【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
12.旦那様(ニセ)が、嫁(ニセ)の為に愛の大告白(ニセ)をしちゃいます!・その3
「ご相伴に預かりました、緑竹伊織と申します。小さな洋食屋を両親と共に経営しております。わたくしの家柄は全く一矢さんとは釣り合いません。しかし、彼を誰よりも理解し、支えられるのはわたくしだけだと自負してございます。一矢さんの今後の活躍を、精いっぱい支えて参る所存でございます。どうか、温かくお見守り下さいませ」
ほんの少しの短い言葉を話すだけで、汗が噴き出た。グリーンバンブーで流す汗とは大違いだ。
よく言ってくれた、と優しい眼差しを向けてくれた一矢に、ぐっと腰を抱かれた。
ピッタリと寄り添い、仲睦まじい本物の夫婦のように皆様の目には映るだろう。でも、中身はニセ物なのに。話している内容は本当にあったことだから事実だけど、本心は――縁談を上手く断る為の、ニセ物。
「さて、ご承知の通り、私は本家と犬猿の中で御座います。といいますのも、義理の姉たちが執拗に私を虐め、筆舌に尽くしがたいほど、散々な目に遭わされて参りました。それを救い、唯一助けてくれたのが、伊織です。彼女と彼女の両親だけが、私の支えになってくれました。私を何時も励まし、勇気づけ、支えてくれた伊織を、心の底から愛しております」
真剣な目で私を見つめ、更に前を向いて物怖じすることなく言ってのけた!
ふわぁあー。旦那様、カッコイイー!(ニセだけど!)
なんでこれ、ニセなんだろうー。今言われている言葉も、真っ赤な嘘って事よね。
はああー。悲しくなってきたーぁ!
「しかし義姉たちは、大事な伊織に危害を加え、この披露パーティーを台無しにする計画を立てておりました。今回は未然に防げたものの、いつまたわたくしや会社――並びに皆様の会社業務の妨害になるや解りません。そのため、ある秘密を公表する事に致しました」
その時、私は見た。鬼の形相の中松が、柚香さん――もうひとりの一矢のお義姉さま――を大人しくさせる為、素早く動いて口元を押さえつけている事を!
前から、後ろの様子がよーく見えますわよおおおー。
そして私に危害が及ばないように見張りの為に、真後ろに黒子の如く立っている人物――中松だと思っていたのに、いつの間にか美緒に入れ替わっていたのだ。
何という早業。入れ替わりの術を使ったのね!
もうこれ、忍者だ。忍者松! 隠密忍者松だ!!(ながっ)
「三成柚香、並びに杏香は、我が父三成泰平(みつなりたいへい)とは、血縁関係にあらず!」
スーツの胸ポケットから取り出したDNA鑑定結果書を開け、一矢が高らかに掲げた。
ええっ!? うそーっ!
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