【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

10.ニセ嫁、披露パーティーで何やらひと悶着ありそうな予感がいたします。・その3

 パーティーの開場は午後六時からで、一矢からの挨拶、新郎新婦お披露目でいよいよニセ嫁の出番、紹介に預かってご挨拶、乾杯音頭の後に歓談と食事を召し上がって頂いて、締めの挨拶。という流れとなっていた。

 現在、午後五時。結構早くから準備していたので、余裕があった。

 今日の会場はウェスティンホテルという、日本屈指の大企業がアメリカ大手のホテルと合同経営を掲げ、人気を博しているホテルだ。料理だけでなくスイーツバイキングも好評で、今回は商談も兼ねるだろうから、立食パーティースタイルにした。会場は眺望抜群のフロアに決めた。収容人数が一番多く、ワンフロアがその会場となっていて、着席の段階で百五十人くらいは収容できるらしい。立食スタイルだから、二百人は呼べると聞いた。
 何人くらい招待しているのか、私は解らなかった。招待状を持っていないと今日この会場には入れない。身内も然り、だ。


 とりあえず今日は取引先やその他、一矢を懇意にしている方々へのお披露目らしい。お披露目というより、むしろ虫よけ的な扱いだと思う。令嬢は三条家の花蓮様みたいにご自身が一矢を好きであったりとか、ご両親の思惑で娘をあてがおうとしている方が、非常に多いだろう。

 一矢の会社が軌道に乗り出してから、特に増えたと聞いている。

 三成家との繋がりや、人気のある一矢自身と関係を持ちたいからだろう。一矢が好きならまだしも、一矢の持つ地位や財産目当ての見合いは、彼自身がうんざりしているのは知っていた。本当に大変だと思う。だからニセ嫁に仕立て上げた私を使って、それをけん制したかったのだろう。お金持ちというのは、色々大変だ。
 そんな一矢に挨拶するべく、フロアに無いにあるラウンジに何人か集まっているらしいと聞いた。一矢は既にそちらの方に向かって来客の対応をしているらしい。私も顔を出しておいた方がいいと思って、中松と美緒に断ってそちらへ行くことにした。

 マスコミの方も来るとか。本当に緊張する。見てくれは令嬢っぽくなったけれど、喋ればすぐニセってバレそうだ――と、そんな風に思いながらラウンジへ向かおうと思って歩き出した私に、ごきげんよう、伊織様、と声を掛けられた。花蓮様だった。
 身構えていると、向こうから頭を下げて謝罪された。「先日は失礼を致しました。本当に申し訳ありません、伊織様。無礼を致しました事、お詫び致します」

「もういいのよ。伊織様の言う事は本当の事ですわ。一矢に相応しくないと思っているのは、皆様以上にこのわたくし。誰にも負けないのは、彼を大切に想う気持ちしかございません。お気持ちはお察し致します。どうか、あの時の事はお気になさらないで。もう済んだことではありませんか」

 きちんとした令嬢として、話ができているかしら。鬼に叩き込まれた言葉遣い、間違っていないか心配だ。

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