冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】

くっきぃ♪コミカライズ配信中

第58話 ランチバイキング


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  11月3日   土曜日

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それから、2週間ほどが、穏やかに過ぎていった。

私は結局、将軍さんに言われるまま、1週間分の着替えを持って、将軍さんの家に泊まる生活を続けている。

これって、半同棲っていうより、ほとんど同棲なんじゃないかっていう気もしないでもない。


そんな週末、私たちは、雑誌で特集を組まれていたホテルのランチバイキングに来ている。

私が、たまたま雑誌を見ていて、「おいしそう」って呟いたら、将軍さんが早速連れてきて
くれたから。

「将軍さん、これ、おいしいですよ!
 食べてみてください」

私のお皿から、将軍さんのお皿にローストビーフを1枚移す。

すると、将軍さんは、

「えぇ!?
 そこは、『あーん』じゃないのか?」

とくすくす笑う。

「っ!!
 そっ、そんな恥ずかしい事、こんな公衆の面前でできませんよ!」

誰が見てるか分からないし、何より、小さな子供を連れた家族連れも多いのに。

すると、将軍さんは、さらにいじわるを言う。

「じゃあ、家ならいいんだな?」

「えっ、いや、そういうわけじゃ……」

私が言葉をなくしてうろたえると、将軍さんは肩を揺らして笑った。

「爽は、意外と恥ずかしがり屋だな。
 よし! じゃあ、俺がやってやる。
 ほら、爽、あーん」

そう言った将軍さんは、自分のお皿にあったサーモンのムニエルをフォークに刺して、私の前に差し出してくる。

「えぇ!?」

私は、戸惑いながら、左右をキョロキョロと見回す。

幸い、みんな、自分の食べ物に夢中で、こちらを気にしてる人はいないように思える。

私が照れながら、おずおずと口を開けると、将軍さんは私の口に、そのサーモンのムニエルを入れてくれた。

おいしいのかもしれないけど、恥ずかしくて味がよく分かんない。

「くくっ……
 爽、顔が赤いぞ」

将軍さんは、楽しそうだ。

「誰のせいですか!!」

私は怒るけれど、

「爽のせい」

と、さらっと言われてしまった。

「は!?
 なんで私のせいなんですか!?」

どう考えても将軍さんのせいでしょ!?

「だって、爽が可愛すぎるから、悪い」

そんな恥ずかしいことをさらっと言われて、私の顔は、ますます熱を帯びる。

「もう!!」

私は返す言葉もなくして、拗ねるけれど、将軍さんは、そんなこと、全くお構いなしで、私の名前を呼ぶ。

「爽!」

何かと思えば、そのまま無言で口を開いて固まっている。

これは、明らかに、あーんの状態で待ってる!?

呆れた私は、

「もう!」

と小さく呟いて、将軍さんの口に、私のおすすめのローストビーフを入れた。

将軍さんは、それをもぐもぐと食べて、

「おいしい!」

と幸せそうに笑顔をこぼした。

ずるいよ。
そんな風に笑われたら、もう怒れないじゃない。

私たちは、デザートもたっぷり食べて、はちきれそうなお腹を抱えて、レストランを後にした。

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