オリジナルマスター

ルド@

第3話 魔法と剣技。

「なぁジーク、なんでおまえは学園に入ったんだ?」

それはジークが学園に入学してしばらく経ったある日の話である。
入学してから連むことが増えたトオルと共に、外で夜飯を頂こうと店で茶を飲んでる時であった。

「……がくまなぶため?」
「嘘くせー」
「あははは」

───だよなー、と笑いながら茶を飲むジーク。
全然キャラではないのは、短い付き合いのトオルにも分かりきっていた。

「答える気はないか……ふっ」

軽く笑うジークを見てトオルは呆れ顔の笑みで茶を進める。

「そういう君はどうなんだよ」
「君呼ばわりすんな。キモイぞ」
「あっ〜〜、そういうお前はどうなんだ?」

やはりキャラじゃないかなぁ、と思いながらトオルに聞いてみたジークである。

(師匠に言われて、フレンドリー感のあるキャラでいろって言われたんだけど)

ジークとしては自然な口調のつもりであったが、なかなか上手くいかないと内心難し気な心情となる。

と、そんなことを考えていると─────

「オレか? ……オレは」

まともに質問したジークにトオルはふと考えるように明後日の方へ視線を向ける。

「……」
「ん? どうしたよ」
「……いや、……オレは────」

少し間を空け沈黙をすると、トオルはジークに向けて口を開く。



────そして


◇◇◇


「試合────始めっ!」
「いくぞ」
「来なよ」

バッとその場で駆け出すトオルと、前の試合でみせた待ちの構えをとるジーク。
審判の合図と共に動き出したトオルに迎え撃とうとジークが迎撃態勢に入ったのだ。

一年の頃からの語り合った二人が─────今、ぶつかり合う。


「────ミヤモト流……」

最初に攻撃を仕掛けたのは、ジークに迫ってきたトオルである。
彼が持つ二本の刀、その長物の方を抜き出してジークに向かって跳躍。

「『三式・断斬』」

緑色のオーラを刀に纏わせ、上から下へ切り落してきた。 

「魔力解放」

対するジークは手を迫るトオルに向かってかざし、彼を包むようにして魔力を放出して、

魔無ゼロ

ジーク以外は魔力が使えない─────魔力無効エリアを生成した。


その効果によって、トオルが発動した剣技、それに込められた魔力が掻き消えたのだ。


「!? ──っキィエエエエエエ!!!」

しかしトオルは止まらない。
刀に込めた魔力が消えたことに動揺が走ったが、それも一瞬だけであった。 


彼は魔法だけの男ではない。
トオルは剣士であるのだ。


「まあそうなるよなぁ」

だが、それはジークも知っていることだ。
大した動揺など走らせない。

(『部分強化・敏捷性アジリティ』『跳び虎』)

トオルが剣士ならジークは魔法使い。
この魔力無効エリア領域で唯一魔力を使える以上、それをふんだんに利用するのがジークの作戦だ。

「チィっ」
「ハハっ」

迫り来る刀を躱せば、拳で詰めるジーク。
カウンターの拳を躱して、刀で攻めるトオル。

これによって、少しの間であるが、近接での均衡が出来あがった。

「シッ」

刃先を強化された身体を駆使して躱し、顎めがけて肘打ちを狙おうとする。

「ツッ、ア!」

だが、その肘打ちを上体を後ろに倒すことで躱すや、刃先をジークの脳天を射抜くように突き刺そうとするトオル。

「──っ!」

僅かな隙を狙ったトオルの突きの攻撃をジークは、咄嗟に首を僅かに動かすことで躱すと。

「ガッ!」
「なにっ!」

伸びた手を絡め取りそのままトオルに向かって倒れるように逆関節でへし折ろうとする。

「ガアァァアア────!!」
「ぬぅウウウ〜〜〜!!」

そして倒れ込んだ二人。腕の逆関節で折ろうと力を込めるジークに、身体を捻るように動かし抵抗するトオル。

────ミシ……ミシ

「ぬぅ、くッ!」

だが、力で押し切ろうとするジークに押され、絡められている腕が軋み出し苦痛の声を漏らすトオル。

「力勝負じゃこっちが上だ……!」

凄みのある笑みを浮かべ、折ろうとする腕にさらに力を入れるジーク。
対して、トオルは魔法を封じられ、身体強化することが出来ないでいるため、その力に対抗出来ずにいる。

魔法で強化されている以上、スピードもパワーもジークの方が数段上であるのだ。

「そ、そうかッ!?」

しかし、そこは持ち前の技術で補うトオルである。
一気に折れそうになるのを一瞬だけ堪え、空いている手でもう一本の刀────短刀を抜いた。

「っ!」

その瞬間、倒れ込んだままであるジークの喉元を狙った突きが襲いかかる。

(避けるが吉だ)

だがその攻撃もジークには十分対応可能である攻撃である。
絡めて取っていた手を放して、上体を起こしながら身体を起き上がらせようと動く。


「ふっ────っ……!?」


────動けなかった。

「ギィ〜〜っ」

絡めていた手を放そうとしたところを、トオルが刀を持ったまま逆に腕で絡めて脇に固定してみせた。

「チィアッ──!!」

そしてもう片方の手に持つ短刀がジークの喉元に向かって────

脱出だっ・しゅ・つ!!)
「ッ!」

喉元に突き刺さる寸前、落ち着いた状態でジークが回避行動をとった。

体術柔法の一種である。
身体を流すように動かし、ジークは絡められた腕を解きバク転の要領で、素早く後ろへ跳んでみせた。

「ふぅ……」

空中で一回転した後、地に足を着けると一息を吐き、ゆっくり顔を上げるジーク。

「はぁー」

トオルも二本の刀を持ち直して、身体を起こして一息を吐き顔を上げる。

「「……ふっ」」

自然と笑い声が重なる。

「くくくっ、楽しいな」
「ははは、そうだなぁ」

二人とも心底嬉しげに同意し合うと


どちらがともななく、再び構えをとりだした。






……ちなみに


その二人のこれまでの流れを見ていた外野衆は、



「「「「……」」」」


皆、魂が抜け落ちた表情をしてすっかりこの試合に魅入ってしまっていたのだった。


「ホホ」

だがガーデニアンだけは、楽し気に微笑んでいた。


◇◇◇


「流石だな」

賞賛の意を込めて口にするジーク。
力をセーブしているとはいえ、今の流れで倒しきれなかったトオルを見て賞賛を述べたくなったのだ。

「そっちも、やっぱタダもんじゃなかったな。今のは絶対とれたと思ったのによ」
「あはははっ、結構危うかったさ」
「どうだかな」

トオルから言われて、軽く笑い声をあげるジーク。
先ほどまでギリギリの戦闘を繰り広げいたのに、少しも焦りの色を見せない。


そしてそんな彼に対して、トオルは冷たく言い放つ。

「けど全然誤魔化せてねぇぞ実力」
「あ〜」
「どうしたんだ、隠してたんだろ?」


───理由はしらねぇが、と続けて口にするトオル。

トオルもガーデニアンと同じでジークの実力については、なんとなく察していたのだ。
そしてそれを意味は分からないが、隠していたジークの無駄な頑張りを知っているので、今後一体どう学園生活を送るのか気になったトオルなのである。


それに対して 、ジークは微笑を浮かべながら首を振る。

「いやあー、誤魔化すとかそういうのは……今は忘れよっかなーて?」
「なんだそりゃ?」

意味が分からんと言いたげな表情をするトオル。

「まあアレだ。偶には楽しもうかな〜〜て」
「そうなのか?」
「あぁ、とりあえず今は、目の前のことに…………楽しむさ」

微笑を浮かべたままそう口にするジーク。
その表情は普段見せるのほほんとした顔ではなく、さらに時々見せる企んでる嫌らしい笑みでもない。

若者らしく歳相応で、僅かなであるが闘争心のある笑みであったのだ。


「なるほどな……」

それを見たトオルも笑みを。

ジーク以上の満面な笑みを浮かべ、ジークを見据える。



「なら、オレも楽しまねぇとな……。────っ!!」


そう口にすると、トオルは両手に持つ刀に意識を集中する。
握る力を強め、なにか念じるかのように瞳を閉じた。




────すると


「「「「…………!!」」」」


周囲の生徒や教員たちも息を呑み、口を閉ざしてしまう。

一番近くで見ていた審判も血の気が引いたかのように、顔を青白くさせ恐怖のせいか、数歩ほど二人から離れるように後退る。



そんな面々の中、もっとも近くでソレを見ていたジーク─────

「…………へぇ」

しばらく無言となるも、特に変化を見せず薄い笑みを口元に作りあげ、小さく呟いたのだ。






「く、くケェッ」

ドス黒いオーラを発する二本の刀。

「ケッ、ケッ」

そのオーラはトオルを包みのようにして渦を作る。


そしてそんな刀を持つトオルの顔は。


「ヒャハヒャハヒャハヒャハヒャハヒャハハハハハハ!!!!」


さっきほどとは全く異なる、狂気な色が浮かび上がっていたのだ。

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