オリジナルマスター
第6話 魔導杯。
「zzz〜」
自身の教室で、机の上で眠るジークが居た。
一応言っておくが、只今は授業中である。しかもガーデニアンが担当している科目で。
なので当然───。
「な〜〜に朝っぱらから寝とるんじゃ!!」
そんなジークに憤慨するガーデニアン。
「起きんかァ! バカモノォっ!!!」
───ガツンッ!!
「ふがッ」
俯いているジークの頭部にガーデニアンの拳骨が落ちた。その衝撃にジークの机が軋むように教室に鳴り響いた。
「「「「……」」」」
そんな光景に周囲の生徒達は嘲りや苦笑、呆れ顔といったものとなり、ジークの数少ない知り合いであるトオルやミルルは呆れ顔と苦笑顔で我関せずといった風に、拳骨で伏せているジークから視線を逸らしてた。
ただ、当の拳骨を受けたジークは……
「……zzzz(すぴーすぴー)」
「────(ピッカーン!!)」
特に痛みがなかったのかフラフラと顔上がらせたが、暫くすると再び夢の世界に入ったところで、サングラスを光らせたガーデニアンの拳骨が、再びジークの後頭部に振り落ちた。
ガッ────ツン!!
明らかにさっきよりも強めであるガーデニアンの拳骨。心なしか魔力が帯びてるように生徒たちには見えた気がした。
「うっ、ナン……ダ?」
さすがのジークもこればかりは効いたみたいで、ゆっくりとではあるが、うつ伏せていた体を起き上がらせた。
いつもこのような光景を見ているクラスメイト達は「あ〜あぁ、なぜいつも起きないんだ?」と揃って嘆息を上げている。
忘れているかも知れないが、学園ではここ三ヶ月で『最低男』と呼ばれて、学園一の嫌われ者として扱われいる。
ただ三ヶ月ほど前よりも以前は『問題児』や『落ちこぼれ』と呼ばれてきたので、それほどクラスので扱われ方は変わっていないが、しかしそれでも昔の方がまだマシであったのは言うまでない。
最初の頃はジークを嫌う云々があってもさすがに机にヒビが入ったり、歪んだり、叩き割れたりするほどの拳骨を打つけるのはどうか、という意見が何度か当時はあったが。
「ふあぁ〜〜……いったい何ごと? もうお昼?」
「「「「何でピンピンしてんだよ!?」」」」
「あ〜〜? なに? うわぁ……ねむ」
「コラァ──!! また寝ようとするなッ!!」
懲りずに再び夢の世界に旅立とうとするジークに、顔を真っ赤にするほどの怒声を上げるガーデニアン。
それに対して眠そうな表情をしていたジークは、怒声のせいで多少目が覚めたのか、いつものようにのほほんとした笑みを受けべて口を開いた。
「あははははっ、もうハゲ先生いけませんよあんまり叫んじゃ。血圧上がり過ぎて天に昇っちゃいますよ?」
「もう張り裂けそうじゃわッーー!!」
結局いつものように噴火して暴れだそうとするガーデニアンを抑える複数の生徒と、そんなガーデニアンに狙ってなのか、油を注ぎ続けるジークを黙らせるトオルやミルルで、授業の終了の鐘が鳴るまで無駄な争いが続いた。
◇◇◇
「スカルスよ。このままだと夏近くで退学じゃぞ」
呆れた口調でそう宣告するガーデニアン。
授業終了後ジークを自身の研究室に引っ張り出した。面倒そうにジークを置いてある椅子に座らせて話を始めた。
「もともとぬしは一年時からサボり過ぎとる。問題事も数え切れんほどに……くっ」
喋ると同時に頭痛を覚えるガーデニアン。サボり過ぎよりも問題事のほうに頭を悩ませてきた。勿論サボりも良くないが、いちいちやる事がアレなジークに日々頭痛の種が増えてしまっている。
「ははは……、なんかスミマセン」
疲れ切ったグラサンを見て流石に申し訳なく思えてきたので、素直に謝罪を口にするジーク。
原因が自身のサボり癖とやらかしたことだと思うと、複雑な気分になる。やらかした件はともかく、最初からやる気がなく授業をよくサボっていたので、ジークとしてはこのまま退学でも悪くないと思っている節があった。
迷惑をかけ続けるだけなら、潔い退却も視野に入れるべきだと考えていた。
(そもそも入学目的がアレだし。こっちの生活も潮時かもしれないな)
いっそ自ら退学意思を示すか、なんて考え始めたジークであったが……。
そんな彼の心境など知らないガーデニアンは、ここに彼を連れて来た理由を話し出した。
「じゃからワシから案を持ってきた」
なんて言い出す始末。
個人的にすっかり退学意識だったジークは、不意を突かれた気持ちで目を点になった。
「え、案……ですか?」
「コレを見よ」
そう言ってガーデニアンはジークに一枚の紙を渡す。
嫌な予感がして正直受け取りたくないジークであるが、退く気が一切ないガーデニアンの様子を見て、嫌々ながら諦めて何か書かれている覗いて見ると……。
「……コレって、予選表?」
「そうじゃ。もうすぐ行われる『魔導杯』。出場権を取得する為の我が校の予選会だ」
ガーデニアンが不適な笑みを浮かべて、告げた『魔導杯』という単語にジークは眉を歪ませた。……嫌な予感が見事に的中したからだ。
「なんだ知らんのか?」
「いえ、知ってはいますが、まさか俺に出ろなんて言わないですよね?」
「そのつもりだが? ここに書いてあるだろう?」
「……まさか!」
冗談半分で尋ねたが、当たり前のようなガーデニアンの肯定。思わず書かれている無数の参加表を目を凝らして見る。……そして見つけた。
「ちょっと……」
名前の中、その一番端にあるポツリと書いてある自分の名が……本人の意思に関係なくリストに載っていたのだ。
「なんですかこれは」
「ワシが登録しといた」
「はっ!?」
ふふふっと笑みを浮かべて、とんでもないことを口にしたガーデニアンに驚きの声を上げるジーク。
「言っておくが冗談ではないぞ? ワシの権限をフルに使って入れて置いた」
ガーデニアンはなんとしてもジークを学園に留まらせたいと思っている。
あらゆる手を考えた結果、もうすぐ行われるこの大会に目をつけたのである。あわよくば、ついでにこれまでベールに包まれていた彼の真の実力が見られるかもしれない。……多少の時間外労働も悪くなかった。
『魔導杯』とは、年に一回行われる、他校との魔を競う大会である。
毎年各校、一年から三年で選び抜かれた十人の選手を用意して大会に参加しているのだ。十人がそれぞれ一人ずつ各ブロックごとに分かれ他校と試合を行う。そして各ブロックを勝ち越していき最後に残った十人でトーナメントを開き優勝を決める。……このような内容である。簡単に言えば選ばれた者だけが挑めれる年に一度しかない舞台なのだ。
そして、そのことを珍しくも知っていたジークは、己の学園での立場を考えてガーデニアンの発言に正気を疑ってしまった。
「正気ですか? 俺は『落ちこぼれ』ですよ? しかも学園一のアレですし」
「それはテストをサボったり適当に流した結果じゃろ。ぬしの実力はまだ誰の目にも映っておらんわ」
「またそれですか」
うんざりしたかのように嘆息する。以前からガーデニアンから自身の実力についてアレこれ詮索をされてきた。正直無視すれば済む問題だと思っていたので、まさかここにきてその厄介ごとを戻してくるとは……。
(いい加減にしてほしいな。いくら教員でもこれはやり過ぎだろうが)
ガーデニアンを睨みながら吐き捨てたくなるが……。
「ぬしを学園から追い出そうする教師はもう山のようにおる。正直いつ学園から追い出されてもおかしくない。だが学園のためにこの大会でぬしが貢献すれば、他の教師の連中やぬしの退学処分に了承の意思を見してる学園長を黙らすことが可能なんじゃ」
(何にが可能じゃ、だよ!)
ナイスアイデアのように語るが、彼からしたら溜まったものではない。
最近冒険者ジョドの存在が表に出かけている上、サナには疑われ何故かリナから妙に急接近されてる最中なのである。
このタイミングで予選会、さらに大会に出てしまったら……。
(まあ手抜いて負ければいいだけか。そしたら退学はほぼ確定だ。ヘタに勝つと後が面倒だからこれで幕を下ろせる)
残念ながらこれ以上学園に残っても何の得もないとあっさり結論がついた。
苦笑顔で考えがまとまり、その旨をガーデニアンに告げようと口を開いた。
────が、ガーデニアンの次の一言で再び口を摘むんだ。
「おおそうじゃ。ぬしは興味あるか知らんが、今回の『魔導杯』に面白いことに『帝国』の《剛腕》に《冥女》、『妖精国』の《矢弾》、『中立国』の《霜剣》に《雷槍》、そしてここ『聖国』の《天魔》。学生でありながら世に知れ渡っているほどの実力のある者たちが珍しくも、揃って大会に出場するようじゃ」
ガーデニアンがこれらの名を上げたのは、単純にジークにやる気を出させるため、強敵達が出場すると知れば興味が湧く筈だとガーデニアンは予想した。
「は?」
そして、ジークの心境はガーデニアンの予想とは少し違うが、激しく動揺して結果大会に興味を持ち出した。
(今言ったのは本当なのか……?)
今上げられた二つ名の中に気になる名が存在した。
(《冥女》に《雷槍》に《天魔》だと?)
その後、ジークは予選会の辞退を口にするのをやめて、出場の意思をガーデニアンに伝えた。
「最後の学園の思い出にしたいので、是非参加させてください! お願いします!」
「お、おおう、そうなのか?」
「はい。どこまでやれるか分かりませんが、やってみたいと思います!」
「ホホーそれは楽しみじゃ! なんじゃかあっさりし過ぎている気がしなくもないが……」
若干納得がいかない様子のガーデニアン。
だが、やる気を出しているジークを見て何も言えなくなった。
(まあ大丈夫じゃろう。あやつらも参戦する以上、無茶はせん筈だ)
(前言撤回。多少リスクを犯しても魔導杯、入り込んでみるか……)
どこか不安に思うガーデニアンを他所に、久々にやる気を出すジークであるが…………この時、彼は大きな見落としていた。
予選会の表。その欄にある自分の対戦相手の名を見たら、彼も考え直したかもしれない。
思い出したくもない記憶と共に彼は思い止まった筈であった。
─────────
一回戦目
二年 トオル・ミヤモト
二年 ジーク・スカルス
─────────
波乱は徐々に彼の背後に近付いていた。
自身の教室で、机の上で眠るジークが居た。
一応言っておくが、只今は授業中である。しかもガーデニアンが担当している科目で。
なので当然───。
「な〜〜に朝っぱらから寝とるんじゃ!!」
そんなジークに憤慨するガーデニアン。
「起きんかァ! バカモノォっ!!!」
───ガツンッ!!
「ふがッ」
俯いているジークの頭部にガーデニアンの拳骨が落ちた。その衝撃にジークの机が軋むように教室に鳴り響いた。
「「「「……」」」」
そんな光景に周囲の生徒達は嘲りや苦笑、呆れ顔といったものとなり、ジークの数少ない知り合いであるトオルやミルルは呆れ顔と苦笑顔で我関せずといった風に、拳骨で伏せているジークから視線を逸らしてた。
ただ、当の拳骨を受けたジークは……
「……zzzz(すぴーすぴー)」
「────(ピッカーン!!)」
特に痛みがなかったのかフラフラと顔上がらせたが、暫くすると再び夢の世界に入ったところで、サングラスを光らせたガーデニアンの拳骨が、再びジークの後頭部に振り落ちた。
ガッ────ツン!!
明らかにさっきよりも強めであるガーデニアンの拳骨。心なしか魔力が帯びてるように生徒たちには見えた気がした。
「うっ、ナン……ダ?」
さすがのジークもこればかりは効いたみたいで、ゆっくりとではあるが、うつ伏せていた体を起き上がらせた。
いつもこのような光景を見ているクラスメイト達は「あ〜あぁ、なぜいつも起きないんだ?」と揃って嘆息を上げている。
忘れているかも知れないが、学園ではここ三ヶ月で『最低男』と呼ばれて、学園一の嫌われ者として扱われいる。
ただ三ヶ月ほど前よりも以前は『問題児』や『落ちこぼれ』と呼ばれてきたので、それほどクラスので扱われ方は変わっていないが、しかしそれでも昔の方がまだマシであったのは言うまでない。
最初の頃はジークを嫌う云々があってもさすがに机にヒビが入ったり、歪んだり、叩き割れたりするほどの拳骨を打つけるのはどうか、という意見が何度か当時はあったが。
「ふあぁ〜〜……いったい何ごと? もうお昼?」
「「「「何でピンピンしてんだよ!?」」」」
「あ〜〜? なに? うわぁ……ねむ」
「コラァ──!! また寝ようとするなッ!!」
懲りずに再び夢の世界に旅立とうとするジークに、顔を真っ赤にするほどの怒声を上げるガーデニアン。
それに対して眠そうな表情をしていたジークは、怒声のせいで多少目が覚めたのか、いつものようにのほほんとした笑みを受けべて口を開いた。
「あははははっ、もうハゲ先生いけませんよあんまり叫んじゃ。血圧上がり過ぎて天に昇っちゃいますよ?」
「もう張り裂けそうじゃわッーー!!」
結局いつものように噴火して暴れだそうとするガーデニアンを抑える複数の生徒と、そんなガーデニアンに狙ってなのか、油を注ぎ続けるジークを黙らせるトオルやミルルで、授業の終了の鐘が鳴るまで無駄な争いが続いた。
◇◇◇
「スカルスよ。このままだと夏近くで退学じゃぞ」
呆れた口調でそう宣告するガーデニアン。
授業終了後ジークを自身の研究室に引っ張り出した。面倒そうにジークを置いてある椅子に座らせて話を始めた。
「もともとぬしは一年時からサボり過ぎとる。問題事も数え切れんほどに……くっ」
喋ると同時に頭痛を覚えるガーデニアン。サボり過ぎよりも問題事のほうに頭を悩ませてきた。勿論サボりも良くないが、いちいちやる事がアレなジークに日々頭痛の種が増えてしまっている。
「ははは……、なんかスミマセン」
疲れ切ったグラサンを見て流石に申し訳なく思えてきたので、素直に謝罪を口にするジーク。
原因が自身のサボり癖とやらかしたことだと思うと、複雑な気分になる。やらかした件はともかく、最初からやる気がなく授業をよくサボっていたので、ジークとしてはこのまま退学でも悪くないと思っている節があった。
迷惑をかけ続けるだけなら、潔い退却も視野に入れるべきだと考えていた。
(そもそも入学目的がアレだし。こっちの生活も潮時かもしれないな)
いっそ自ら退学意思を示すか、なんて考え始めたジークであったが……。
そんな彼の心境など知らないガーデニアンは、ここに彼を連れて来た理由を話し出した。
「じゃからワシから案を持ってきた」
なんて言い出す始末。
個人的にすっかり退学意識だったジークは、不意を突かれた気持ちで目を点になった。
「え、案……ですか?」
「コレを見よ」
そう言ってガーデニアンはジークに一枚の紙を渡す。
嫌な予感がして正直受け取りたくないジークであるが、退く気が一切ないガーデニアンの様子を見て、嫌々ながら諦めて何か書かれている覗いて見ると……。
「……コレって、予選表?」
「そうじゃ。もうすぐ行われる『魔導杯』。出場権を取得する為の我が校の予選会だ」
ガーデニアンが不適な笑みを浮かべて、告げた『魔導杯』という単語にジークは眉を歪ませた。……嫌な予感が見事に的中したからだ。
「なんだ知らんのか?」
「いえ、知ってはいますが、まさか俺に出ろなんて言わないですよね?」
「そのつもりだが? ここに書いてあるだろう?」
「……まさか!」
冗談半分で尋ねたが、当たり前のようなガーデニアンの肯定。思わず書かれている無数の参加表を目を凝らして見る。……そして見つけた。
「ちょっと……」
名前の中、その一番端にあるポツリと書いてある自分の名が……本人の意思に関係なくリストに載っていたのだ。
「なんですかこれは」
「ワシが登録しといた」
「はっ!?」
ふふふっと笑みを浮かべて、とんでもないことを口にしたガーデニアンに驚きの声を上げるジーク。
「言っておくが冗談ではないぞ? ワシの権限をフルに使って入れて置いた」
ガーデニアンはなんとしてもジークを学園に留まらせたいと思っている。
あらゆる手を考えた結果、もうすぐ行われるこの大会に目をつけたのである。あわよくば、ついでにこれまでベールに包まれていた彼の真の実力が見られるかもしれない。……多少の時間外労働も悪くなかった。
『魔導杯』とは、年に一回行われる、他校との魔を競う大会である。
毎年各校、一年から三年で選び抜かれた十人の選手を用意して大会に参加しているのだ。十人がそれぞれ一人ずつ各ブロックごとに分かれ他校と試合を行う。そして各ブロックを勝ち越していき最後に残った十人でトーナメントを開き優勝を決める。……このような内容である。簡単に言えば選ばれた者だけが挑めれる年に一度しかない舞台なのだ。
そして、そのことを珍しくも知っていたジークは、己の学園での立場を考えてガーデニアンの発言に正気を疑ってしまった。
「正気ですか? 俺は『落ちこぼれ』ですよ? しかも学園一のアレですし」
「それはテストをサボったり適当に流した結果じゃろ。ぬしの実力はまだ誰の目にも映っておらんわ」
「またそれですか」
うんざりしたかのように嘆息する。以前からガーデニアンから自身の実力についてアレこれ詮索をされてきた。正直無視すれば済む問題だと思っていたので、まさかここにきてその厄介ごとを戻してくるとは……。
(いい加減にしてほしいな。いくら教員でもこれはやり過ぎだろうが)
ガーデニアンを睨みながら吐き捨てたくなるが……。
「ぬしを学園から追い出そうする教師はもう山のようにおる。正直いつ学園から追い出されてもおかしくない。だが学園のためにこの大会でぬしが貢献すれば、他の教師の連中やぬしの退学処分に了承の意思を見してる学園長を黙らすことが可能なんじゃ」
(何にが可能じゃ、だよ!)
ナイスアイデアのように語るが、彼からしたら溜まったものではない。
最近冒険者ジョドの存在が表に出かけている上、サナには疑われ何故かリナから妙に急接近されてる最中なのである。
このタイミングで予選会、さらに大会に出てしまったら……。
(まあ手抜いて負ければいいだけか。そしたら退学はほぼ確定だ。ヘタに勝つと後が面倒だからこれで幕を下ろせる)
残念ながらこれ以上学園に残っても何の得もないとあっさり結論がついた。
苦笑顔で考えがまとまり、その旨をガーデニアンに告げようと口を開いた。
────が、ガーデニアンの次の一言で再び口を摘むんだ。
「おおそうじゃ。ぬしは興味あるか知らんが、今回の『魔導杯』に面白いことに『帝国』の《剛腕》に《冥女》、『妖精国』の《矢弾》、『中立国』の《霜剣》に《雷槍》、そしてここ『聖国』の《天魔》。学生でありながら世に知れ渡っているほどの実力のある者たちが珍しくも、揃って大会に出場するようじゃ」
ガーデニアンがこれらの名を上げたのは、単純にジークにやる気を出させるため、強敵達が出場すると知れば興味が湧く筈だとガーデニアンは予想した。
「は?」
そして、ジークの心境はガーデニアンの予想とは少し違うが、激しく動揺して結果大会に興味を持ち出した。
(今言ったのは本当なのか……?)
今上げられた二つ名の中に気になる名が存在した。
(《冥女》に《雷槍》に《天魔》だと?)
その後、ジークは予選会の辞退を口にするのをやめて、出場の意思をガーデニアンに伝えた。
「最後の学園の思い出にしたいので、是非参加させてください! お願いします!」
「お、おおう、そうなのか?」
「はい。どこまでやれるか分かりませんが、やってみたいと思います!」
「ホホーそれは楽しみじゃ! なんじゃかあっさりし過ぎている気がしなくもないが……」
若干納得がいかない様子のガーデニアン。
だが、やる気を出しているジークを見て何も言えなくなった。
(まあ大丈夫じゃろう。あやつらも参戦する以上、無茶はせん筈だ)
(前言撤回。多少リスクを犯しても魔導杯、入り込んでみるか……)
どこか不安に思うガーデニアンを他所に、久々にやる気を出すジークであるが…………この時、彼は大きな見落としていた。
予選会の表。その欄にある自分の対戦相手の名を見たら、彼も考え直したかもしれない。
思い出したくもない記憶と共に彼は思い止まった筈であった。
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