オリジナルマスター

ルド@

第14話 不機嫌な訳と封じられた鬼殺しのチカラ。

雷の貫通弾はスケルトンの関節部を適確に破壊。

風の貫通断はスケルトンの関節部を適確に切断。

属性によって効果が異なる弾を2種類。
さらに『銃撃形態バレットモード』の術式効果の『魔物追尾』『照準指定』によって、銃口を合わせることなく適確に関節部を破壊することが出来た。

師匠は専用技──スキルを生み出す際、基本属性の武器型などには、術式効果、付与効果などは加えなかった。威力が高過ぎる所為で余計な術式が加えることが出来なかったそうだが、上の融合属性までいくと流石に相手のレベルも桁違う。

2つの基本属性の融合だと、特性を活かした簡単な効果が加わっていた。
2つ以上の場合、『超融合』と呼ばれた4つの融合属性には、さらなる効果が付与されていた。

力技が多い師匠の魔法だったが、この2つ以上の属性を掛け合わせた“融合”と属性を利用した“スキル”には興味が湧いた。基礎魔法以上が使えない俺自身の戦闘スタイルに参考になったし、『銃撃形態バレットモード』の案もこの時に生まれた。

「“枯らすは生命の光”──『闇食の吸収ダーク・ドレイン』」

倒れていくスケルトンに向けて、俺はまどか直伝の闇魔法を繰り出す。
詠唱込みで発動した闇の基礎魔法。倒れたスケルトンの周囲の地面から闇のオーラが溢れ出す。煙のような揺らめくオーラが倒れるスケルトンを飲み込み──捕食。スケルトンの魔石から魔力が流れていき、俺へと還元された。

「回復系の魔法か。……なるほど動けないように関節を狙ったのは、最初から吸収する為か」

捕食を済ませた闇のオーラが俺の体へ移る中、感心したような納得顔でヴィットが呟く。別世界でも魔法知識が多少でもあるなら分かるのかもしれない。

「物心ついた時から魔力量が少なかった。師匠に出会って鍛えてもらったが、結局それほど容量は増えなかったからなぁ」

とくに隠すことでもないので、体に流れてくる魔力を確かめながら口にする。

「ただ倒すと魔力はそんなに多く取れない。だから雑魚に限っては、生け捕りにし吸収して糧にする。大物には初級魔法の効果は薄いが、あのレベルの魔物のなら手負いで動きを封じてあれば可能だ」

そして流れてくる魔力がすべて体に集まる。ただ、魔法を使わないタイプのスケルトンだけだったのか、残念なことにそれほど吸収は出来てない。最初の戦いで消耗した分をギリギリチャージ出来たかどうか。さっきの攻撃分までは戻ってない。正直割りに合わないな。

「これが俺の戦闘スタイルの基本だ。少量の魔力で魔法を使い、倒した敵から魔力を奪って自分のものにする。上手くいけば1人でダンジョンを暴れ回れる」

実際に暴れ回ったが、……それをわざわざ口にする程バカではない。若干ヴィットから引いたような気配を感じなくもなかったが、どこか誤魔化すように質問が飛んできた。

「あ、ああ……ええと、じゃあ、仮に吸収した魔力量が自分の許容量を超えていたらどうするんだ?」
「普通ならパンクする。けど、俺には裏技がある」
「へぇ、どんな?」

まぁ、尋ねられても今は見せれないがな。手を振って俺は告げると歩き出す。俺たちの会話に参加せず、じっとして目をつぶっているまどかの側まで寄った。

「どうだ?」
「周囲を探知しました。今のところ、この階層には誰も居ません」

流石仕事人。やることが早い。

「念の為、正規のルート以外のルートは迷いの結界で塞いでくれ」
「誰かが来ても寄り道できないようにするわけですね」
「ああ、このタイミングでは居ないと思うが、尾形さんが報告してるかもしれない」

あの人も読み難い1人だからな。
余計なことをしないか、今になって不安なってくるよ

「それはないと思いますよ?」

しかし、俺の不安を他所にまどかはないと断言する。ダンジョンの中にあるダンジョン塔という、なんとも奇妙な光景を見ながら、まどかはクール顔で告げてきた。

「魔眼でしっかり暗示を掛けましたから、余計な報告どころか、私たちのことも忘れて警備に集中してますよ」
「……流石」

うん、ツッコミはなしで行こう。
何ごとも平和に済むなら多少の犠牲もしかない。

「はぁ、聞こえたから突っ込まないとダメのか? この2人、表面上の顔と中の感情の温度がバラバラ過ぎて反応に凄い困る」

後ろから妙な言い方をするヴィットの声が聞こえたが、俺もまどかも視線を落ちている塔へと固定する。
当然ながら浮いてはないが、結界の方は健在らしい。空間掌握系の結界が塔を囲っていた。

「刃、あの結界の能力は……」
「外から内側への干渉拒絶。それと塔周囲の重力干渉に行動制限など効果がある」

他にも魔力干渉への防御なんかもあって厄介なのだが、そんな結界をトオルさんは難なく斬り裂いた。……本当に何代目の斬◯剣の継承者とかじゃないよね?

「破るにその拒絶を上回る程の膨大な力か、無いに等しい結界の隙間を狙って穴を開けるか。……あるいは」
「おれの出番か」

俺の横目の視線で察しがついたか、ヴィットはとくに戸惑わずやれやれと苦笑する。俺たちから少し離れると腰にある銀の鎖に触れた。

「任せろ、一発で決めてやる」

微かに感じ取った気と何かをすると、触れている鎖の一部が取れて淡く光り出す。
小さな鎖の欠片だったそれは形状を変化させる。金属と思われる素材から想像出来ないような動きをして伸びると、細長く先端が鋭い槍をした物へと変化した。

「ふっ!」

出来上がった細長い槍をヴィットは、塔を囲う結界に向けて投げる。

あらかじめ気で肉体を強化していたのだろう、まるで花火のように高く飛んでいく槍。重量はさっぱり分からないが、飛んでいく姿には空気の抵抗があるようには見えず、大きな槍のように出ている岩にも当たる気配はない。

コースを読み切っていた上で投げたのだと、俺は一瞬だけヴィットに視線を送ったが、すぐに放物線を描いて飛来する槍に戻した。


そして。


──パリッ。

ガラスが割れるような微か音共に崩れ落ちていく結界。
直撃した槍は輝いた後、そこで初めて抵抗を受けて落下地点がズレる。ザクと聞こえそうな感じで塔の端に突き刺さったが、俺たちは貼り直ることなく崩落する結界に目を向けていた。

「修復も行われているようだが、結界までは回らないようだな」
「そうですね。あの金属の正体が魔力無効化系だとしても、すぐに貼り直せば済む話ですし」

言われてみれば、とまどかの言葉に納得しかける俺だが……。

「いや、投げた槍の影響かもしれない。あの槍からは常時魔力を無効にするジャミングのようなものが流れてる。あんな小さいのだが、しばらくは効果は出てるぞ?」

と、なんでもない様子でとんでもない凄い情報を暴露したヴィットに、会話も途切れて俺とまどかは思わず視線を向けた。

「……マジか?」
「……凄いですね」

魔力無効化系とは思っていたが、常時発動型とは思わなかった。

だってあの規模の結界を無効にする程の素材だぞ? 棒高跳びとかのポールぐらいの細さと長さでしばらく無効化が続くとか、絶対に普通の素材じゃないよな。……少しでいいから貰えないかな? こっちの物と交換とかお支払いとかでもいいから。

「ああ、言っておくが、この金属の効果は鎖の状態でも発動してるから、魔法が使える奴にはこの金属を扱うのは難しいぞ? しかも見た目の割にすっごい頑丈でな、加工法も特殊で出来た奴はおれだけだ。……もしよかったら加工方法も教えてもいいが」

おお、なんとうことか。首を横に振ってるのを見ると加工も簡単にはいかないようだ。しかも欠片を貰ったとしても、常時魔力を無効にされるから俺も魔法が使えない。……気も使えるけど、単体だと効果が弱いんだよなぁ。

「はぁ、とりあえず行くか」
「ああ……ゴメンな?」
「よしよし……」

僅か期待した分、どうも気分が落ちる。気まずそうに謝るヴィットとまどかに背中をポンポンされながら、もうヤケ気味で塔に近付く。……貧相な魔物の魔力を取り込んだからか、なんか……はらへってきた。

「……乗り込む前にヴィットに訊きたいことがある」
「お、おう」
「ヴィットの目的は盗まれた物の回収のようだが、最悪それごと塔を破壊するという案は駄目だろうか?」
「う、うーん……ダメとは言わないが、出来れば回収したい。勿論回収が難しくなって取り返しのつかない事態になるなら、破壊する方も視野に入れ……っ」

何故か頬に冷や汗を流してるヴィットだったが、口を閉ざしたと思えば鋭い視線を塔に向けた。……はらがなりそうだ。

「ん? どうし──」

すると巨大な塔の目の前に魔法陣が出現する。見たことない術式から塔が関係しているようだが、……どうやら何か来るらしい。……はらがうずいてる

『グルルルルルッ!』
「……」

ライオン? 獅子と言うべきか? 灰色の姿をした巨大な獅子が番犬のように、唸り声を上げて立ち塞がってきた。……うん、まぁまぁか?

「強そうだな。敵も本気ってことか?」
「こっちの世界のAランクはありそうですね。……刃?」

「……」

不用意に近付かず様子を見る2人を置いて俺は歩き出す。後方からまどかの呼び掛けが聞こえたが、獅子を見据えた俺は────。

『グルルルルルルルルルルルゥゥーー!!』

「うるさいな、────クッテヤルゾ・・・・・・

『グッ──!?!?』

唸るような咆哮を上げる獅子ネコに、鬱陶しく感じた俺は睨み付けると────。










獅子を片付けた俺は、塔の側まで近付く。どうやらトラップはこれ以上ないと感じながら、適当な壁を選ぶ。

「ここから入るか。ヴィット、壊すの手伝ってもらっていいか?」
「……」
「ヴィット?」
「あ……ああっ! わ、分かった」

何故だろう、さっきより全身から冷や汗を流してる。……気のせいか、【カブリっていたぁああああああっ!? カブリっていたよぉぉおおおおおっ!?】【何ですかアレは!? ヴィットさんの中に居たのに凄くゾクッとしました!】、……なんて悲鳴ぽい驚きの声が聞こえた気がした。

「マジでなんだよ、あれは……」
「忠告しておきます、異世界の精霊使い」
「ッ──!?」

やはり気のせいかと首を傾げていると、近寄って来るヴィットの背後にいつの間にまどかが立っていた。

「詮索はお勧めしません。アレは魔物や精霊、神と呼ばれる存在であろうと躊躇わず牙を向けます。支配なんて求めていない、最後まで喰らい尽くそうとします。貴方の中に居る精霊達の為にも、余計なことはしない方が懸命です」

「……そうだな。肝に銘じる」

耳元に顔を寄せて何か話してるようだが、俺に聞こえないように話してる為、まったく聞こえなかった。





壁を破るのはそれほど難しくなかった。
通電撃ヴォルト』の弾丸で壁に半円を描くように貫通させると、そこからヴィットの気を込めた蹴りがハンマーのように打たれる。分厚い壁だったが、蹴りの衝撃で内側に倒れた。

そして内部へと入ると中は広く、ホールのようなスペースだった。洋風な感じがあって柱や壁には絵や甲冑、剣や槍、斧など飾られていた。

『ゴバァアアアアアアアアッ!!』
『──っ!!』

つい飾られている装飾品に目を向けていると、頭上よりホール全体に響く雄叫び。その耳障りな叫び声に覚えがあった俺たちは、一斉に顔をしかめてその場から退避する。

『ゴバァアアアアアアアア!』

そして、体を震わせる程の咆哮と共に、俺たちが立っていた場所に落下した巨漢の怪物。
見覚えのある巨大なハンマーと連接の大剣を掲げて現れた。……生きている可能性はあったが、いきなりコイツか。面倒なようなちょうど良いような。

「面倒な奴が出て来たな」

ヴィットも似た気持ちだったか、姿を見せた巨漢を見上げて苦々しい顔をしている。一度は倒した相手だが、……いや、倒したからこそか? 前に出ようとするが、やり難そうにしていた。


「いや、俺がやるよ」
「──! なに?」
「っ……刃、まさか……あなた」


その前に俺が前に出る。まさか俺が前に出るとは思わなかったか、ヴィットは驚いた顔を見せる。
ただ、【第一の封印・・・・・】の解放条件を知るまどかだけは、さっきまでの俺の様子から薄々感じ取ったようだ。微かに驚きを見せたが、すぐに納得したように気を引き締めていた。

「いいのか?」
「ああ、すぐに終わらせる。ちょっと待ってくれ」

戸惑う彼には悪いが、ここは譲ってもらう。彼なら確かに勝てるだろうが、残った敵のことを考えるのなら消耗は極力抑えてほしい。

それに……。

「一度負け掛けた相手の方が少なからず気持ちが昂るからな」
『ゴバァァアアァア!』

前に出た俺を見て緊張の糸が切れたか、突撃する巨漢の怪物。
連接の大剣を大振りで稲妻のように振るって来たが……。


「“魔力融合”」


【第一の封印】である“魔力融合”を解放して、同時に2種類の魔力が完全に1つとなる。
身体中に循環している魔力がマグマのように熱くなり、雷のように全身を引き裂く激痛が全身を一瞬で駆け巡った。


身体強化ブースト』────“羅刹ラセツ


だが、すぐに体が適応する。激痛が消えると思考も覚めていく。よりクリアになって同時に視野も広がっていき、これまでにない速度で加速している魔力回路を手のひらから確かめると……。

『……』

呆然としている巨漢を見据える。ほぼ半分のところで粉々に散った大剣を見つめて、こちらの視線には気付いていなかった。

そして、俺は強化したもう片方の手で掴んでいた、残り半分を剣先から離して地面に転がして……。


────“風魔フウマ


今度はスピード重視に変更して地を蹴ると、風になったような身軽さと速さで巨漢の顔面まで一気に迫る。

『……』

まったく反応していない怪物はようやく視線を向けるが、さっきまでの震わせる程の覇気が一切感じない。


──戦意喪失。


呆然としたまま俺を見つめているだけで、防御する素振りも見せず、目の前の未知なる存在に対し完全に呑まれていた。


────“羅刹ラセツ


そして再度筋力のみの強化を使用。
気も込めら強化された拳で、呆然と立ち竦む巨漢の頭部を。
接近した際の速度も重なって高速で放たれると、鐘で鳴らすように巨漢の頭部を……。

「“鬼殺し”」

打ち砕いた。

巨漢の躰が後転するように後ろへ吹き飛ばれる。
既にこと切れているのは明らかだったが、打ち砕いた頭部から俺の魔力が流れて、巨漢の体内魔力に接触する。

体内の中枢まで満たすと一気に膨張させて、パキパキという不気味な音を出しながら内部から巨漢の魔力へ。

ドドォォォォオオオオッッーー!!

化学反応でも起こしたように、その身ごと粉々に爆発し消滅した。

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