【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
7.旦那様(ニセ)とのなれそめを思い出す嫁(ニセ)。・その3
「念のためだ。キスもまだというお前の事だから、何時、悪い男に騙されるか解らないだろう。ひょっとすると、という事もあり得るかもしれない。だから本当はきちんと書面にしておきたいくらいなのだ」
えっ。キスはまだって・・・・昨夜、旦那様(ニセ)に奪われてしまったのですけど?
お陰でもう経験しちゃったのよっ。寝たふりしている隙に!
あんな風に知らない間に経験しちゃうなんて、どーいうつもりなのか、今すぐ文句言ってやりたいわよおぉ――!
それ、今聞いてもいいのかしら。何でキスしたの、って!
まあ、ちょっと言いにくい雰囲気だから、折見てどういうつもりだったか聞こう。
勝手に奪っておきながら、平然としている旦那(ニセ)様、これ、どうよ?
普通キスしてもいいかって、断るよね?
お前のものは俺のもの、的な感じ?
それとも、マーキングのつもりなのかしら・・・・ああー、わかんない!
「書面なんか書かなくても大丈夫よ。ちゃんとニセ嫁期間中は、一矢のものでいるから。貴方を裏切ったりしないわ」
「約束だぞ」
「しつこい」
「絶対だからな!」
「解ったから。ほら、指切り」
小指を立てて一矢の前に差し出した。一矢は少し照れたような、複雑な表情を見せ、私に綺麗な小指を絡めてくれた。
きちんと洗い流す前だったから、一矢の手には私を洗ってくれた時の泡が付いていて、ちょっとぬるぬるして滑ったけれど、指切りで約束を交わした。
ふふ。一矢ったら、可愛い所があるのね。
「じゃあ、次は私の番よ。交代しましょう」
背中を洗い流して貰って、今度は私が一矢の綺麗な背中を洗った。
さっき約束を交わし、絡めた小指がくすぐったい。
また、新しく一矢と契約をしたみたいだ。
契約でも嬉しいなんて、バカみたいだけどね。
それでも、一矢が私と約束をしてくれて、嬉しかった。
だから私は、ちゃんとこの約束を守りたかった。
固く守るつもりでいたのに。
けれど、これから訪れる時間の中で、
まさか私の方が約束を守れなくなってしまうなんて、
この時は知る由もない――
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