冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】

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第54話 事情聴取

12時。

午前中、ずっと意味ありげな視線をよこしながら、そわそわとしていた真由が立ち上がった。

「爽、お昼、行こ!」

明らかに何か言いたげに誘ってくる。

「はぁぁ……」

思わず、ため息がこぼれる。

「逃げるのはなし?」

無理だと分かっていても、聞かずにはいられない。

「なし!」

問答無用、きっぱりと真由は断言する。

それを見ると、もう苦笑するしかない。

「仕方がないなぁ……」

私は、お弁当を持って立ち上がった。

社員食堂に行くと、私は注目の的で、みんなに取り囲まれてしまった。

「で?   どういうこと?」

真由は、食事を一口も食べることなく、身を乗り出して尋ねる。

これは、ごまかしたところで、食い下がられて余計に根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。

「………部長と付き合ってる」

私は諦めて答えた。その直後、

「おぉ〜!!」

意味の分からない歓声が上がる。

「いつから?」

やっぱり、それだけじゃ、終わらないのね。

「先々週の金曜日だったかな?」

私は、微妙に語尾を濁して答える。

「どっちから、言ったの?」

そんなに、興味本位で聞かれても、何となく言いにくいこともある。

「もう、いいじゃん。
 恥ずかしいから、そんなに根ほり葉ほり聞かないでよ〜」

もう逃げ出したい気分。

すると、真由が身を乗り出して、声を潜めた。

「じゃあ、最後に1つだけ確認させて。部長といて、疲れない?」

私は、一瞬、目が点になり、そのまま固まった。

「へ? なんで?」

将軍さんは、確かに上司だけど、プライベートまで仕事してるわけじゃないのに……

「だって、いつもあんな怖い顔してたら、こっちが緊張するじゃん」

そう言われて、私は思わず吹き出した。

「ぷっ……
 部長、ずっと笑ってるよ。
 難しい顔してるのは、仕事中だけだよ」

私が、当然のようにそう答えると、周りから一斉に、

「えぇ〜!?」

と、今日1番の歓声が上がる。

言っちゃマズかったかな?

将軍さんは、わざと厳しいふりをしてるって言ってたのに……

でも、まぁ、いっか。

しょうがないもんね。

私は、それ以上の質問には答えず、おいしくお弁当を食べた。


ところが、30分程して、少尉さんも社員食堂に来た。

あ……

将軍さんの手には、私が自分の分のついでに作ったお弁当がある。

全員が私と将軍さんを見比べて、好奇心いっぱいの視線をくれる。


真由が、

「ねぇねぇ、もしかして、愛妻弁当?」

と聞いてくる。

私は、もう苦笑するしかない。

「愛妻じゃないけど、お弁当だよ」

そんな私をよそに、将軍さんは、1人で黙々とお弁当を食べている。

こんな風に騒がれて、お弁当もなかなか食べられないなら、いっそ明日から将軍さんと一緒にお弁当食べたいな。

その方が楽しいに決まってる。

そんな事を思いながら、私は、お弁当箱を片付けて席に戻った。



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