冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】
第30話 手を
私たちは2時間喋り続け、目的地に到着した。
「ここ? 天文台?」
目の前にある白い建物の上には、ドーム型の屋根が乗っている。どう見ても天体望遠鏡だ。
「そう。まぁ、天文台は、夜じゃないと見られないから、今日は、その下側」
将軍さんが、指差したのは、天文台と書かれた看板。天文台の文字の下に書かれているのは、プラネタリウム。
「私、プラネタリウムって、小学校の校外学習で科学館に見学に行って以来です! 楽しみ〜!!」
なんか、わくわくしてきた。
喜んでいる私が隣を見上げると、将軍さんも嬉しそうにこちらを見ていた。
将軍さんは、私の手を取って、歩き出す。
ふふっ
将軍さんの手、大きい……。
プラネタリウムに入り、並んで座ると、将軍さんは繋いだ手の指を絡めてきた。
これ、恋人つなぎ……。
将軍さんの大きな手にすっぽり包まれると、なんだか守られてるみたいな気分になるから、不思議。
私が将軍さんを見上げると、将軍さんもこちらを見ていた。
目が合った私は、恥ずかしくなって目を伏せる。すると、将軍さんは、握った手にぎゅっと力を入れた。
その後、すぐに照明が落とされて、館内が暗闇に包まれる。
闇の中にいると、周りには何もない一人きりの孤独な空間にも思える。
けれど、手から伝わる大きな温もりが、私一人じゃないと告げてくれる。
上映されたのは、秋の星座。
満天の星がきらめく様子は、とても綺麗で、心癒される。
何より、手から伝わる将軍さんの温もりが、私の心をも温めてくれてるのかもしれない。
「腹、減ったな」
プラネタリウムを出て、すぐに将軍さんが言った。
「そうですね」
と私が答えると、
「じゃ、飯、行こう」
と将軍さんは、私の手を引く。
2人でゆっくりと步いて、車に戻る。
「爽は、魚、好きか?」
運転席に乗り込んだ将軍さんが尋ねる。
「はい」
私は、納豆以外は、基本的に好き嫌いはない。
「せっかく、ここまで来たし、浜焼きでも食べるか?」
将軍さんは、車に乗るときに離した手を再び握る。
なんだろう。
このずっと触れててくれるの、すごく嬉しい。
触れたいと思ってくれる気持ちも嬉しい。
「浜焼き?」
「網の上で貝とか、海老とか、シーフードを焼いて食べるんだ。爽は、食べたことない?」
「はい。でも、おいしそう!!」
シーフードのバーベキューみたいな感じ?
「じゃ、決まり。」
将軍さんはそう言うと、私の手を離してシフトをドライブに入れた。
仕方ないんだけど、離れるの、ちょっと寂しいな……。
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