【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
6.旦那様(ニセ)に忠実な執事が、実はとんでもない羊被りだった件。・その7
「ぜ――――っっっっっったいに着ないから!」
「絶対に着ないとは何事だ! 一体誰の為にこんなに沢山の水着を買ってやったと思っているのだ! しかも自分で選んでいたものではないかっ!!」
「選んでないし!」
「伊織が手に取っていたではないか!」
「だからあれは、選んでたんじゃなくてたまたま手に取って見ていただけ!」
「だったら何故もっと早く言わないのだ!」
「言ったでしょーがああああっ! 私の話も聞かずに勝手に盛り上がって買ったのは、一矢の方でしょおおおお――――っ!!」
「私は何も聞いていない!」
「言った!」
「聞いていない!」
「言ったって!!」
「聞いていないと言っている!」
「この、わからずや!」
「それはお前の方だ!」
はい。すいませーん。このやり合いじゃ、何の事で怒って喧嘩しているのか解らない人の為に説明しまーす。
今日の夕方頃、例の百貨店でバカみたいに大量購入した水着が届いたのね。
そんでそれを、お風呂に入る時に着用せざるを得なくなったんだけど、露出がなるべく少ないものを選ぼうとしている私の傍にやってきた一矢が嬉しそうに「お前の選んだものが早速見たい、今日はこれにしてくれ」と、あの露出狂が着るような真っ赤なドエロ水着を渡してきたのよおおおお!
隠すところどこよ!?
そんなドエロ水着、貧相な私が着れるワケないでしょーがああああ!!
それを、断固拒否しているところっ。
「一体何の騒ぎですか」
バスルームでぎゃあぎゃあ騒いでいる私達の声を聞きつけた鬼が飛んできた。
この鬼は絶対に一矢に服従しているし、絶対に私の味方なんかしてくれない。
来なくていいのにっ。
「一矢がこれを着ろって、しつこく言うから断っているの!」
ドエロ水着を広げて見せると、流石の中松も絶句してしまった。
憤慨している一矢に、中松が何やら耳打ちした。見ると、怒っていた一矢の顔が少し青ざめ、それは良くない、と呟いた。
鬼! 一体一矢に何を吹き込んでいるのよっ!!
「伊織」一矢が私に向き直ったので、戦闘態勢で迎えた。「その水着はまた今度にしよう。然るべき時まで、私が大切に預かっておく。貸せ」
パッ、と一矢に持っていたドエロ水着を取られてしまった。
えっ。何? それ、着なくていいの?
もしかして助かったの!?
ていうか、然るべき時って何よ?
一難去ってまた一難がそのうち来る、という事かしら。
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