オリジナルマスター
第11話 彼女。
「終わったようだな」
「あ、ホントだ」
思ったより会話に集中していまいサナの試合を見終えれなかった二人。
ジークの方はそれほど気にしてないしそれどころではなかったが、リナの方は少し残念そうな表情だ。
「サナは全勝か?」
「うん、姉様も今回は張り切ってるから」
「へぇ」
そうして会話を終えるとジークは次の試合の時間が近づいていることに気付く。
「悪いけど俺もそろそろ行くわ」
「あ、そうなんだ」
「ああ、サナによろしく」
呟くと移動を開始したジーク。
そんな彼の背に向かってリナが声を掛ける。
「あとで姉様と一緒に観に行くから!」
「……できればこないでくれ」
これ以上知り合いに見られると色々と堪えるものがあるので切実に願うジークであるが。
「うん! 断る!」
背を向けたまま願い出たジークに満面な笑顔で断るリナ。
どうやら調子が本当に戻ったらしいのだと、ジークは苦笑を浮かべながら諦めの息を吐いた。
◇◇◇
(はぁ〜……くそ、ホントなんでこんな時に)
もうすぐ自身の試合が始まる時間。
それなのに全然集中出来てない自分に苛立ちの感情が覚えるジーク。
普段のジークから想像出来ないほど──────焦っていた。
(分からない。奴は知っていたのか? 偶然じゃなかったのか?)
一年前の事件、バイソンがアイリスを狙ったのは偶然だと、当時ジークは思っていた。
だが、その考えが実は誤りだったのでは───────先ほどのリナの会話を聞いてジークはそう感じてしまっていた。
「はぁ……頭いたい」
考え過ぎて頭痛にあうジーク。
こういったことを推理するのは好きではないのだ。
(いっそ抜け出すか? ……て、それはさすがに無理だな) 
すぐでも調べ直したい気持ちがあるが、今は予選会中である。
それに調べたい事柄が一年前の事件である以上、調べるとなるとかなり時間がかかると考えて方がいいと、ジークは浮かんだ考えを放棄する。
「ていうか、今更情報なんか洗い出しても……あんまり出ないと思うなぁ」
なにせ当事者であったバイソンは王都の監獄幽閉されて、ジークでも本気で踏み込もうとしない限り手が出せない。
しかも顔と名前を変えて入れられてるうえ、精神が完全に死んでいる。
(とりあえず落ち着こう。今は試合に意識を切り替えて─────)
「……ん?」
と、歩いてる途中でジークの胸ポケットに振動が走った。
「これは……」
同時に魔力の気配を感じ取る。
魔石が反応しているのだ。
「……」
しばし黙り込むジークは胸ポケットで呼び掛けてくる通信石を手に取った。
「やれやれいったい何かね?」
なにやら嫌な予感がしてならない。
彼が手に取った通信石。
それはシャリアから支給された通信石ではなかった。
「それで、なにかあったんですか? 師匠」
─────それは彼が最も尊敬する、恩師に繋がる通信石であった。
◇◇◇
「よいのですか? 拘束せんで」
ジークの試合が始まる直前。
観戦するため近くまできていたガーデニアンが同じく観戦を希望しているリグラに小さな声で問いかける。
ちなみに今ガーデニアンが問たのたは、先ほど起きた更衣室での一件である。
女子更衣室で試合の準備をしていたミルル・カルマラが襲われた。
犯人はミルルの制服と武器類を盗んでいった。
『これより第五試合。二年ミルル・カルマラと二年ジーク・スカルスの試合を始めます』
そして現在、ガーデニアン達の視界には審判に促され集まっているジークと……ミルルが向かい合っていた。
「あそこにいるカルマラは偽者ですぞ。今が捕まえるチャンスのはずじゃ」
ガーデニアンがいったように現在ジークと向かい合っているミルルは偽者。
本物は保健室で眠っている。
なのでこの試合でミルルが現れるのはありえないのである。
「本当に良いのかな? 学園長殿」
ガーデニアンはもう一度、リグラの真意を知るため確認をした。
「えぇ、この試合、手を出す必要はありません。それと先の一件は全て、私に一任させていただきます。決して外部に漏らさないように」
他の知っている教員にも厳命していますと付け加えると、リグラは試合が見やすい近い場所に移動していく。
「何故捕まえんのじゃ? 理由が分からんのですぞ。なにか理由があるなら教えていただきたい」 
移動してくリグラの背を追いかけるようにしてガーデニアンが返答を求める。
「アクシデントではないからですよ」
そんなガーデニアンに背を向けたまま、リグラは彼にだけ聞こえるように口にする。
「む? それはいったい……どういう」
「問題ないということです。────それに」
言葉の途中で少し間を空けるとリグラはガーデニアンの方へと振り返る。
「この試合は止めるべきではないとは思いませんか?」
微笑みを浮かべてガーデニアンを見据えるリグラ。
その言葉に対してガーデニアンは訝しげに首を傾げる。
────いったいどういう意味なのかと。
するとリグラはニコリと笑みを見せて内心、浮かんでいた思惑をガーデニアンに告げる。
「正体不明の謎の侵入者と同じく謎の多い問題児生徒……良い組み合わせではありませんか」
「───!?」
そう口にするリグラに驚愕するガーデニアン。
だがこの時、リグラはガーデニアンに告げる中、彼女の対戦相手であるジークについて考えていた。
(試合相手が彼であるのは果たして偶然なのか。まさかあの方の相手となるとは……)
リグラはジークの正体について知らない。
なのでこの組み合わせに内心多少驚いていた。
(あの方と彼との関係は分からないが、この謎を解けば彼の正体が掴めるかもしれない)
そんな確信にも似た推測を立てるリグラは今まさに始まろうとしている彼らの試合に意識を向けることにしたのだった。
◇◇◇
「お疲れ姉様っ! ハイ、タオル!」
「えぇ、ありがとうリナ」
無事に勝利して試合を終えたサナ。
そんな彼女に最愛の妹から称賛とタオルを頂いて内心有頂天になっていた。
だがそんな心境を顔に出すと周囲の者達どころか、最愛の妹にまで引かれるので顔に出ないように頬を引き締めることに神経を注ぐが。
「姉様、実はさっきジーク先輩とお話をしてたの」
「……え?」
リナからの思わぬ発言にピキっと顔が固まってしまった。
心なしか彼女の周囲から冷気のようなものが立ち込めているように周囲から見えた。
これには実力のある生徒ない生徒関係なく後ずさってしまう。
「り、リナ?」
だがそれは姉の根性である。
強引に硬直を解いてリナに笑顔で問いかけた。
口元が若干崩れてる気がしなくもないが、当のリナは気付いていない。
「うん、この前のことで怒ってるかなぁ〜って思ってたけど、そこまで気にしてなかったみたい」
「そ、そうなの」
そう口にするリナの笑みを見ていると癒されそうになるサナだが、
(最近暗くて心配していた分嬉しいけど、素直に喜べないわね)
その原因がジークであると思うと複雑な気分になってしまうのだった。
◇◇◇
「了解したよ師匠。じゃ、今度の休みにでも一度そっちに戻るよ」
試合が始まる数分前────
通信石を通して師匠と対話をしていたジーク。
「それじゃ、また近いうちに」
そうして話がまとまったところで通信を切ったのだった。
「ふうー」
通信を切ると一息をつくジーク。
「さてと」
コキと首を鳴らすと試合区間へと急いだ。
『これより第五試合を始める。各生徒は指定の場所に集まってください』
実行委員からの知らせが耳に入った。
指示に従い、ジークは指定場所に赴いていた。
そしてそこに居たのは──────
「それじゃ、始めましょうか? シル……ジーク」
「ははははっ、何を言い間違えたのかなぁ? ミルルさん?」
深みある笑みを浮かべたミルルの姿をしたソレとの対面に、ジークは毒を含ませた口調で答えるのだった。
「あ、ホントだ」
思ったより会話に集中していまいサナの試合を見終えれなかった二人。
ジークの方はそれほど気にしてないしそれどころではなかったが、リナの方は少し残念そうな表情だ。
「サナは全勝か?」
「うん、姉様も今回は張り切ってるから」
「へぇ」
そうして会話を終えるとジークは次の試合の時間が近づいていることに気付く。
「悪いけど俺もそろそろ行くわ」
「あ、そうなんだ」
「ああ、サナによろしく」
呟くと移動を開始したジーク。
そんな彼の背に向かってリナが声を掛ける。
「あとで姉様と一緒に観に行くから!」
「……できればこないでくれ」
これ以上知り合いに見られると色々と堪えるものがあるので切実に願うジークであるが。
「うん! 断る!」
背を向けたまま願い出たジークに満面な笑顔で断るリナ。
どうやら調子が本当に戻ったらしいのだと、ジークは苦笑を浮かべながら諦めの息を吐いた。
◇◇◇
(はぁ〜……くそ、ホントなんでこんな時に)
もうすぐ自身の試合が始まる時間。
それなのに全然集中出来てない自分に苛立ちの感情が覚えるジーク。
普段のジークから想像出来ないほど──────焦っていた。
(分からない。奴は知っていたのか? 偶然じゃなかったのか?)
一年前の事件、バイソンがアイリスを狙ったのは偶然だと、当時ジークは思っていた。
だが、その考えが実は誤りだったのでは───────先ほどのリナの会話を聞いてジークはそう感じてしまっていた。
「はぁ……頭いたい」
考え過ぎて頭痛にあうジーク。
こういったことを推理するのは好きではないのだ。
(いっそ抜け出すか? ……て、それはさすがに無理だな) 
すぐでも調べ直したい気持ちがあるが、今は予選会中である。
それに調べたい事柄が一年前の事件である以上、調べるとなるとかなり時間がかかると考えて方がいいと、ジークは浮かんだ考えを放棄する。
「ていうか、今更情報なんか洗い出しても……あんまり出ないと思うなぁ」
なにせ当事者であったバイソンは王都の監獄幽閉されて、ジークでも本気で踏み込もうとしない限り手が出せない。
しかも顔と名前を変えて入れられてるうえ、精神が完全に死んでいる。
(とりあえず落ち着こう。今は試合に意識を切り替えて─────)
「……ん?」
と、歩いてる途中でジークの胸ポケットに振動が走った。
「これは……」
同時に魔力の気配を感じ取る。
魔石が反応しているのだ。
「……」
しばし黙り込むジークは胸ポケットで呼び掛けてくる通信石を手に取った。
「やれやれいったい何かね?」
なにやら嫌な予感がしてならない。
彼が手に取った通信石。
それはシャリアから支給された通信石ではなかった。
「それで、なにかあったんですか? 師匠」
─────それは彼が最も尊敬する、恩師に繋がる通信石であった。
◇◇◇
「よいのですか? 拘束せんで」
ジークの試合が始まる直前。
観戦するため近くまできていたガーデニアンが同じく観戦を希望しているリグラに小さな声で問いかける。
ちなみに今ガーデニアンが問たのたは、先ほど起きた更衣室での一件である。
女子更衣室で試合の準備をしていたミルル・カルマラが襲われた。
犯人はミルルの制服と武器類を盗んでいった。
『これより第五試合。二年ミルル・カルマラと二年ジーク・スカルスの試合を始めます』
そして現在、ガーデニアン達の視界には審判に促され集まっているジークと……ミルルが向かい合っていた。
「あそこにいるカルマラは偽者ですぞ。今が捕まえるチャンスのはずじゃ」
ガーデニアンがいったように現在ジークと向かい合っているミルルは偽者。
本物は保健室で眠っている。
なのでこの試合でミルルが現れるのはありえないのである。
「本当に良いのかな? 学園長殿」
ガーデニアンはもう一度、リグラの真意を知るため確認をした。
「えぇ、この試合、手を出す必要はありません。それと先の一件は全て、私に一任させていただきます。決して外部に漏らさないように」
他の知っている教員にも厳命していますと付け加えると、リグラは試合が見やすい近い場所に移動していく。
「何故捕まえんのじゃ? 理由が分からんのですぞ。なにか理由があるなら教えていただきたい」 
移動してくリグラの背を追いかけるようにしてガーデニアンが返答を求める。
「アクシデントではないからですよ」
そんなガーデニアンに背を向けたまま、リグラは彼にだけ聞こえるように口にする。
「む? それはいったい……どういう」
「問題ないということです。────それに」
言葉の途中で少し間を空けるとリグラはガーデニアンの方へと振り返る。
「この試合は止めるべきではないとは思いませんか?」
微笑みを浮かべてガーデニアンを見据えるリグラ。
その言葉に対してガーデニアンは訝しげに首を傾げる。
────いったいどういう意味なのかと。
するとリグラはニコリと笑みを見せて内心、浮かんでいた思惑をガーデニアンに告げる。
「正体不明の謎の侵入者と同じく謎の多い問題児生徒……良い組み合わせではありませんか」
「───!?」
そう口にするリグラに驚愕するガーデニアン。
だがこの時、リグラはガーデニアンに告げる中、彼女の対戦相手であるジークについて考えていた。
(試合相手が彼であるのは果たして偶然なのか。まさかあの方の相手となるとは……)
リグラはジークの正体について知らない。
なのでこの組み合わせに内心多少驚いていた。
(あの方と彼との関係は分からないが、この謎を解けば彼の正体が掴めるかもしれない)
そんな確信にも似た推測を立てるリグラは今まさに始まろうとしている彼らの試合に意識を向けることにしたのだった。
◇◇◇
「お疲れ姉様っ! ハイ、タオル!」
「えぇ、ありがとうリナ」
無事に勝利して試合を終えたサナ。
そんな彼女に最愛の妹から称賛とタオルを頂いて内心有頂天になっていた。
だがそんな心境を顔に出すと周囲の者達どころか、最愛の妹にまで引かれるので顔に出ないように頬を引き締めることに神経を注ぐが。
「姉様、実はさっきジーク先輩とお話をしてたの」
「……え?」
リナからの思わぬ発言にピキっと顔が固まってしまった。
心なしか彼女の周囲から冷気のようなものが立ち込めているように周囲から見えた。
これには実力のある生徒ない生徒関係なく後ずさってしまう。
「り、リナ?」
だがそれは姉の根性である。
強引に硬直を解いてリナに笑顔で問いかけた。
口元が若干崩れてる気がしなくもないが、当のリナは気付いていない。
「うん、この前のことで怒ってるかなぁ〜って思ってたけど、そこまで気にしてなかったみたい」
「そ、そうなの」
そう口にするリナの笑みを見ていると癒されそうになるサナだが、
(最近暗くて心配していた分嬉しいけど、素直に喜べないわね)
その原因がジークであると思うと複雑な気分になってしまうのだった。
◇◇◇
「了解したよ師匠。じゃ、今度の休みにでも一度そっちに戻るよ」
試合が始まる数分前────
通信石を通して師匠と対話をしていたジーク。
「それじゃ、また近いうちに」
そうして話がまとまったところで通信を切ったのだった。
「ふうー」
通信を切ると一息をつくジーク。
「さてと」
コキと首を鳴らすと試合区間へと急いだ。
『これより第五試合を始める。各生徒は指定の場所に集まってください』
実行委員からの知らせが耳に入った。
指示に従い、ジークは指定場所に赴いていた。
そしてそこに居たのは──────
「それじゃ、始めましょうか? シル……ジーク」
「ははははっ、何を言い間違えたのかなぁ? ミルルさん?」
深みある笑みを浮かべたミルルの姿をしたソレとの対面に、ジークは毒を含ませた口調で答えるのだった。
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