冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】

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第64話 ごちそう

私たちが旅館に戻ると、すぐに仲居さんが部屋に訪れる。

「そろそろお食事の用意をさせていただいても、よろしいですか?」

仲居さんは、丁寧に膝をついて尋ねる。

「はい、お願いします」

将軍さんが、そう返事をすると、すぐに数々のお料理が運び込まれて来た。

「えっ!? すごい!
 何これ!?」

目を見張るほどのたくさんのお料理が、大きな座卓いっぱいに並ぶ。

しかも、どれもおいしそう。

「爽が、いつもおいしい料理を作ってくれてるお礼。今日はおいしい物、いっぱい食べような」

将軍さん……

その気持ちが嬉しい。

「ありがとう。
 明日から、またたくさん、がんばるね!」

お料理なんて、全然、大変じゃない。

将軍さんが、おいしそうに食べてくれると思えば、いくらでもがんばれる。

私の苦手な片付けは、将軍さんが全部やってくれるし。

私は目の前のご馳走をお腹いっぱい食べる。

揚げたての天ぷらは、歯を入れるたび、サクサクと衣が弾ける。

粗塩が振られた焼き魚は、見た目はもちろん、味もとてもおいしい。

簡易コンロでは固形燃料でお鍋がクツクツと煮えている。

煮物やおひたしまで、そこに並ぶ全てが、絶品だった。

「はぁ……
 おいしかった!
 ごちそうさまでした!」

私が手を合わせると、将軍さんは私の顔を見て嬉しそうに微笑む。

「ごちそうさま」

将軍さんもそう言って手を合わせた。


「はぁ……、
 もう、お腹が苦しくて、動けない」

私は、両手を後ろに突いて、背を反らす。

すると、将軍さんも、

「そうだな」

とお腹をさすって笑う。


しばらくすると、仲居さんが食器を片付けて、布団を敷いてくれた。

だけど、お腹が苦しい私たちは、そのまま2人で畳の上でゴロゴロと横になり、イチャイチャして過ごす。


将軍さんは、肘枕をしながら、横になった私の顔を覗き込む。

「爽、かわいい」

将軍さんは、そうささやくと、指で私の頬をなぞり、そのままそっと唇に触れる。

途端に私の鼓動は忙しなくなり、頬は熱を帯びていく。

すると、将軍さんの顔がゆっくりと近づいて、優しく唇に触れる。

将軍さんは、私の髪を梳くように撫で、愛おしげに私を見つめてくる。

「爽、好きだよ」

目を細めて、そんな風にささやかれると、胸の奥がキュンと締め付けられる。

トクトクと自分で自分の鼓動が聞こえてきそう。

「私も……
 将軍さんが好き……」

さっき飲んだお酒のせいかな?
私は、少しかすれた声で答える。

そして、そのまま私は、将軍さんの首に腕を回した。


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