冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】

くっきぃ♪コミカライズ配信中

その後 第8話 仲睦まじく

その結果、いつもなら将軍さんが帰宅するのは深夜なのに、あっさりと20時に解散になった。

今日は迫っても無駄だと思ってくれたのかもしれない。

私たちは、タクシーを拾い、西野さんをホテルまで送り届ける。

どうやら、これは、毎回、将軍さんの役目だったらしい。

毎回予約するホテルが、うちへの帰り道にあるんだそうだ。

そんなの、子供じゃないんだから、別で帰ればいいのに。

今回は、後部座席の右側に私、左側に西野さん、助手席に将軍さんが乗り込む。

「お料理おいしかったですね」

私は、何か会話を繋ごうと西野さんに話しかける。

けれど、西野さんは、

「そうですね」

と言ったきり、窓の外を向いてしまった。

もしかして、あからさまにイチャイチャしすぎて、ご機嫌を損ねてしまったかな?

でも、彼女はあくまで、仕事で来てるのであって、男漁りに来てるわけじゃないはず。

こんなことで、ご機嫌を損ねるような担当者では、後々、困るのでは?と心配になってしまった。

ホテルに着くと、将軍さんは助手席を降りて、

「今日はありがとうございました。
 また、よろしくお願い致します」

と、西野さんに丁寧に挨拶をする。

彼女がホテルに入るのを見送ると、将軍さんは、今度は私の隣に乗り込んできた。

タクシーが動き始めると、将軍さんは、私の手をキュッと握る。

「爽、今日は、ありがとう。おかげで、助かったよ」

助かったってことは、毎回、困ってたってことよね?

良かった。将軍さんが、金髪美女に迫られても、揺れ動く人じゃなくて。

私は、そのまま、こてんと将軍さんの肩にもたれかかる。

もしかしたら、西野さんは、酔ったふりでもして、毎回、こうして将軍さんにくっついてたのかもしれない。

じゃなきゃ、将軍さんにあの人の香水の香りが移るわけがない。

私は、将軍さんの温もりを感じながら、残りわずかな道のりを、幸せな気分で帰宅する。


帰宅後、将軍さんは言う。

「ふぅぅ……
 爽、お疲れ」

「うん、将軍さんも、お疲れ様。
 私は今日だけだけど、将軍さんは毎回だから、大変よね」

私はそう言うと、将軍さんの腰に腕を回して、ギュッと抱きしめる。

私なりの労いの気持ちを込めて。

すると、将軍さんも、ギュッと抱きしめ返してくれる。

「くくっ
今日は、いつもより早いから、いつもよりゆっくりと爽をかわいがれるな」

頭上からそんな声が聞こえてきて、私はさらにギュッと抱きしめる手に力を込めた。

「シャワー、浴びてくるね」

私は、そう言って腕を解くけれど、将軍さんは腕を緩めてはくれない。

「将軍さん?」

私が、将軍さんを見上げると、将軍さんは、クスッと笑みをこぼした。

「爽、一緒に入ろうか?」

私は、首をブンブンと横に振る。

一緒にお風呂なんて、プロポーズの旅行で入った露天風呂以来。

普段は、将軍さんにどんなに誘われても、それだけは拒否し続けてきた。

明るいところで裸になるなんて、恥ずかしすぎるから。

「仕方ない。じゃあ、また温泉、予約するか!」

将軍さんは、そう軽口をたたいて、私の頭をくしゃりと撫でた。

私は、将軍さんの腕を抜け出して、シャワーを浴びる。


その夜、私たちは、また殊更に仲良くする。


将軍さんは、私のもの。

どんな美女が現れても、渡すわけにはいかない。


せっかくいつもより早く帰宅したのに、互いを求め合う私たちは、結局、早寝することなく、仲睦まじく夜更かしをしてしまった。






コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品