【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

6.旦那様(ニセ)に忠実な執事が、実はとんでもない羊被りだった件。・その5

 パテを丸めて仕上げてしまい、後は焼くだけにした。グリルを使って焼くけれど、生から焼くと火が通るのに物凄く時間がかかるから、今回は時短なので先にフライパンでしっかり裏表を焼き、熱したグリルにバンズとパテを一緒に入れて仕掛けた。
 その間に手作りのポテトチップスを揚げた。ハンバーガーなら本当はポテトフライを作りたいのだけれど、冷凍のポテトフライなんかこの家に置いてないから、生のジャガイモを薄くスライスして、素揚げした。カロリー気にしなかったら、バターと塩をまぶしたり、メイプルシロップ絡めたり、バター醬油で味付けても美味しいのよ。

 バンズは早めに取り出さなきゃ焦げてしまう事を伝え、タイマーを一分と四分に合わせた。

 一矢が玉ねぎを切る騒動の最中、さっき洗っておいた無農薬野菜をお皿に盛り付け、一分後のタイマーでバンズを取り出し、四分後のタイマーでパテを取り出した。
 中松に頼んで、並べていたチーズやらハム、野菜と共にテーブルへ並べて置いてもらった。

「沢山できたね」

「ああ。食べるのが楽しみだ」

 簡単な照り焼きソースを作っておいたので、それを一緒に何時もの広いテーブルに持って行って並べた。

「中松も一緒に食べましょうよ。今日は一矢が初めて料理を作ってくれたのよ。貴方も食べて?」

「あ、いえ、俺は・・・・」

 中松が遠慮しているところへ、一矢が追い打ちをかけた。

「そうだ、中松! 私の初めての料理なのだ。きっと美味いぞ! 是非、お前にも食べて貰いたい!」

 張り切る一矢に困ったような表情を一瞬見せた中松だったが、何かを思ったらしく、しっかりと一矢を見つめ返した。

「はっ、一矢様。有難き幸せ。それでは、お言葉に甘えさせていただき、一緒に食事を摂らせていただきます」

 嬉しそうに笑顔を見せる一矢に、深々と頭を下げる中松。一矢は本当に中松が好きなのね。私と私の家族以外で一矢がそういう顔を見せるのは、思い知る限り彼だけだ。私の作ったお弁当も二人分買っていくし、とても中松を大切にしている。



 中松の事を考えていると、彼と初めて会った日の事を思い出した。



 そう。あれは、寒い冬だった。その時の中松の顔には、殴られたのか酷いあざや切り傷があって、泥や雪で汚れてボロボロになった服を着て、三成家の門外の塀に寄り掛かるようにしていた。息も絶え絶えの状態の中松を見つけた私は、一矢と手を取り合って、恐る恐る声を掛けた。



 生きていますか、と。


 

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