オリジナルマスター外伝【神の魔法使いの弟子】

ルド@

オリジナルマスター外伝【神の魔法使いの弟子】

「モグモグ……」


今年の日本は本当に暑くて辛いが、敢えて暑い日に熱いもの食べるのまた良い。
夏の制服に汗が染み込む中、俺──龍崎りゅうざきじんはタコ焼きを貪るように食べている。


高校1年生の極・普通の学生である。


「う〜〜美味だな」


帰り道にタコ焼き屋で買い食いをしながらの帰宅中。時刻は既に夕方を回っていたが、この時期だとまだまだ明るく暑いのが普通だった。


「いつもならさっさと家に帰って、クーラーで冷えた部屋に帰るところだが…………」


そこで溜め息をつくと持っていた空のパックを用意した袋にしまう。家に捨てようと学生鞄に放ると入れ替わって、朝郵便受けにあった手紙を取り出す。


白い封筒に仕舞われて留める部分には奇妙な陣が描かれたシールが付いている。
封筒には差出人の名前はなく住所なども書かれていなかったが、妙なことに貼られたシールの下に何故か時間が書かれていた。


そして、それは現時刻を指している。時間が経過すると同時に留めていたシールが剥がれ妙な陣も消えていた。


決められた時間に開くことができる特殊な手紙。
その現象に大して驚くこともなく俺は、慣れた手付きで封筒を開けて折り畳まれた便箋を広げ読み出した。







我が弟子(仮)へ。


この手紙を読んだということは任務を引き受けたと判断させてもらう。


お前にとって傍迷惑な話だが、こちら側の魔力の吹き溜まりが発生した。
現時刻からおよそ20分後だが、そこから南の区周辺でC、Dランクの魔物出現の予報が入った。正確な位置までは特定はできてないが、お前の未熟な探知魔法でも十分探知が可能な筈だから見つけ次第始末しろ。


数の方は多くて5体未満だが、例によって変動する場合もある為注意すること。そちらの警務部隊が対処して“魔石”を回収されると面倒だからその点も注意が必要だ。


いつもように“魔石”は回収するか破壊の2択だ。
絶対に見逃すな。回収できればそれが一番だが、できないと判断したら即座に破壊しろ。




では、健闘を祈るぞ我が弟子(仮)ジンよ。


PS:ところで妹と幼馴染とは仲直りできたか?  お前はオレに似てその辺り酷く不器用だから師としては心p────









ビリッ、ビリッ。


「……よし」


後半余りにも余計な追伸が含まれていたが無視して破いた。奇妙な行動に若干人目が集まりはしたが、さっさと簡単な火の魔法・・・・で灰にして歩き出す。
街中での魔法使用はマナー違反な為、少々険しい眼差しを向けられはしたが、ただ紙を軽く燃やした程度だったのでそれほど長く続かなかった。


この世界には極普通に魔法が存在している。
使える人間と使えない人間もいるが、遥か昔からある不思議な力はすっかり世間に馴染み浸透していた。


先ほど俺が買い食いにいたタコ焼き屋の店員も魔法使いだ。タコ焼き機の鉄板に火の魔法を使い絶妙な加減の熱を与えることで、よりカラッと焼けたタコ焼きが出来ることで有名な大人気のお店だ。


他にも風の魔法を使える天気予報士が気象情報を発表したり、水の魔法が扱える消防士の特殊レンジャー部隊が居たり、工事や電力関係では土の魔法や雷の魔法使いが、夏のイベントでは花火作りで火と風と土の魔法使いが共同で特大花火を打ち上げたりもする。


そして魔法を使った犯罪をする魔法使いを取り締まる警察……魔法警務部隊も存在している。魔法テロや魔法災害などでは非常に頼りなる集団だが、時たまに面倒な集団でもある。
もちろん批判的な意見も少なくない。魔法使いでない者の中にも化け物を見るような目で見ている者もおり、不安を抱き抗議デモなども起きていた。




ま、逆にバランスが取れているとも言える。
少々特殊な環境で魔法と向き合ってきた俺から見ても、こういった抑制する力も必要だと感じられたからだ。


魔法家系に育ったのに魔法の才がなく追い出され、ちょっとした手違いで異世界の神の魔法使いに出会った(神っていうと凄く嫌がるので本人の前では言わないが)。半ば強引に弟子にさせられ異世界の魔法を覚えて帰ってきたのだが、その師の所為というか尻拭いをこの自分の世界でする羽目になってしまったのだ。


そう、あれは高校に入学したばかりの頃だ。
突如、夢の世界に現れた師匠が照れくさそうに告げてきたのがきっかけであった。







「悪い。世界を繋ぐゲートが破れて異世界こっちの魔力現代世界そっちに漏れちゃった」









切り出された最初は殴り飛ばしてやろうかと思ったが、夢の世界じゃ意味ないのでグチグチ文句を言うだけに留めた。(後日、奥さんから折檻を受けたので笑ってやった)


師匠は魔力がこちらに漏れたと言っていたが、それはこちらに流れると変異して魔物や呪われた武器類、または異常現象を起こすエネルギーでもある。正確なことは訊いてないので知らないが、こちらの世界の魔力と異世界の魔力が接触すると、化学反応にも似た異常な反応を起こして危険なのだ。
通常は“魔導神の操作コントロール”で他所から漏れ出す魔力を異世界との境界で操り、無害の魔力へ変化させている。
しかし、あくまで異世界の神である師匠が、干渉を許されるのは自分の世界のみ。こちらの世界への干渉は影響が大き過ぎる為、師匠も大それた真似ができないそうだ。


で、ちょうど弟子にして異世界のこともちょっと知って帰っていた俺に、その後始末を頼んできたのだ。一応こっちの世界にも魔物が存在して似た魔物も多数いるが、出現場所が限定的な為、仮に街中で出没したら間違いなく大騒ぎになってしまう。あと魔石に関しても向こう側の魔力で生み出された原石なので調べられるのは非常にマズイのだ。


正直なんで強引に弟子にされただけの俺が、そんな危ない後始末しないといけないんだと、最初の頃は文句も当然ながらあった。


しかし、その師匠のお陰で異世界のであるが、魔法も使えるようになった(現在は一時的に能力が抑制さているが)。
さらにその影響か現代世界の魔法も少しずつであるが覚え出してきて、以前はどれだけ鍛錬しても全然身に付かず嫌な日々だったが、こうしてハッキリと習得出来ていると実感が味わえるようになり、楽しい日常に変わっていた。といってもまだ初級魔法ばかりだが。


そう考えれば多少の師匠の尻拭いも仕方がないと割り切ることができた。恩もあるが、それ以上に俺を見捨てようとしなかったあの人に、どうにか報いたいという気持ちが強かったから。
異世界に飛んだ際、あの人が作ったダンジョン内部で入った為、他の異世界人との接触は少なく師から呼び出した謝罪と共に魔法の訓練を受けさせて貰い帰ってきた。途中、水色の綺麗な髪をした奥さんもダンジョンにやって来て、手厚く歓迎してくれたのは嬉しかったが、息子の相手をしているような対応に少々気恥ずかしくあった。


こちらでは僅か半日足らずだったが、あちらの世界で得た経験が今の俺を作っていた。


それ以降も度々、問題発生の連絡が電話、メール、手紙などで届くようになっていたが、その分師から貰える報酬が良かった。魔物の退治も魔石が手に入るので美味しい仕事だった。









「ここか」


異世界から漏れる魔力の吹き溜まり場所は、割と簡単に見つけることができた。


住んでいる街の南区にある老朽化して廃墟となった建物だ。工事用の柵を飛び越えて階段で2階へ上がり、探索魔法で普段感じ取れる魔力とは異なる異世界の魔力を探知して進んでいく。普段大気中に漂っている濃度の低い魔力とはまったく違う、濃度の高い魔力をハッキリと感じ取れていた。


異世界に行ったことのある俺だからこそ気付いた違いだ。
生成される魔力が少ないことも原因だと思われるが、こちらの世界に比べて異世界は魔力が満たれた場所で濃度も高いのが特徴である。逆にこちらは漂っている魔力が少ない所為で魔力濃度が低いと感じられたのだ。




「ま、中には魔力充満した場所が発生してダンジョンみたいなのが出来るらしいが」


生憎異世界のダンジョンしか出会ったことがない俺は見たことはないが。異世界のダンジョンは作った本人の影響でとてもダンジョンとは思えない、どっかの夏のオアシスみたいだったので参考にはならないだろう。
いつか入ってみたいと心の中で頷いて気を引き締めると、魔力の吹き溜まりがあるフロアに到着する。


「こいつか」


入り口から少し歩き辺りを見渡す。少し離れた隅にある濃いグレー色の水溜りを目視。魔力探知で状態を調べて情報と合っているか確認をした。


「魔力量が多い。分散すれば確かに4、5体になるか」


違ってもどのみち残しておくのは危険なので排除するだけだ。師匠から後日連絡が来るだろうと確認を終えて誰も来ないように魔法を掛ける。




手のひらに魔力を集めてパンッと合掌のように叩く。
生成された魔力が周囲に霧散して目で見えないほど薄くなりフロアを囲う。目に見えない結界となって外側からの探知と内側の魔力が漏れないように締め切った。


すると俺の魔力で活発化したか。水溜り揺らぎ反応をしだして中から、人外にしか見えない歪な黒い腕が飛び出る。魔力探知を使っていた俺には、魔力が実体化したようにも見えていた。


そうして次々と向こうの魔力が形を変えて出てくる。


明らかに自然界の動物とは異なる獣の脚。
腐臭が漂う巨大な骨の腕。


そして、さらに馬鹿デカい腕から全体まで出てきたところで打ち止めとなる。
淀んだ水溜りが消失して代わりに種類様々な魔物たちが立つ。


「ダークゴブリン、ダークウルフ、ダークスケルトン、最後にダークオーガか」


すべて異世界のダンジョンで戦った魔物だが、俺は脳裏で識別して個体の詳細を流れてくる。師から教わった『検索魔法』のお陰で俺は異世界の魔法知識から魔物だけでなく、初見の魔法に関する物でも調べることができた。


魔物の危険度はオーガ以外はDランク(一般学生の魔法使いが苦戦するレベル)。各1体ずつ姿を現してゴブリンとスケルトンは棍棒と剣を携え、ウルフは牙を見せ眼光を飛ばして威嚇してくる。


ダークオーガはその上のCランク(大学の魔法使いが苦戦するレベル)。一際存在感がある巨大の魔物で剛腕の腕と脚、猛獣のような形相をした鬼だ。魔力も随一で威圧を放ち睨みつけていた。


「どいつもこいつもやる気満々だな」


そいつらが同時に現れた時点で厄介だが、異世界で激戦を潜った俺は慣れた手つきで魔力を操作して自分の『属性魔法』を発動させる。


『属性魔法』。
その名の通り属性魔力を使った魔法のことだ。
先ほどから使用している『探索魔法』、『検索魔法』も無属性に該当する魔法だが、魔力のみでも発動できるので異なり、『属性魔法』は決められた属性の魔力でしか発動できない限定的な魔法だ。


たとえば火の魔法なら火の属性が。水の魔法には水の属性が。
当たり前のことだが、決められた属性魔力が必要なのである。


ところが俺が使用する『属性魔法』は少々ちょっと異質だ。
基本属性の火、風、雷、土、水の5つ、そして特殊属性の光と闇が使えないと会得できない極めて珍しい派生属性────【天地】。


自然界の力を操ることができる特殊な派生属性。
異世界で身に付けた属性で師匠曰く、属性取得の条件が厳しい過ぎる為、歴史的にも片手で数える程度しか使い手が居ない。その為まだすべてが解明されていない属性の一つだ。


神の魔法使いの師匠は使えるらしいが、相性が悪いという理由で使用してこず、神なのに殆ど知らなかった。結局自分で調べることとなって、ダンジョンにあった図書館と『検索魔法』もフルに活用し実験も重ねていくことで、【天地属性】の特性を大体は掴めることができた。


帰還後、【天地属性】にも制限が加わり、全開ではまだ扱うことができない状態だが、身に付きつつある初級魔法と合わせれば、制限があっても十分強力な属性となる。


「ふ!」


両手に集めた火の属性の赤い魔力オーラを飛ばす。
瞬間、爆炎が吹き出し巨大な炎の塊となって、威嚇している1体のダークゴブリンを襲った。


「ゴプッ!?」


いきなり巨大な炎が向かってきたことでゴブリンは目を見張る。突然の攻撃に逃げるのが遅れて咄嗟に棍棒でガードしたが、見た目以上に炎の塊は高熱だ。盾にした棍棒が飛んできた炎の塊に触れると蒸発したかのに接触部から溶け出して始める。僅かな抵抗分だけ放たれた速度は遅れたが、次の瞬間ゴブリンの肉体を飲み込むように巨大な灼熱の炎は、体内にあった石ころサイズの魔石だけを残してすべてを溶かし尽くした。


「……ッ!!」


他の魔物は寸前で退避したが、ゴブリンを燃やすというより溶かしてく炎の塊を見て狼狽して慌てた様子を見せている。唯一オーガのみは冷静にこちらの様子を窺っていたが、顔には隠し切れないほど汗をかいて、巨体でありながら脚が下がって臆しているようだ。




今使用したのはこちらの世界の魔法。
初心者の魔法使いが訓練として扱う、火の初級魔法の『火炎弾ファイア』。


本来であれば野球ボールくらいの球が生み出される魔法だ。威力も初級魔法に相応しい手持ちの小さなロケット花火程度の威力で手榴弾程の威力もない。肉体を貫通せず銃で撃った方がいい程、使えない初心者用の魔法である。


しかし、今放ったのはその数十倍以上の巨大で威力も数段高いものだ。
たとえが難しいが、Aランク、Bランクの魔物を相手するプロの魔法使いが使用する上級、最上級魔法と同等レベルの威力があった。


「はぁ!」


続いてスケルトンへ意識を向けると再度、ゴブリンを瞬殺した『火炎弾ファイア』を発動させる。
しかし、今度は放つことはせず魔力を操作して、拳を握った両手に収まるように留める。両手の拳に炎が出るが火傷することなく、少し熱がある感覚で炎が噴き出ていた。


「……!」


そして片方の拳を後ろへ振るう。すると拳から炎が軽く爆発を起こして一瞬だけ、ジェット噴射のように出て俺の体を視認できないほどの高速で飛ばす。
見た者がいれば俺が立っていた位置に一気に膨らんだ炎と残像が残っていたのが見えただろう。魔物たちにはどう映ったか分からないが、少なくともスケルトンは完全に俺を見失った。


「はぁ!」


「ッッ!!」


より一層慌て出して四方へ目を向けようとしたが、そもそも目がないのに見えているのかと不思議に思いつつ、背後からスケルトンの背中から胸元上部へ、斜め上に打ち上げるように炎の拳で穿つ。


「……ッッ!!」


声無き悲鳴を上げるスケルトン。全身の骨がカタカタと鳴り響き、胸元の骨も芯が折れる音と共に砕けていく。僅かに体を揺すって抵抗も見せたが、持ち上げられるように背中から打ち抜かれ、返って自身の身を砕いて滅ぼすだけだ。少し動かすだけでヒビが入って崩れ出す身に動揺し躊躇ためらったところで、俺は打ち抜いた拳に力を入れた。


「ふん!」


拳を押し込むように上げ切って頭部を砕く。衝撃でバラバラになって炎が移り全身が燃えていく。あっという間に骨が炭になって燃え尽き、埋め込まれていた魔石が地面に転がり落ちたが。


「──!」


俺は目で確認せず探知魔法が反応から即座に回避に移る。すると俺がさっきまで立っていた位置に黒い影が走り抜いたのを見えて、どっちが狙ってきたかを理解した。


「……へぇ、よく動けたな。てっきりビビって尻尾を縮こませてると思ったが?」


「ガルッ」


言葉は通じないだろうが、挑発しているのは声音と視線で感じ取ったようだ。先ほどのようにダークウルフは獲物である俺に飛び掛かる。全身真っ黒な毛皮のなので疾走する奴の姿は、闇そのものが襲ってきているようにも見えた。


「ガルッ!!」


「速いな!」


素早く動き首元を噛み付いてくるダークウルフを躱して、俺は両手のジェットの炎で横へ飛ぶが、動体視力が優れたウルフは超速移動の俺を見失わず、俊敏に動いて先回りし追い付いてくる。本気を出せば振り切ることも可能だが、屋外ではなくビル内なので少々狭い。誤って柱や壁にぶつかってしまうリスクが大きかった。


が。


「ふ!」


えて追い付かせた俺は、急停止すると同時に『火炎弾ファイア』を放つ。両手には既に炎を点していたので、ほぼノータイムで撃たれたサッカーボールサイズの球。
凄まじく回転をして迫り来るウルフへ一直線に突撃する。


「ガルッ!」


だが、持ち前の敏捷性が疾風の如く駆けるウルフの脚を止める。直撃する前に俊敏に横に跳躍して躱し、両手から放たれた『火炎弾ファイア』の直撃を避けてみせた。


「ガルルルッ!!」


通り過ぎる炎の球に一瞬だけ目を向けると、地を蹴ったウルフは闇の風となって駆ける。もう一度炎の球が飛んでくる前に俺の仕留めようと、ここぞとばかりに牙を立てて食らいつきに来たが。


「いいのか?  警戒を解いて」


言葉なんて分からないが、俺はそう忠告して仕掛けていた魔力を操作。
火炎弾ファイア』を放った両手を振るい、『火炎弾ファイア』と繋げていた目に見えない2つの魔力線ラインを操る。ロープのように球と繋がって動くそれを左右に螺旋状に振るい、迫っていたウルフを巻き込んで縛り上げる。


跳躍中に捕まった為、空中で浮くような形でウルフが愕然としていた。


「ッ?  ……ッッ!?」


そこでようやく自分が捕まったことに気付いたが、俺が目に見えない魔力線ラインの縄を属性を加えたことで、自分を巻いている赤い火属性の縄に驚いたようだ。


「ガ、ガルルルッ!?」


が、その時には火の属性によって高熱の縄となった、火の魔力線ラインの熱で肉体が焼けていく痛みに吠えるだけだ。魔力線ラインの先の『火炎弾ファイア』を吸収して巻き付いている部分に炎熱が移ったところで、肉体がバラバラに焼き切られてしまっていた。









「グガァ!!」


「ふ!  やっぱりお前は別格だなぁ!」


いよいよ自分だけになってしまい覚悟が決まったか、先ほどまで引き腰だったオーガは自ら仕掛けるように突っ込んでくる。
俺の炎の拳を同じく拳で迎え打ったが、興奮し過ぎて痛みが感じなくなってしまったのか、拳や腕が焼けても構わず巨体を動かして続けているが。


いくらなんでも痛みを感じなさ過ぎないか?
不審に思って探知魔法を使用して、注意深く魔石から流れる魔力を覗く。


ランクが高い分、魔力量は他の魔物よりも多いのは当然だが、他に比べて魔力が活性化しているように窺える。全体に活性化した魔力が巡ってオーガを興奮状態にしているようだった。


「何かの能力スキルか。多分“野性解放”、“狂鬼化”とかの暴走系の固有スキルの!」


俺たち人間の中には稀だが、ランクの高い魔物たちの中には固有の能力、スキルを持ったタイプが存在する。その能力は様々だが、種族によってだいたい似た能力が多い。異世界ダンジョンでオーガも倒した経験がある俺は、検索魔法の知識も合わせて予想を付けた。


「ふっ!  はっ!」


使われているのは恐らく暴走状態を促すスキル。攻撃性が増して痛みが感じにくくなる効果だろうが、返ってそれが仇となった。
興奮状態ということは元々単純な思考が崩壊して攻撃より直線的になる。風圧を乗せたオーガの拳を読み切った上で躱して、炎の拳をそのボディに打ち込んでいく。


「オ、オオオォ……!」


いくら痛みが感じ難くなったとはいえ、その衝撃は暴走するオーガの体を押し返す。
何度も打ち込んでいくつれて、呻き声を漏らしていく勢いが落ちていくオーガ。追い払おうと腕を振るい蹴りを入れてきたが、動きが鈍く動作も見ているので余裕の歩行で躱すと、右腕に『火炎弾ファイア』の魔法を集中させる。


しかし、注いでいる魔力は初級魔法を発動させる程度。先ほどまでの魔法もすべて俺は上級どころか中級魔法にも満たない魔力だけで扱ってきた。


そもそもこれだけの威力と性質、形態を自由自在に変えれる初級魔法は存在しない。初級魔法はただの教科書の魔法のようなもので、威力が上がる魔法式もなく単純な術式のみだ。


だが、ある2つの条件をクリアした俺だけは、誰もが使うことはない初級魔法を上級魔法クラスまで引き上げることが可能だ。


そしてその1つが魔力だ。
厳密には異世界の魔力。異世界で魔法を鍛錬を受けたことで俺はこの世界だけでなく、あちらの世界の魔力も別枠として宿していた。




2種類の魔力と2種類の魔法を扱えれる魔法使い。
それが俺だった。


扱うのが危険な2種類の魔力の掛け合わせ。
師が得意とする“融合”に近いが、その結果発生するのは、出力、形態、性質などの能力の強化や進化だ。本来であれば俺でも使用は厳禁である掛け合わせだが、俺には【天地属性】が存在している。


初級魔法を発動させる際、俺はこの世界の魔力を注いで使用するが、同時に【天地属性】の火の魔力も注いで魔力操作をしている。


自然界の力を操る【天地】の能力。
基本属性の5つと光と闇の魔法を使用する際、天地属性によって能力が向上して詠唱が必要なくなり、魔法を自由自在に変化させることができる(【天地】の技量が満たされていることが前提)。


簡単に言うならこの属性だけで、今上げた7つの属性に関する魔法がすべて【天地】の特性を重ねて使えることが可能なのだ。“融合”とは違う、追加の付与効果に近いものだ。


言っている意味がややこしいが、要するに。


初級魔法の『火炎弾ファイア』が2種類の魔力によって限定された能力が解除される。暴走しかねない魔法に変わるが、【天地】の特性能力で魔法をコントロールできる上、魔法のそのものを激変させる。




「今度のは『火炎弾ファイア』のさっきまでとは違うぞ」




腕に込めた『火炎弾ファイア』の質を【天地】の特性で変えていく。
噴き出していた炎が腕に吸収されていき、手の部分だけでなく腕まで赤く灼熱の色へ染まる。


それはまさに溶岩の腕だ。右腕と『火炎弾ファイア』を完全に同化させると灼熱のマグマとなった拳を構えて……。


「はぁーー!!」


「グガァアアアアア!」


やけ気味に雄叫びを上げ突進したオーガを腹に大きな風穴を開ける。紅蓮の炎が奴の腹を通り抜けて、全身を燃やしていくと。




「トドメだ」


もう1つの派生属性の【時空】によって剣を取り出す。
師の聖剣の欠片から造られた剣────その名は『継承された神ノ刃イクス・セイバー』を腕に装着した。


【聖】、【天地】、【時空】のSランクの魔石が備わった魔法剣。
見に余った桁違いの剣だが、こいつと共に師のダンジョンを制した。


そして頼りになる白金色に輝く相棒を構えて俺は剣を振るう。
するとオーガの全体に白光の十字が刻まれ、【聖】の力で対象の魔物を滅していき────。




「『永遠の終焉へザ・ラスト』!!」




ダークオーガが粒子にして消失させたのだった。
他よりも質の高い魔石だけを残して。









「帰るか」


そして魔石を回収して結界を解くと俺は、爺ちゃんと食べる晩ご飯の材料を考えながら建物を出る。
途中、騒ぎを聞きつけた魔法警務部隊に混じって幼馴染と妹を見かけたが、俺は人混みに紛れて建物の中に入っていく2人に内心謝罪しつつ、「無茶するなよ」と苦笑して人混みの中に消えていった。





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