【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

13.旦那様(ニセ)、鈍感嫁(ニセ)にプロポーズ大作戦です!・その5

 
「ようやく、捕まえたぞ。二十年ほどかかってここまで来たのだ。お前を追いかけるのはもう終わりにしたい」

「一矢・・・・」

「伊織、私はもう、お前を離すつもりはないぞ。これからはずっと私の専用だ。私の、本当の家族になって欲しい」

「うん。なるわ。だって――」


 私の夢は、グリーンバンブーで一人前の料理人になる事と、一矢のお嫁さんだから、って伝えたら、旦那様は顔中くしゃくしゃにして喜んでくれたの。

 ぎゅっと抱きしめられた重なった肌から、温かい熱が伝わる。

 もう一度、もう一度、と、何度も繰り返してキスをする。

「生意気な伊織もいいが、こんなに私が好きだと言って頬を染める伊織もいいな」

「ばかっ」

「お前は、どんなことをしていても可愛い。私が、初めて好きになった女だ。可愛くない訳が無い」

「何時も不細工ってバカにしてた癖に・・・・」

「好きな女性は苛めたくなるというのが、男の性らしいぞ。中松情報だ」


 あぁー・・・・それなんか、納得。


「でも、好きな男に不細工とか言われたら傷つくし!」

「そうだな、悪かった。だから初めて風呂場で水着姿を見た時は、素直に褒めたであろう。お前の可愛い水着姿、しかと堪能させて貰ったしな」

「眼鏡無いのに見えたの?」

「これだから伊織は」ふっと優しく笑われた。「眼鏡だけとは限らんだろう。プールに入る時、目の悪い者は裸眼で入るのか?」

 あっ。コンタクト・・・・。だからあんなに見えている風に褒めたのね!

「じゃあ、ずっとコンタクトして・・・・?」

「そうだ。見えてないと思っていただろう」

「ばかっ! ちゃんと言ってくれなきゃ!! 見えてないと思っていたのにっ!」

 見えていないと思っていた一矢に隅々まで見られていたのだと思ったら、急に恥ずかしくなった。

「伊織のそういう素直な所」ぽん、と頭を撫でられた。「昔から好きだぞ」

「んーっ、ばかっ!」

「私にばかと面と向かって言えるのは、お前くらいのものだぞ」

「そうだね」


 二人で見つめ合って笑った。見つめ合うと、しん、と沈黙になる。だからわざと何時もの雰囲気に持って行ったのに、もう終わってしまった。

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