冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】
その後 第10話 不安
診察を終えると、専務が心配そうに待っててくださった。
「爽さん、大丈夫?」
「はい」
と、返事をしたものの、体調より、精神的な不安で大丈夫じゃない。
子供は欲しいと思ってた。
いつかお母さんになるんだって漠然と思ってた。
ただ、それが現実になると、お母さんになる自信は、全然ない。
私だって、まだまだ子供なのに……
「爽さん、どうしたの?
先生、なんだって?」
専務が心配そうに尋ねる。
「えっと……
倒れたのは、鉄欠乏性貧血らしいです。増血剤の処方箋が出るので、それを飲んでくださいって言われました」
私は、当たり障りのないところだけをかいつまんで話す。
「それだけ?」
専務が心配そうに私の顔を覗き込む。
専務、もしかして、何か気付いてるの?
「ただの貧血ならいいんだけど。悪い病気だったら、どうしようかと思って、ヒヤヒヤしたわ」
こんなに親身になって、心配してくださるなんて……
「大丈夫です。ご心配をおかけしました。
多分、夏バテで、食欲が落ちてたせいだと思います。
明日から、また頑張りますね」
もしかして、このところの食欲不振って、西野さんのせいだと思ってたけど、つわりってやつだったの?
確かに、それなら、納得がいくかも……
それにしても、産婦人科……
どうしよう。
2週間くらいなら、放置しても平気?
出産経験のない私が、いくら考えたところで、正しい答えが出るはずもなく……
帰宅後、私は、母に電話を掛けた。
『どうしたの? 珍しいわね』
母から電話が掛かってくることはあっても、私から掛けることは滅多にない。
帰省シーズン前でもないのに電話をしたから、そんなふうに言われてしまった。
「あのね、今日、軽い貧血で倒れてね。病院に行ったの」
電話の向こうで、さっきまで明るかった母が沈黙した。
『……それで? 何か、悪い病気でも見つかったの?』
真剣な声で尋ねる母の声からは、心配の心がにじみ出ている。
「あ、違うの。それは、本当にただの鉄欠乏性貧血で、増血剤ももらってきたから、大丈夫なんだけど……」
私は、慌てて心配させないように補足する。
『そう、それならいいけど。爽、ちゃんと食べてる? レバーとかほうれん草とか、ちゃんと食べないとダメよ。あなたのお料理で、将軍くんの体もできてるんだから』
母の話は、いつもあっという間に明後日の方向にずれていく。
早めに軌道修正をしないと!
「それは、分かってるつもり。今日、掛けたのは、その……』
私は、なんとなく照れ臭くて、言い淀んだ。
『ん? 何? なんかあった?』
さすがお母さん、何も言わなくても何かあったことに気づくんだ……
「ん、何かっていうほどのことじゃないんだけど……」
将軍さんに1番に知らせた方がいいのかな……
でも、面と向かって言いたいし……
この期に及んで、まだ葛藤があるなんて、自分でも呆れてしまう。
でも……、うん、やっぱり、将軍さんには、帰ってきてから、直接、言おう。
「あのね、妊娠……してるみたいなの」
私は、意を決して、母に告げた。
『えっ……、まあ! それは、おめでとう!
じゃあ、貧血もそのせいね?』
母の明るい声に救われる。
「うん、多分」
『予定日は?』
そうか。
産婦人科に行かないと、そんな大切なことも分からないんだ……
「今日、救急外来で見てもらった時に、分かっただけだから、詳しいことは、分かんないの。
将軍さんは、今日から海外出張中だし、将軍さんが帰ってくるまで、2週間くらい、産婦人科いかなくてもいいよね?」
私は、行かなくても大丈夫って同調して欲しかったのかもしれない。
でも、母は違った。
「ダメよ。ちゃんと見てもらわないと、正常な妊娠かどうか分からないじゃない。貧血で倒れるってことは、何か問題があるかもしれないし」
「えっ?」
正常な妊娠?
「こんなこと言いたくはないけど、子宮外妊娠だったり、お腹の中で赤ちゃんの心臓が止まってることだってあるのよ? 明日、一緒に行ってあげるから、産婦人科に行くわよ」
出産経験のある母に、そう言われると、将軍さんが帰るまで待つのは、ダメな気がしてきた。
「爽さん、大丈夫?」
「はい」
と、返事をしたものの、体調より、精神的な不安で大丈夫じゃない。
子供は欲しいと思ってた。
いつかお母さんになるんだって漠然と思ってた。
ただ、それが現実になると、お母さんになる自信は、全然ない。
私だって、まだまだ子供なのに……
「爽さん、どうしたの?
先生、なんだって?」
専務が心配そうに尋ねる。
「えっと……
倒れたのは、鉄欠乏性貧血らしいです。増血剤の処方箋が出るので、それを飲んでくださいって言われました」
私は、当たり障りのないところだけをかいつまんで話す。
「それだけ?」
専務が心配そうに私の顔を覗き込む。
専務、もしかして、何か気付いてるの?
「ただの貧血ならいいんだけど。悪い病気だったら、どうしようかと思って、ヒヤヒヤしたわ」
こんなに親身になって、心配してくださるなんて……
「大丈夫です。ご心配をおかけしました。
多分、夏バテで、食欲が落ちてたせいだと思います。
明日から、また頑張りますね」
もしかして、このところの食欲不振って、西野さんのせいだと思ってたけど、つわりってやつだったの?
確かに、それなら、納得がいくかも……
それにしても、産婦人科……
どうしよう。
2週間くらいなら、放置しても平気?
出産経験のない私が、いくら考えたところで、正しい答えが出るはずもなく……
帰宅後、私は、母に電話を掛けた。
『どうしたの? 珍しいわね』
母から電話が掛かってくることはあっても、私から掛けることは滅多にない。
帰省シーズン前でもないのに電話をしたから、そんなふうに言われてしまった。
「あのね、今日、軽い貧血で倒れてね。病院に行ったの」
電話の向こうで、さっきまで明るかった母が沈黙した。
『……それで? 何か、悪い病気でも見つかったの?』
真剣な声で尋ねる母の声からは、心配の心がにじみ出ている。
「あ、違うの。それは、本当にただの鉄欠乏性貧血で、増血剤ももらってきたから、大丈夫なんだけど……」
私は、慌てて心配させないように補足する。
『そう、それならいいけど。爽、ちゃんと食べてる? レバーとかほうれん草とか、ちゃんと食べないとダメよ。あなたのお料理で、将軍くんの体もできてるんだから』
母の話は、いつもあっという間に明後日の方向にずれていく。
早めに軌道修正をしないと!
「それは、分かってるつもり。今日、掛けたのは、その……』
私は、なんとなく照れ臭くて、言い淀んだ。
『ん? 何? なんかあった?』
さすがお母さん、何も言わなくても何かあったことに気づくんだ……
「ん、何かっていうほどのことじゃないんだけど……」
将軍さんに1番に知らせた方がいいのかな……
でも、面と向かって言いたいし……
この期に及んで、まだ葛藤があるなんて、自分でも呆れてしまう。
でも……、うん、やっぱり、将軍さんには、帰ってきてから、直接、言おう。
「あのね、妊娠……してるみたいなの」
私は、意を決して、母に告げた。
『えっ……、まあ! それは、おめでとう!
じゃあ、貧血もそのせいね?』
母の明るい声に救われる。
「うん、多分」
『予定日は?』
そうか。
産婦人科に行かないと、そんな大切なことも分からないんだ……
「今日、救急外来で見てもらった時に、分かっただけだから、詳しいことは、分かんないの。
将軍さんは、今日から海外出張中だし、将軍さんが帰ってくるまで、2週間くらい、産婦人科いかなくてもいいよね?」
私は、行かなくても大丈夫って同調して欲しかったのかもしれない。
でも、母は違った。
「ダメよ。ちゃんと見てもらわないと、正常な妊娠かどうか分からないじゃない。貧血で倒れるってことは、何か問題があるかもしれないし」
「えっ?」
正常な妊娠?
「こんなこと言いたくはないけど、子宮外妊娠だったり、お腹の中で赤ちゃんの心臓が止まってることだってあるのよ? 明日、一緒に行ってあげるから、産婦人科に行くわよ」
出産経験のある母に、そう言われると、将軍さんが帰るまで待つのは、ダメな気がしてきた。
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