冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】

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その後 第13話 毎日9時に

それから、将軍さんは、毎日、日本時間の9時に電話をくれた。

「ねぇ、将軍さん、大丈夫なの?」

私は、心配になって尋ねる。

『ん? 何が?』

将軍さんは、何を心配されているのか、全く分からない様子で答える。

「出張中って、一緒に行ってる人と食事をしながら打ち合わせをしたりするものじゃない?」

私は、あえて西野さんの名前は出さずに尋ねる。

『……ああ、大丈夫。打ち合わせは、日本で十分過ぎるほどやったし、こっちで必要なものは、昼間済ませてるから』

そうか。日本語なら、相手に聞かれても分からないから、平気なんだ!

『それに、西野さんには、妊婦に早寝をさせるためには、日本時間の9時には電話をしないといけないからって言ってあるし』

将軍さんは、時折、くすくすと笑い声をもらしながら教えてくれた。

えっ? 西野さんに妊娠してること言ったの?

「あれ? 妊娠って、安定期に入るまでは公表しない人が多いんじゃない? 西野さんには言っちゃっていいの?」

芸能人とかも、安定期に入ってから発表してるよね?

でも、将軍さんは、違うらしい。

『それは、安定期に入るまでは、流産の危険があるからだろ? だからこそ、俺は、むしろ公表した方がいいと思うんだ』

えっ?

「なんで?」

電話では見えないと分かりつつも、私は、思わず、首を傾げる。

『公表することで平穏な日々が訪れるなら、それは母体にも胎児にもいいはずだろ? それに、万が一のことがあったらって考えるより、万が一のことがないように、周りに気を遣ってもらう方がいいに決まってる』

「ああ! そっか」

目からうろこって、こういうことを言うんだと思う。

妊娠してるって宣言することで、将軍さんは、せまる西野さんから逃げられるし、私は、仕事上で重い物を持ったり、立ち仕事を避けたりできるから、妊娠初期の体を危険にさらさなくて済むんだ。

うん、じゃあ、将軍さんが戻って来たら、進藤しんどう部長に報告しよう。

進藤部長は、春から将軍さんの後任で企画部の部長になったおじさん。

大手の会社で部長さんをしてた人を社長がヘッドハンティングしてきたらしい。


これから、健診で通院のために遅刻や早退をしなければいけないことも出てくるだろうし、ちゃんと報告して、スムーズに休めるようにしてもらおう!

その分、真由にも迷惑をかけるから、ちゃんと話しておかないと。


将軍さんが、金髪美女の西野さんと出張だからって、心配で落ち着かなかったけど、落ち着いて考えれば、将軍さんが浮気なんてするわけない。

元カレと遭遇した時に、ちゃんとそう言ってくれたもん。

私は、将軍さんを信じていれば、大丈夫なんだ。

私は、将軍さんを信じて、残りの日々を過ごした。


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