ危機感はあるのだと感心した。



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