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(旧)こっそり守る苦労人

ルド@

とある機関の会議

そこは、都市の複数ある高層ビル郡の1塔。
とある機関が利用している会議室内での話だ。


「急な招集をして申し訳ない、これより緊急の対策会議を始める」


20人程が入れそうな円状のテーブル。大きなホワイトボードを背に40代ぐらいのスーツを着た男性が話し出す。
テーブル席には彼の部下が集まっており、いつになく厳しい顔付きをする上司に、皆固唾を呑んで見守っていた。


「君達を集めたのは他でもない。最近ある街で発生している【魔獣狩り】について、無視出来ない最新情報が入った」
「「「───!」」」 


───【魔獣狩り】。
その単語を耳にした部下達は目を見開く。
同時に険しい顔をする上司にも納得して、無意識に頷く者もいた。


「【魔獣狩り】……例の隠れ異能者ですよね? 隊長」


そこで20代の若い青年が隊長と呼ばれる上司に確認をする。このメンツの中では、まだまだ新米の若者であったが、好奇心が増したか他の先輩よりも先に質問してしまった。


「そうだ」


しかし、そんなことで怒る程この場の面々の沸点は低くない。困ったような苦笑する者達はいるが、特に何も言わず若者の言葉に頷く上司を見た。


「まだ機関に所属していない未登録の異能者。別に珍しくもないが、異常なことは我々のように機関などで特殊な訓練も受けずに、心力を喰らう【魔獣・・】を狩っているということだ」


既に共有されている情報であるが、一度整理する為に皆に伝える。そんな上司の説明に周囲の部下達は頷くと頭の中でこれまでの情報を整理した。


【魔獣狩り】とは、ここ数年とある街で活動をしている異能者のコードネーム。
彼らのような機関よりも先に動いて、出現した魔獣が次々と倒している正体不明の存在だ。


「実は他の機関の異能者という話もありましたが、得た情報というのはなんですか?」


「……情報筋は控えるが、正体が学生の可能性が出てきた」


「なっ!?」


「そんな! どうやって!」


ついさっきまで正体不明だったのが、上司の発言で一気に逆転してしまった。
驚きの声が至るところからする中、上司は説明を続ける。


「ヒントになったのは、これまで街で出現したと思われる魔獣の出現地点だ」


【魔獣】とは、何処からともなくやって来る平穏を破る怪物。特殊な力を持つ異能者だけが魔獣の存在に気付き、それに対抗する力【異能・・】を使い出現した魔獣から人々を守っていた。
そして魔獣は、瘴気の近くに集まる傾向がある。正確には集まり出した瘴気が魔獣となるのだが、討伐した魔獣の瘴気の近くでも、出現したり集まることがあった。


「だから、ここ半年近く街で出現した魔獣の位置や討伐されたであろう、時間などを調べていった。衛星を使えばある程度は分かるからな」


実際言う程簡単ではない。正体が学生だという情報が入るや、会議を行われる一週間以上前から寝る間も惜しんで調べていた。
お陰で目の下には、立派なクマ勲章が出来ているが、誰も指摘しなかった。 


「そして得た情報と調べた結果を組み合わせたことで、とある学校まで絞ることに成功した。まだ確信まで得られないが、条件の中ではその高校の可能性が非常に高い」
「高校ですか、噂を考えると正直信じ難いです」
「失礼だとは思いますが、その情報筋が本当のことを言っているかどうかも怪しいですね」


一体どこからの情報か気になる一同であるが、上司の権限で伏せられている以上これは踏み込めない。その為、信じ切れない様子で申し訳なさそうにしていた。


「デマの可能性はないのですか? もしかしたら他の機関の罠の可能性もあるのでは?」
「その可能性も一応は考えたが、何処も動いた報告はない」
「嘘を付いている可能性もありますが」
「いや、それは無いだろう。というかメリットがない」


魔獣を倒すことは、人類の未来を守ることに等しい。普段ライバル同士の機関や他国の機関にしろ、魔獣に関しては協力して倒すことを義務付けられていた。


だが、魔獣を倒すのは簡単ではない。1体倒すだけでも困難な場合が多く、寧ろ「別の機関が倒してくれないか?」などと様子を窺う愚かな者達もいる。仕方のない話かもしれないが、何処の機関にしても異能者の数には限りがあった。


なので、自分達の管轄エリア外での対応はハッキリ言って動きが遅い。というより見て見ぬ振りをすることが多い。規模によっては二次災害を避けて介入することもあるが。


「どの組織しろ、このような場合は協力体制に入る筈だ。こんなわざわざ目立つような真似をしても、他所からの仕事の押し付けが増えるだけだ」
「国から得られるのは非公開な賞状かボーナスですしね。目立つことが大好きなヒーローに憧れている人でもない限り、それはないでしょうねぇ」


うんざりした様子の上司の説明に、苦笑いしながら部下が引き継いで否定の理由を話す。他のエリアでの討伐の場合は、協力するのが基本であるが、関わりたいと思っている機関など少ない筈だ。当然の話であるが、単独での討伐などデメリットしかないのだ。
そして、現状他の機関からの協力要請は受けていない。


なので。


「魔獣を狩っているのは、未登録のの異能者で間違いない。さらに言うと調べた際に利用した衛星からも面白い痕跡が残っていた」


説明した際に出た単語であるが、現代では、他の国との協力により、衛星から地上や宇宙から出現した魔獣を探知が出来るシステムが存在している。各機関は国の特殊なサーバーを通じて使用が可能で、これで何処から魔獣が出てくるのかが分かるということだ。


「痕跡ですか?」
「【魔獣狩り】で特殊なのは魔獣の死体は残らないことだ。もちろん倒せば丸1日程で自然に消滅するが、すぐにチームが駆け着けても何も残っていないという異常な状況だ」


それは前々から共有している情報にあった。どんな雑魚であっても普通なら倒してもしばらくの間は死体が残っているものだ。それが【魔獣狩り】の時に限ってだけ、一切の欠片すら残されていない。
まるで神隠しのようだと言う者もいるが、大半はサーチシステムの誤報ではないのかと疑っていた。
上司の発言には首を傾げるしかなく、内1人が挙手をして代表として尋ねた。


「私も2度ほど派遣された1人でしたが、戦闘の痕どころか魔獣が居た痕跡すらなく、特に何もなかったと思いましたが」
「その時の場合はそうだろうが、他の痕跡は残っていた。衛星操作で判明したが、気になって空気中に漂っている瘴気を調べたところ、前に魔獣が出現して討伐された場所から異常な濃度の瘴気が微量であるが確認された。ランクで表すならCランクだ」 
「「「ッ!?」」」 


告げられたランクに驚愕する部下達。中にはすぐに冷静さを取り戻して、その手があったかと顔に手を当てる者もいた。
異能者達は基本的に魔獣を目視出来る。しかし、肝心の瘴気に関しては感知タイプでもない限り感知すること出来ない。経験から気配で感じ取る者もいるが、感知タイプがいない場合は専用のサーチ機を持たせることが多い。サーチ機には色々な機種があるが、タブレットタイプがよく使われて、濃度も調べて危険度を測ることが出来るのだ。


そして、魔獣が発する瘴気は、魔獣が死んでも暫くの間は残っているが、【魔獣狩り】が討伐するとその瘴気も消えてしまい、いつもランクを調べることが出来ずにいた。


「念入りに調べさせた成果かそれとも珍しい危険度Cの高い濃度の瘴気だったからか、理由は分からないが残っていたのは間違いない」
「でもランクCって、本当ですか!?」 
「信じられない、まさかそんな、もしそれが本当なら凄いことですよっ?」
「ヘタしたら、国から褒賞ものです。Cから上は災害レベル扱いですから」


危険度を表す為に魔獣にはランクが付いている。
一番下がEランク〜最上位がSランクまで存在している。
濃度で決めることが多いが、大体Eランクで機関の異能者が1人で倒せる。Dランクの場合は上下が激しく異能者5人近くでも倒せないことがある。中には危険度上位でも単独で討伐可能な異能者もいるが、世界中探しても全体の2割弱で極めて少ない。


ちゃんとした機関でも危険度上位の魔獣討伐が可能な異能者は、全体に1割いるか居ないかだった。


「もしこれが単独による討伐であるなら、是非とも我が機関に迎い入れたいと私は思う。さらに街の近くには、そういった他の機関チームはいないのも確認した。他のところに取られる前にこちらが先にスカウトしようと思う!」


そうして、まとめた上司は強く宣言する。説明を終えると一度周囲を見渡す。


「反対意見はあるか?」
「ありません!」
「大賛成です、隊長!」
「新しい仲間が出来るのは嬉しいです」
「それで誰を派遣しますか? 隊長」


もはや反対意見は一切ない。それどころか次々と上がる発言の数々に少々苦笑顔になっていた。


「落ち着け。まだ相手について何も分からないんだ。それに相手が素直に機関こちらに来てくれるかも分からないんだぞ? ここは慎重に動くべきだ」 
「「「うっ、……た、確かに」」」


呆れたように注意されて恥ずかしくなったか、騒いでいたのが嘘のように静まり返った。


「ま、まぁ、とにかく一度ちゃんと現地で直接調べよう」


指摘した立場とはいえ、どうも居心地が悪くなった場に辛くなったか、話を進めて本題に入った。


「ですが、対象が潜伏している学校が判明しても、我々の管轄からは離れています。潜入させるにしてもあまり多人数は難しいですよ?」
「街に入るだけなら難しくないですが、それに他の仕事がある人も多いですから、出張調査も厳しいと思われます」


そもそも、ちゃんと調査出来なかった理由は、対象の場所が管轄外だったことだ。
自分達の管轄内での仕事がある上、彼らの中には一般の職業に就いている者もいる。中には利用して遠出することも可能な者のいるが、大半は正式な任務でもない限り厳しい要件であった。
しかし、部下達の不安は上司にとっても想定の範囲内であった。


「心配するな。潜入させるのは、1人だけだ」
「───! いったい誰を?」
「あいつを行かせる」
「「「あいつ?」」」
「この会議の欠席者だ」  


告げると部下達の視線が残っていた空席に集まった。


「もうその街に向かわせている。彼女なら立場としても問題無い。しっかりバックアップしていくぞ」


胸を張って宣言する上司に対し、部下達の不安が一気に膨れ上がった。


「か、彼女ですか!? 隊長!」
「確かに彼女なら年齢的にも丁度良いですし、転校も慣れてしまっていますが」
「実力もありますし、単独討伐の経験もありますが」
「可愛くてとても可愛い子ですが」


「「「大丈夫なんですか? 隊長!?」」」
「ああ、心配す……って誰だ!? 今は、大事な会議中にふざけたこと言ったのは!?」


彼らの不安ももっともだとウンウン頷いたが、おかしな発言にギロッと部下達を睨んだ。


「まったくお前達は、肝心なところで話を脱線させる気か」
「「「スミマセン」」」


疲れたような上司の言葉に頭を下げる部下達。冗談だと思いたいが部下達に対する信頼はこの時だけは無に等しかった。


「はぁ、こんなので内の機関は本当に大丈夫か」
「そんなぁ、酷いですよ隊長〜」
「そうですよ、いつもコキ使うくせにチョットふざけただけでー!」
「もっと信頼してくださいよ、ドS隊長・・・・〜!」


普段の扱いに不満があったのか、部下達の罵声が飛ぶ。一部明らかに悪口が含まれていたが。


「スマンスマン───ってまた誰か変なこと言っただろ! そういうところ気にしろと言ってるんだ! いい加減に黙らんと給料減らすぞ!」


結局グダグダなまま会議は続いて行き、上司と部下達、それぞれ異なる不安を残しながら終了してしまった。


******** 


そして場所は夜の街。
機関が会議中に話した調査対象の街だ。


「やっと到着した〜」


1人の女性が荷物を背負って、夜の街を歩いている。深夜な為、活気のありそうな商店街も店が閉まっており、静かな街中を女性は人の視線も気にせず、歩きながら探索していた。


「確かに怪しい匂いがプンプンするわ」  


旅行者気分で楽しげに歩いて進む。夜風と共に揺れる短めのポニー 。


「敵か味方か分からないけど、すっごい人なのは間違いなさそうだね」 


そこで一度立ち止まる。探すように左右に動かしていた視線が一点を指すと、目的の学校がそこにあった。


「今度の学校生活は何が始めるかな? 噂の【魔獣狩り】も気になるけど学生らしく満喫しなきゃね!」  


“いつもの生活”へ続く。




おまけ───『とある食卓』


主人公「ただいま〜」


妹「お帰りなさいです、兄さん」


主人公「はいこれ、お前に大好きなショートケーキだよ、一緒に食べようか」


妹「ありがとうございます。……兄さん」


主人公「ん、何?」


妹「出番……なかったですね?」


主人公「……うん」


主人公・妹「「……」」


妹「一緒に食べましょうか、兄さん」


主人公「うん!(感涙)」


デザートタイム。


妹「兄さん、結局出番なかったですね」


主人公「心配ない、次回から俺の時間だ!」(決定事項)


妹「頑張ってくださいね、兄さん」


主人公「あ、ああ、ところで妹よっ!」(萌えそうになったのを誤魔化す)


妹「?」(可愛らしく首を傾げる)


主人公「相変わらず、料理下手だな〜」(何気ない一言)


妹「……」(がーん!!!) 


主人公「……(あ、しまっ)」 


妹「お兄ちゃんのばか〜〜!!!!(涙)」(自分の部屋にダッシュ!)


主人公「……やっちまった(汗)」(がくり)


その後、妹を部屋の前で一生懸命、褒めちぎる主人公であったが、帰って来た両親からまるで口説いているように見えてしまい、緊急の家族会議が行われてしまった。



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