元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。

ルド@

侵略兵器と能力者&魔法使い その2。

「三機? 四機の筈だが、あと一機はどうした?」

 その者の視線の先で今まさに始まろうとしている三対三の頂上決戦。
 前哨戦でしかない学生やプロ能力者たちを一掃した時から見ていたが、やはりレベルが違い過ぎる。つい興奮のあまり叫びそうになるが、流石に目立ってしまうので控えている。

「まぁいい。最終的にどちらかさえ取り込めば残りも時間の問題。私が作り上げた魔王の復活も近いな」

 ニヤリと浮かべるのは不敵な笑み。既に一体やられているが、その余裕が崩れる気配はない。手元の残りのカードを見ながらこれから起こるであろう惨劇を楽しそうに待っていた。

「前のデータでハッキリしてる。あの魔導王の力を宿してる小森麻衣は魔力が消耗すればするほど因子を刺激させる傾向がある。……ならヘタにスキルを封じずどんどん使わせた方が面白いものが見られそうだな」

 寧ろ同じ数の方が激戦になって良いデータが取れそうだと、未だ来ない機械兵のことなどすぐ頭の隅へ弾き出されていた。




 仕掛けてくるレイダーと呼ばれる三機。
 飛行タイプの一体は上空へ行き、残りの二体は迫って来る。まだ試合エリアだが、そのまま進めば確実に生き埋めになってる者たちを踏み潰すことになる。


 その前に止める。俺たちは目配せして能力全開で解放した。


「【アバター・チェンジ】ッ! 来れ――『破壊と再生を統べる刹那の紅鳥……不死鳥の貴婦人フェニックス・レディ』!」


 発動すると麻衣の姿も変わる。
 少し短く薄紅いポニテ、元とそれほど変わらない幼い顔立ち、やや露出度が多い紅い巫女のような格好、その両腕の袖には燃えるような翼が生えており、まるで火の鳥の巫女のような姿である。両手には金色と氷のような水色の杖が握られており、左右から炎と氷の魔力が溢れ出ていた。


「『戦士ウォリアー』、『剣士ソード』……! ――融合せよ! 戦場を生きる戦士たちの絆よ! 立ち塞がる敵を斬り伏せ! ――『ジ・ソルジャー』!」


 融合によって俺の格好も変わる。
 呼び出した通りのやや黒い侍の格好、白い羽織を着ており何処か品格がありそうな武士の姿をしている。腰刀が1本と火縄銃の形をした魔法銃が装着されていた。


「『擬似・究極原初魔法フェイク・ウルティムス・オリジン』――起動。『黙示録の記した書庫アポカリプス・アーカイブ』――【コード:剣導修羅】……発動!」


 驚いたことに龍崎の姿も侍だった。羽織はなく青い若侍に見えるが、雰囲気が剣豪のように覇気を放っている。腰には2本の刀、背中に大きくて長いのが1本を差してあった。


 全員が完全な戦闘体勢。
 既に各自標的を目視して変身した瞬間に動き出していた。

「鉄鳥は私が!」

「なら俺はゴリラをやる!」

「速そうなワンコは任せろ!」

 追い掛けようと飛んだ麻衣以外の俺と龍崎は大量の瓦礫を飛び越える。駆けようとした敵へ逆に飛びかかった。

『『ッ!』』

「それ以上!」

「踏み荒らすな!」

 俺と龍崎は一刀と二刀でゴリラとビーストを抑える。ゴリラみたいな見た目通りすぐパワーで押し戻されそうになったが、こちらも馬鹿正直に力勝負するつもりはない。

「【瞬速レベルⅢ】【殺陣の業】」

 速度アップと躱しスキルを合わせ技でゴリラの裏拳をギリギリで躱す。
 そのまま相手の懐に入ると両手で握りしめた刀を下から……

「【鉄斬りレベルⅣ】ッ! 【一刀両断レベルⅣ】ッ!」

 ――鋭く振り上げた。刃に纏った魔力の刃が軌跡を生み出す。真っ二つにする勢いで斬り裂いた。……ように見えたが、胴体部……膨らんでいる腹の辺りがパクリと斬れている程度だ。

『ッ!』

「浅いか! 【斬撃波レベルⅣ】ッ!」

 振り下ろして来た拳に向かって今度は斬撃の衝撃波を放つ。
 衝撃で空気が揺れる。体に異常なほどの重力が掛かるが、すかさず【瞬速レベルⅣ】を発動して跳躍力を加算させる。結局パワー勝負のような構図になってしまったが、どうにか拳の振り降ろし軌道を逸らして、【鉄斬りレベルⅣ】と【一刀両断レベルⅣ】の合わせ技の上段斬りを叩き込んだ。





『ッ!』

「逃しませんよぉー!」

 空中戦を繰り広げている麻衣と飛行型の機械兵。
 人を巻き込まない分始めは楽かと思えたが、敵の兵器にそんな配慮など全くないと思い知った。

「【炎球】【氷球】! もう手当たり次第に攻撃するなぁ! 倒れている人に当たったらどうするんですか!」

 飛行タイプは口や翼などに付いているレーザー砲からバンバン撃ってくる。飛行速度はほぼ同じくらい機動力は麻衣の少し有利なので躱すことも難しくないが、うっかり地上に落ちそうになるレーザーガンを見て青ざめた。

「撃ち消す方が難しい! さっさと地上に落とすか倒さないと面倒になる!」

 魔力吸収や魔力耐性さらにスキル封印を警戒して踏み込み切れていない。何度か危ういところがあったが、何故かスキル封じが来ない。ほっとしそうになるが、かえって不気味に感じてここまでズルズル引きずっていた。

 だが、それも我慢の限界であった。

「【マナ・バースト】ッ!」

 もうなりふり構っていられない。魔力をブーストさせて杖の炎と氷のオーラが急激に膨れ上がった。

「っ……ここッ!」

『――ッ!』

 推進力を活かして飛び回っている機械兵の上へ回り込んだ。
 機械兵もクルリと上下を反転させて口先を麻衣へ。一気に集束させた光の球を放つが……



「合成魔法――【サファイア・テンペスト】」


【炎帝】と【氷王】、相反する炎と氷の属性魔力が合体。
 光輝く青き炎が竜巻のように生まれて光の球に激突した。   

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