オリジナルマスター

ルド@

第11話 魔導王と魔女。

「今度は大技ですか? 狙いは撹乱でしょうか」

しかし、上位魔法を発現させようとするジークを、見透かすような微笑でシィーナが言う。

止めようとはしないが、僅かに視線を逸らしてシャリアとゼオに目配せをしていた。

するとシャリアは密かに杖先から魔法陣を作り出して、ゼオは所持ている大鎚に魔力を注ぎ雷光を発生させる。

「スロット選択───“攻撃・二アタック・ツー”」

その間にジークはブレスレットの魔道具『神隠し』を起動させて、攻撃スロットの一つを選択。
そして納まった七つの魔石、基本属性の七属性の魔法に魔力を注ぎ解放させた。

(『炎紅の爆撃エクス・プロージョン』、『水流の爆撃ウォーター・プロージョン』、『竜巻の爆撃トルネード・プロージョン』、『電光の爆撃ボルテック・プロージョン』『大地の爆撃アース・プロージョン』『閃耀の爆撃フラッシュ・プロージョン』『混沌の爆撃カオス・プロージョン』っっ!!!!)

爆撃系統の七つを発現させる。
瞬間、ジークの周りで七色の光の球体が発生。凄まじい程の光を放ち今にも爆発しそうなまま、ジークの周囲で浮いていた。

『『───!!』』

発現されようとする七つの光の球体に目を見開くシャリア、ゼオ、ティア。

未だに前に出ようとしないシィーナとギルドレットは動揺の色は見せていないが、二人共浮かべていた表情が引き締まり、発している空気にも鋭利な気が生まれて警戒しているのが分かる。

「“融合”」

そんな彼らを無視してジークは、発現させている七つの魔法を操作。
魔力で強引に手のひらに集めていく。

「───滅せよ」

そして完全に混ざり合ったところで、最上位クラスの融合砲撃を。

「『集う滅びの七光の一撃エレメンタル・バースト』ーー!!!!」

七属性を束ねた巨大な一撃を手のひらから放出させた。

「っ、シィーナさん!!」

その時、距離を取っていたティアから叫び声が上がる。

自分に来るかもしれない砲撃に注意していたが、その砲撃がまったく別の方向へ放たれて、目でその先を追ったこと驚愕。

「正気ですかジーク!?」

間違いなくSランク以上の強烈な一撃。
それをジークはティアたちではなく、あろうことか自分の師。

後ろで控えていた恩師でもある、シィーナに向けて放ったのだ。

「シィーナさん避けて!!」

それを見て慌てて守りに入ろうとするティア。
シィーナの実力がどれほどか彼女は知らないが、それでもこの攻撃は予期せぬものの筈。

さらに視線を横にして少し離れた場所で、どうしてか動こうとしないギルドレットを見て、やはり自分が守りに入るしかないと決断。

(っ『光速のシュヴァル……)

光の魔法で一気に駆け寄ろうとした。


だが。


「大丈夫ですよティアさん。これはダミーです」
「───え?」

光魔法を発現しようとしたティアの耳に、透き通ったシィーナの声が届く。
まったく動じた様子も見せず彼女が告げると。

「“解禁オープン”」

迫ってくる砲弾に向けて、パチンっとシィーナが指を鳴らした。
何かの魔法か、微かに魔力を感じたティアだったが、彼女が驚いたのはその後に起きた現象であった。

「なっ!」

七色に輝いて飛んでいた砲弾に亀裂が走る。
そして何故かシィーナに直撃する前で止まってしまうと。


パリンッとガラスが割れる音と一緒に、ジークの魔法がガラス細工のように砕け散ってしまった。


「ゼオよ! 上だっ!」

それを見ていたシャリアが手元の魔法陣の反応から、真に放たれた方向を察知。
待機していたゼオに告げて、杖で位置を指した。

「承知! “壊雷”!!『身体強化・雷の型ブースト・サンダー』!!」

その指示を元にゼオも駆ける。
杖を高く上げて詠唱を唱え出したシャリアとは別に、大鎚に魔力を注いで青白き雷を起こして、身体強化を発現させた。

ちなみにその身体強化もただの雷の強化魔法ではなかった。
大鎚の影響か雷属性の黄色のオーラでなく、大鎚の雷と同じ青白き自然界の近いものへと変わっている。

その様子をから見てもゼオは神炎の槍を操ったサナダよりも、ずっと『古代原初魔法ロスト・オリジン』を相当極めているようだ。

「はっ!!」

強化された脚を蹴て跳ぶゼオ。
それも魔法か空を蹴って雷速で駆け上がっていく。

雷の特性を活かして雷速移動でジークが放ち、張っている鏡によって隠れた『集う滅びの七光の一撃エレメンタル・バースト』に追いつく。

ジークが狙っていた部屋の天井に届く前に、間に入るようにゼオが跳躍。

「ふっ、ぉおおおおおお!!」

間に合ったところでまだ見えないが、戦いで培った己の勘と鎧の獣王の勘が合わさっていることで、駆け上がったところで察知したゼオ。

未だに見えない『集う滅びの七光の一撃エレメンタル・バースト』と向き合い、青白き雷光を迸らせた大鎚を振り上げて。


破壊の鉄槌を叩き込んだ。


ズゥゥドゥドオオオーーンン!!  
ピキキッガガガガァッーー!!

すると振り下ろした箇所から激しい衝撃音と先程と同じガラスが割れる音。

ガラスが割れる音と共に大鎚が当たった空間から亀裂発生すると、そこから大鎚と接触して激しく揺らいで均衡する七色に輝く砲撃が出現。

「おおおおおおっ!!」

その存在を改めて認識したゼオは、一息に大鎚を降ろし切る。
それは尋常ではないSランク級以上の巨大な砲撃。振り下ろした大鎚からも強烈な反発感が押し寄せてくるが。

「ふっおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーー!!!!」


ゼオはその一撃を身に纏う獣王の鎧と大鎚の性能だけではね返してみせた。

はね返された砲弾は弾け飛ぶかと思われたが、よほど強く魔力で固めたのか、球体を維持したまま落下していた。

「───“精霊たちよ”」

そして待っていたようにシャリアも動いた。
杖を構えて周囲にいる目に見えない精霊たちに指示を送る。

(高密度な魔力の塊だ。多少キツイかもしれないが、頑張ってくれ!)

心の中で指示を送る精霊たちに心苦しそうに告げるシャリア。
その心の声に返事はなかったが、心なしか気合い入れた様子の精霊たちはシャリアに従い落下する砲弾に接触。高密度の魔力に苦しそうにするが、精霊たちは連携し合いその魔力を抑えていく。

本来ジークの魔力は干渉することが難しい厄介なチカラ。
操ることなど困難に近い代物であるが、今回発現された『集う滅びの七光の一撃エレメンタル・バースト』は“神隠し”を通して発現された融合魔法。

魔道具の機能でジークの通常の魔力から、さらに濃度が下がっている。
燃費は実際に自分で扱うよりも悪いが、そんなマイナス面を考慮しても当時のジークにはメリットあるアイテムだった。

が、それが仇となった。

「魔力濃度が下がってるということは、逆にこちら側からも干渉しやすくなったということ!」

シャリア自身の直接の干渉は難しい。
どんなに危険濃度が下がっても、魔法師である限り困難かもしれない。

だが、同じく干渉が許された精霊たちであればどうであろうか。
一番相性の悪い闇系統のみならシャリアが命ずる精霊たちでも不可能かもしれないが、濃度が下がってただ魔力が多いだけの魔力の塊ならば……。

(できた!! 思った通りだ!!)

指示を送った精霊たちからの拒絶もなく、多少の魔力の抵抗もあったが、融合魔法を掌握することに成功した。

「マジかよ」

操作権などゼオの大鎚で叩き込まれた際に無くなっただろう。
だが、ジークはふよふよと浮き出した七色の魔力の塊を見て、やられたと頰を引きつらせると。

「ホレ、返すぞ友よ」

妖艶な大人の色香を纏った笑みで、シャリアは指を下ろす。

完全にシャリアの物となった『集う滅びの七光の一撃エレメンタル・バースト』は標的をジークに変えて────。

「散るがいい」

飛来した。シィーナが使用した魔法玉のように。
本来の主人であるジークを、その圧縮された強力な爆弾で吹き飛ばそうとするが。

「遠慮するよ」

すかさず張っていた“反射鏡ミラー”を数枚を組み立てる。

障壁のように固めると迫ってきていた砲弾を“反射鏡ミラー”に接触させる。一瞬だが、鏡を破壊しようとした砲弾だが、それよりも早く鏡の中に魔力の塊として吸い込まれる。

そして魔鏡面世界ミラーワールド』の効果で、“反射鏡ミラー”に注がれた砲弾は、反動で障壁にした“反射鏡ミラー”は砕け散ったが、ジークの操作でシャリアへとはね返された。

「いらないな!」

そこでさらに精霊たちに指示を送って、砲弾の支配権を取り戻そうとするシャリア。
直撃する前に精霊たちで頼み押し止めようとした。


「『繋がる時空の扉ゲートワープ』ッ!」

しかし、さらにシャリアの上を行きジークは空間魔法を展開。魔力の渦で出来た扉を生成してその扉に吸い込ませると。

座標を指定して出口の場所をシャリアの真上へ。

「ッ!! ───っ」

もう一つの渦の扉がシャリアの真上に出現。
気配を察知してシャリアが頭上を見上げたが、その時には既に渦が広がり、中心から現れた砲弾が彼女を────。



「“六花虚空”」
「───貴様っ!」



彼女を覆うように展開された六枚の金の翼によって遮られた。

接触と同時に巨大な爆発が起こるかと思われたが、その金色の翼の効果なのか。接触際に振るわれた途端、均衡することもなく霧のように四方へ消失した。

「魔除けの羽根……」

それを見てジークはシャリアの後ろへ視線を向ける。振り返りたくなさそうなシャリアを無視して。

守られたことには感謝しているが、その男の体質のせいか嫌そうな顔でいた。
性格の所為も十分あるので同情の余地もないが、その男が遂に動くのであれば、ジークも色々と覚悟をしなくてはならない。

「オレも混ぜてくれよ。お二人さん」
「嫌って言っても混ざってくるじゃないですか? ギルさん」

焦げたような茶髪の男が挨拶に、手と一緒に金の翼で振るう。
いささかふざけた感もある対応だが、ジークのその翼の危険性を知っている。……彼自身の

(どうしたもんか。……勝てる気がしない)

そして始まろうとするギルドレットとの対決。
ジークは限りなく低い勝算を脳裏で導きつつ、首をコキっ鳴らして構えを取った。

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