冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】

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第57話 偏見

午後、食事を終えて、席に戻ると、キーボードをカタカタ叩きながら、真由が声を潜めて話しかけてくる。

「ほんとに部長、笑うんだね。
 昼休み、爽と笑っててびっくりした」

ふふふっ、
何、それ!?

「最初から言ってるじゃん。
 部長、怖くないよって。
 むしろ、誰よりも優しいと思うよ」

将軍さんは、いつだって私のことを優先して考えてくれる。
だから、私も、将軍さんのために少しでも何かしたいと思えるんだもん。

「はいはい、ごちそうさまでした。」

あれ?
もしかして、惚気だと思われた?
呆れられたかな?

でも、本当のことだし、しょうがないよね。



私は、再び、仕事に集中した。



14時。

「園部!」

突然、将軍さんに呼ばれた。

私は、即座に手を止めて、部長席に向かう。

「この資料、売り上げ順になってるよな?」

「はい」

それがどうしたんだろう?

「これ、売り上げの坪単価順にできるか?」

将軍さんは、いつもの仕事中の厳しい視線を私に投げかける。

「んー、この資料には、売り場面積を入れてないので、すぐには無理です。売り場面積の資料をいただければ、今日中には出せると思いますが……」

コンピュータは、何でも簡単に出せるように見えて、実は必要なデータと必要な命令がないと、何もできない。

「じゃあ、売り場面積は、開発部に資料があるから、貰ってきてやってくれるか?」

将軍さんは、隣の開発部にチラリと視線を向けて指示する。

「はい、すぐに取り掛かります」

野中部長の時は、こんな風に突然仕事が増えることは、ほとんどなかった。

毎日、決められたことを淡々とこなしていけば、それで良かった。

けれど、将軍さんは違う。

会社のために常に必要なことを考えながら仕事をしている。

真由は、仕事が増えるのは、嫌いだし、めんどくさいって言うけど、私はやりがいがあるし、何より、少しでも将軍さんの力になれればって思う。


だから、私は、すぐに開発部に向かった。

資料のファイルを借りて、急いで席に戻る。

元の資料をコピぺして、データをリンクさせて、売り場面積を入力していく。

売り上げ÷面積を出して、ソート(並べ替え)を掛ける。

うん、できた!

とりあえず、今日は、このやり方でいいかな?

もし、これも毎週必要って言われたら、マクロを組もう。

私は出来上がった資料を持って部長席に向かった。

「部長、できました。
 確認をお願いします」

将軍さんはざっと目を通して、

「ありがとう」

と微笑んだ。

その瞬間に、頑張ってよかったって思える。

私は一礼して、席に戻る。

すると、また真由が小声で話しかけてくる。

「部長、お礼言えるんだね」

「ぷっ」

私は、思わず、吹き出した。

いくらなんでも、それはひどくない?

「真由、部長の事、何だと思ってるの?
 厳しい所もあるけど、普通の人だってば」

まだ異動してきたばかりだし、怖い上司っていう偏見があるのは、仕方ないのかもしれない。

それでも、こうやって、部長のいい所、少しずつみんなにも知ってもらえたら、いいな。




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