冷たい部長の甘い素顔【完】
第62話 旅行に行かないか?
・:*:・:・:・:*:・・:*:・:・:・:*:・
11月10日 土曜日
・:*:・:・:・:*:・・:*:・:・:・:*:・
私たちが遅めの朝食をとっていると、将軍さんが口を開いた。
「爽、旅行に行かないか?」
旅行?
「いいけど、どこに?」
どこか行きたいところでも、あるの?
私は、将軍さんの次の言葉を待つ。
「いや、そういうわけじゃないんだけど、2人でのんびり温泉でもどうかな…と思って」
なぜか表情の固い将軍さん。
なんで?
「温泉、いいね。
少し寒くなってきたし。
やっぱり、温泉は夏より冬だもんね」
将軍さんの表情が気になりながらも、私は喜んで賛成する。
すると、将軍さんはほっとしたように頬を緩ませた。
「じゃあ、食べ終わったら、2人で行き先を相談しよう」
私たちは、食後、ソファーに並んで座ると、スマホ片手に一泊で行けそうな温泉を検索する。
ウェブサイトには、どこも素敵な写真が載せてあるので、迷ってしまう。
「さっきのところも良かったけど、ここもいいなぁ」
そんなことを言いながら、2人で寄り添いあって、まったりとイチャイチャしてるこの時間が好き。
どこにも行かなくても、こうして手の届くところに将軍さんがいてくれることが、幸せなんだと思う。
もちろん、温泉も好きだし、楽しみだけど、どちらかというと、将軍さんが私のために何かをしたいと考えてくれたことの方が嬉しい。
そうしてるうちに、将軍さんが一軒の温泉旅館のサイトを見せてくれた。
「爽、ここどう?」
それは、2人で初めて出かけたプラネタリウムから程近いところにある老舗の温泉旅館。
「うん、素敵」
あの時は、初めてのデートで、いきなり遠出して、楽しかったなぁ。
当日の朝、突然、連絡をもらって、サプライズのように出かけた思い出の場所。
あの1日で、もっと将軍さんのことが好きになった。
あれから、毎日、毎日、将軍さんのことを好きになってる気がする。
「じゃあ、予約しておくよ」
そう言うと、将軍さんはそのままネット予約を始める。
そのあと、将軍さんは何か用事があるらしく、私を一旦自宅に帰して、出かけて行った。
私は、週末にしか帰らない我が家を軽く掃除して、冬物をキャリーケースに詰めていく。
私の衣類たちは、毎週、1週間分の着替えとして将軍さんの家に運ばれ、そのままこの部屋に帰ることなく、次の週にまた足りないものが運ばれるという状況。
これって、徐々にお引っ越しをしてるのと、あんまり変わらない気がしてきた。
一応、私の部屋もあるとはいえ、これってほとんど同棲だよね。
掃除と荷造りを終えても、将軍さんはなかなか戻ってこない。
テレビを点けても、一人で見てるのは、なんだか味気ない。
私、いつの間にか、隣に将軍さんがいないとダメになってる?
ずっと一人暮らしだったのに、なんだか寂しくて物足りない。
夕方。
ピンポン…と玄関のチャイムが鳴る。
将軍さんだ!
私は、嬉しくなって玄関に駆け出した。
私はドアを開けるなり、将軍さんの首に飛びつく。
「おかえりなさい。会いたかった」
すると、驚いたように目を丸くした将軍さんだったけど、その直後、嬉しそうに顔を綻ほころばせた。
「一人にさせて悪かった。
もしかして、寂しかった?」
そう尋ねた将軍さんが、そのまま抱きしめ返してくれる。
「うん。寂しかった」
私は、背伸びをして、ギュッと将軍さんに抱きつく。
「ありがとう。そう思ってくれて嬉しいよ。
俺も会いたかった」
私たちは、しばらくそうして抱き合ったあと、将軍さんが私の荷物を運んでくれて、将軍さんの自宅へと戻った。
「将軍さんは、今日はどこに行ってたの?」
私は、帰りの車の中で尋ねる。
「ん? まぁ、いろいろ」
いろいろ?
いつもそんな曖昧な言い方しないのに……
「いろいろって?」
私がさらに尋ねると、将軍さんは、少し困った顔をする。
「買い物とか。
旅行に必要なものとか、いろいろ?」
何? 言えないことなの?
突然、私の胸に不安が押し寄せる。
「……もしかして、…………浮気?」
先週、すったもんだした元カレとのことが、頭をよぎる。
「なっ!」
将軍さんは、一瞬で顔色を変えた。
「それは絶対にない。
俺は、爽だけそばにいてくれれば、それでいいんだから。
じゃなきゃ、いい大人が、2年以上片思いなんてしてるわけないだろ」
言われてみれば、そうかも。
会社での評判は置いておいて、外に出れば、将軍さんなら、いくらでもついてくる女性はいる。
それでも、一途に私を思ってくれてたんだから。
「ごめんなさい。
つい……」
元カレのことは、もうなんとも思ってないけど、それでも二股をかけられてたことは、どこかにトラウマとして残ってるのかもしれない。
好きになればなるほど、将軍さんが離れていくのが怖くなる。
「いや、爽が辛い思いをしたのは、分かってるから……
でも、だからこそ、俺は、二度と爽に同じ思いはさせないから。
これから、いろんなことで、すれ違ったり、けんかしたりすることがあるかもしれないけど、それでも、浮気や不倫だけは、絶対ないって誓えるよ」
赤信号で停車すると、将軍さんは私の手を握る。
その手から、伝わる温もりは、不思議と私の心を落ち着かせてくれる。
「うん。将軍さんを信じるよ」
私は、その将軍さんの温もりをもっと感じたくて、将軍さんの手を持ち上げると、頬ずりをする。
少し骨張ったその大きな手は、決して私を傷つけない。
私はそう信じて、青信号とともに、その手を離した。
11月10日 土曜日
・:*:・:・:・:*:・・:*:・:・:・:*:・
私たちが遅めの朝食をとっていると、将軍さんが口を開いた。
「爽、旅行に行かないか?」
旅行?
「いいけど、どこに?」
どこか行きたいところでも、あるの?
私は、将軍さんの次の言葉を待つ。
「いや、そういうわけじゃないんだけど、2人でのんびり温泉でもどうかな…と思って」
なぜか表情の固い将軍さん。
なんで?
「温泉、いいね。
少し寒くなってきたし。
やっぱり、温泉は夏より冬だもんね」
将軍さんの表情が気になりながらも、私は喜んで賛成する。
すると、将軍さんはほっとしたように頬を緩ませた。
「じゃあ、食べ終わったら、2人で行き先を相談しよう」
私たちは、食後、ソファーに並んで座ると、スマホ片手に一泊で行けそうな温泉を検索する。
ウェブサイトには、どこも素敵な写真が載せてあるので、迷ってしまう。
「さっきのところも良かったけど、ここもいいなぁ」
そんなことを言いながら、2人で寄り添いあって、まったりとイチャイチャしてるこの時間が好き。
どこにも行かなくても、こうして手の届くところに将軍さんがいてくれることが、幸せなんだと思う。
もちろん、温泉も好きだし、楽しみだけど、どちらかというと、将軍さんが私のために何かをしたいと考えてくれたことの方が嬉しい。
そうしてるうちに、将軍さんが一軒の温泉旅館のサイトを見せてくれた。
「爽、ここどう?」
それは、2人で初めて出かけたプラネタリウムから程近いところにある老舗の温泉旅館。
「うん、素敵」
あの時は、初めてのデートで、いきなり遠出して、楽しかったなぁ。
当日の朝、突然、連絡をもらって、サプライズのように出かけた思い出の場所。
あの1日で、もっと将軍さんのことが好きになった。
あれから、毎日、毎日、将軍さんのことを好きになってる気がする。
「じゃあ、予約しておくよ」
そう言うと、将軍さんはそのままネット予約を始める。
そのあと、将軍さんは何か用事があるらしく、私を一旦自宅に帰して、出かけて行った。
私は、週末にしか帰らない我が家を軽く掃除して、冬物をキャリーケースに詰めていく。
私の衣類たちは、毎週、1週間分の着替えとして将軍さんの家に運ばれ、そのままこの部屋に帰ることなく、次の週にまた足りないものが運ばれるという状況。
これって、徐々にお引っ越しをしてるのと、あんまり変わらない気がしてきた。
一応、私の部屋もあるとはいえ、これってほとんど同棲だよね。
掃除と荷造りを終えても、将軍さんはなかなか戻ってこない。
テレビを点けても、一人で見てるのは、なんだか味気ない。
私、いつの間にか、隣に将軍さんがいないとダメになってる?
ずっと一人暮らしだったのに、なんだか寂しくて物足りない。
夕方。
ピンポン…と玄関のチャイムが鳴る。
将軍さんだ!
私は、嬉しくなって玄関に駆け出した。
私はドアを開けるなり、将軍さんの首に飛びつく。
「おかえりなさい。会いたかった」
すると、驚いたように目を丸くした将軍さんだったけど、その直後、嬉しそうに顔を綻ほころばせた。
「一人にさせて悪かった。
もしかして、寂しかった?」
そう尋ねた将軍さんが、そのまま抱きしめ返してくれる。
「うん。寂しかった」
私は、背伸びをして、ギュッと将軍さんに抱きつく。
「ありがとう。そう思ってくれて嬉しいよ。
俺も会いたかった」
私たちは、しばらくそうして抱き合ったあと、将軍さんが私の荷物を運んでくれて、将軍さんの自宅へと戻った。
「将軍さんは、今日はどこに行ってたの?」
私は、帰りの車の中で尋ねる。
「ん? まぁ、いろいろ」
いろいろ?
いつもそんな曖昧な言い方しないのに……
「いろいろって?」
私がさらに尋ねると、将軍さんは、少し困った顔をする。
「買い物とか。
旅行に必要なものとか、いろいろ?」
何? 言えないことなの?
突然、私の胸に不安が押し寄せる。
「……もしかして、…………浮気?」
先週、すったもんだした元カレとのことが、頭をよぎる。
「なっ!」
将軍さんは、一瞬で顔色を変えた。
「それは絶対にない。
俺は、爽だけそばにいてくれれば、それでいいんだから。
じゃなきゃ、いい大人が、2年以上片思いなんてしてるわけないだろ」
言われてみれば、そうかも。
会社での評判は置いておいて、外に出れば、将軍さんなら、いくらでもついてくる女性はいる。
それでも、一途に私を思ってくれてたんだから。
「ごめんなさい。
つい……」
元カレのことは、もうなんとも思ってないけど、それでも二股をかけられてたことは、どこかにトラウマとして残ってるのかもしれない。
好きになればなるほど、将軍さんが離れていくのが怖くなる。
「いや、爽が辛い思いをしたのは、分かってるから……
でも、だからこそ、俺は、二度と爽に同じ思いはさせないから。
これから、いろんなことで、すれ違ったり、けんかしたりすることがあるかもしれないけど、それでも、浮気や不倫だけは、絶対ないって誓えるよ」
赤信号で停車すると、将軍さんは私の手を握る。
その手から、伝わる温もりは、不思議と私の心を落ち着かせてくれる。
「うん。将軍さんを信じるよ」
私は、その将軍さんの温もりをもっと感じたくて、将軍さんの手を持ち上げると、頬ずりをする。
少し骨張ったその大きな手は、決して私を傷つけない。
私はそう信じて、青信号とともに、その手を離した。
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