【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

5.旦那様(ニセ)は、嫁(ニセ)の水着を選ぶのにVIPルームを利用致します。・その7

 鬼松の運転するリムジンに乗って帰路を走っていると、一矢が話しかけてくれた。

「伊織、そろそろ腹が減っただろう。昼食は何が食べたい?」

「あー、久々にマックが食べたい! グリーンバンブーがあったらなかなか行けなくて。さっき看板が見えたから」

「マック?」

 一矢が首を傾げた。
 マクドナルドの略が『マック』って・・・・知らないんだ・・・・。

「テレビのCMなんかで見た事ない?」

「俗なテレビは見ない」

「普段何してるの?」

「そうだな・・・・休みの日は読書が多い。様々な文献やらビジネス書を読むのだ。普段の日は目を通す事が出来ないからな。まずはお前の店に行って弁当を受け取るだろう。それから会社に行って日中は様々な仕事をしている。セミナーにも行かなくてはいけないし、会議も多い。夜は接待やらパーティーやら・・・・まあ、色々だな。こう見えても忙しい身なのだ。情報は中松の方が確かだから、出社前に色々変わった事が無いか聞く。世界情勢もそこで一通り把握するから、私にとってテレビは不要だ」

 頭が痛くなりそうな回答だった。

「そっか。一矢も大変ね。マックっていうのは、あのMって大きく書いてある看板のお店の事よ。マクドナルドって言うの。美味しいから食べてみようよ!」

「・・・・ああ、有名なファストフードの店の事だったのか。悪いが、ファストフード全般、あまり好みではない」

 そうよね。一矢はそういうもの、食べないもんね。
 がっかりした顔をした私を見て、一矢が慌てて言った。「あ、いや、その、お前がどうしても食べたいというなら、私が作ってやろうではないか」

「え? 作る? 一矢、料理出来るの?」

 そんなことが出来るなんて、今まで一度も聞いたことが無い。

「やった事はない」

「・・・・大丈夫? 何か他のものでいいよ」

「いいや。妻の願いは、旦那たるもの全力で叶えなくてはならないだろう。本来ならあそこの商品を買うのがベストだと思うが、しかし私はファストフードが好みではない。従って、私でも食べられるものにしなくてはならないのだ」

「そこまでしなくても・・・・」

 それより、その無謀な考えを何とか止めさせたいのだが。

「いいや、出来ないというのは言い訳に過ぎない。伊織の為に、私が出来ることは色々チャレンジをしてみようと思う。その・・・・折角お前が今日一緒にいてくれるのだ。だったらお前が食べたいものくらい、この私が用意してやろうではないか」

 ドヤ顔で言われた。





 不安しかない――!!





 これは、嫁(ニセ)が、旦那様(ニセ)の美しい細く長い指が傷ついたりしないように、包丁の魔の手から守らなきゃ、という案件になりそうだわ!

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