元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。

ルド@

侵略兵器と能力者&魔法使い その3。

『――ッ!』

「何故? 本気で来ない」

 大地と同じように侍の姿となった龍崎は獣型の機械兵を相手にしている。
 相手は敏捷性の高い速さを活かしたタイプ。それに合わせて龍崎も速さを増していく。機械兵が瓦礫の方へ行かないよう何度も周り込んで両手の刀で阻んでいた。

「何が狙いだ? お前たちはこの世界を襲って来たんじゃないのか?」

 ギリギリ接戦な大地や麻衣と違い手抜きをしているのはハッキリと感じ取っていた。ただ走ってレーザーを撃っているだけ、搭載されている能力や他の兵器を全然使用してこなかった。

「試してみるか」

 再度周り込んで機械兵へ迫って行く。右手の刃から褐色の土属性のオーラが纏い左手の刃から赤い火属性のオーラが纏う。

『ッ!』

「……っ」

 機械兵の背中の発射口から棘ボール状のミサイルが発射される。触れた瞬間爆発する地雷効果も加わっている。

「ミヤモト流……」

 数え切れない大量の爆発球が龍崎の前に立ち塞がるが、彼は瞬きと共に――消えた・・・

『二式・岩衝斬』
『五式・火閃』

 土属性の剣撃の一振りが立ち塞がる爆発球の山を吹き飛ばす。衝撃で逸れた球が一斉に爆発するが、道が出来たところで火属性の一閃を飛ぶ斬撃として放った。




 ――ドンッ!

「ん、なんだ!」

「きゃっ!?」

「――麻衣!」

 地上に落ちたのは麻衣だ。結構重い衝撃音であったが、変身してたお陰で致命傷ではないようだ。やはり魔法専門な麻衣じゃ魔法耐性が強いマシン相手は厳しいか。

『ッ!』

「何っ!」

 しかし、飛行タイプの機械兵は麻衣を逃さないみたいだ。上空から一気に飛来して口先から極太のレーザーを放とうとしていた。――ヤバい!

「麻衣ッ! ッ――邪魔だ!」

『ッ!』

 フォローに駆けようとしたが、ゴリラが壁になって来る!
 咄嗟に隙間を縫うように【瞬速レベルⅣ】で駆け抜けるが、鳥野郎はもう攻撃寸前っ。

「チッ」

 腰に差していた火縄銃型の魔法銃を抜いた。片手であるが、瞬時に狙いを定めて撃つ。
 一度に四発ずつしか撃てないが、どうにか鳥の軌道を逸らすことに成功した。再チャージには十秒ッ!

「ぐっ!」

 僅かな隙を背後のゴリラが襲ってきた。頭部へ一撃でフラついてさらに背中にも重い一撃くらう。そのまま前のめりに倒れてしまった。

「――先輩っ! 後ろ!」

「ッ!?」

 なんとか振り返る俺の視界にデカい拳を振り上げたゴリラが見える。今度は燃えている拳、まともに受けたらただでは済まないが……!

「た、助かった」

「やはりこのままじゃ厳しいか」

 瞬時にカバーしてくれた龍崎のお陰で助かった。左右の刀をクロスしてゴリラの力任せな一撃を防いだ。あの一撃に耐えた本人もヒビすら入らない刀にもビックリしたが、背後に回っていた上空の鳥と獣の視線を感じて、慌ててそちらへ振り返った。

「……『戦神バトルマスター』、やっぱり使ったらダメか?」

「危険過ぎる。アレを使うと君の中にある魔王の因子が反応する。敵は魔神が生み出した機械兵だ。どう影響を及ぼすか考えたくもない」

 龍崎から念押しで注意されていたが、やはり使えないか。俺の中にある魔王の因子とやらは元は魔神の一部。それが戦神の力を増す『戦神バトルマスター』とは相性が悪過ぎて剥き出しになって俺の体を侵食しようとする。……ぜひとも取り除いて欲しいが、俺の力も丸ごとだと流石に抵抗がある!

「そのモード以外はどうだ? 他にも色々とあるんだろ?」

「基本職じゃアレにはどうあっても勝てない。融合の特殊職の『忍者』じゃスピードはあっても火力が足りない。『銃撃戦体』は火力があってもスピードが壊滅的だから論外!」

「あの鈍そうなゴリラならイケるんじゃないか?」

「だったら『侍』で手こずらないから。なんか足裏とかにブースターが付いてるんだぞ! あのゴリラマシン!」

 もうゴリラじゃないだろう! 半分以上どころか九割がおかしな武装で成り立ってる!
 他の二体も似たようなものだから龍崎以外はもう対応仕切れなくなってた。

「くそ、どうしたr――あ」

 いっそ火力押しの『銃撃戦体』に切り替えるかと脳裏に浮かんだ、その時だ。

「あれは……」

 器用に3体を警戒しながら龍崎も気付いた。遅れて麻衣も空を見上げる。戦闘中で気付くのに遅れていたが、真上の空がまた悲鳴を上げている。

「まさかまた敵が……もうギリギリ負けてる時に!」

「先輩!」

「落ち着け2人とも。……どうやら少し違うな」

 絶望的な状況を想像して頭が真っ白になりかけたが、冷静な龍崎の声にハッとする。何か感じ取っているのか龍崎は思案顔で頷くと、こちらへ微笑を向けた。

「増援だ。オレたちのな」

 ――ガッシャァァァァァーーン!
 またガラスが割れたような音が地上まで響き渡る。思わず耳を塞ぐ者もいるが、俺たちは唖然として立ち尽くす。幸いなことに3体の機械兵も異常を感じて上を見ながら止まっていたが、隕石のように降って来たその人が抱えているモノを捉えた瞬間。


「よ? 待ったか?」

『『『――ッ!?』』』


 俺たちでも分かる。ハッキリとした驚愕の反応を示した。
 いや、土煙の中から出て来たその人の登場には俺も大変驚いているが、その前に訊きたい。


『零さん、その背中に背負っている頭みたいなモノは・・・・・・・・……何ですか?』――と。


「さぁ、ガラクタども……お仕置きの時間タイムだ。覚悟はいいか?」

 死神――泉零。
 異世界での俺の恩人であり、戦いの師であり、頼りになる異能使い。
 まるで狙っていたかのような登場に龍崎から呆れたようで少し怒った声が飛んだ。

「遅いですッ! いったい何処まで飛ばされてたんですか!」

「悪い悪い。けど知らないのか?」

「何がですか?」

 少し申し訳なさそうに謝罪して、足元にマンモスのようなボロボロの頭部を落とす。
 凝り固まった肩を静かに鳴らすと、その手にはいつ間にか異能で出来た『黒き槍』が握られていた。


「ヒーローは――遅れてやって来るものなんだぞ?」


 冷たい笑みが寧ろダークヒーローに見えるのは俺だけじゃないと思いたい。 恩人で尊敬もしているから絶対に言わないが、ダークヒーロー的な零さん。この状況でもの凄い頼りになるのは明らかであった。

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