冷たい部長の甘い素顔【完】
第22話 モスコミュール
「それにしても、男と飲みに来て、自分からモスコミュールをオーダーする女は初めてだな」
部長は、相変わらず、私の髪で遊んでいる。
「え? 変ですか?」
飲みやすいから、いつも頼んでたけど……
「お前、それ、最初、男に勧められなかったか?」
そう言われて、私は記憶を辿る。
「ああ、そうです。昔、カクテルとかよく分からなくて、何を頼めばいいか分からなかった時に、甘くて飲みやすいよって、勧めてもらってから、よく飲むようになりました」
あの時も、相手の男の子の方が先に潰れたんだよね。
「くくっ、それでお持ち帰りされなかったか?」
「は!?
されるわけありませんよ!
私、そういう所は、堅いんですから!」
失礼な!
「じゃあ、ほんとに強いんだな。モスコミュールは、ウォッカベースで、わりと強いカクテルなんだ。女を酔い潰して口説こうとする時によく使う酒だよ」
「えっ……!
それは……知りませんでした。
じゃあ、私、今まで、期待はずれで申し訳ない事をしてたんですね」
道理でおかわりをどんどん勧めてくるはずだ。
「ま、いいんじゃないか?
酒の力を借りないと口説けないようなヘタレな男に引っかからなかったって、事だろ?」
そう言って、部長は、私の頭を優しく撫でる。
どうしよう!
その大きな手に、私の心臓が跳ね上がる。
キュンと締め付けられて、苦しくなる。
何で、こんなにドキドキするの?
私は、その後も、ずっと部長にドキドキさせられ続け、カクテルを3杯ほど飲んだ所で店を出た。
「部長もお酒、強いんですね?」
「ああ、これくらいなら、問題ない」
会計を済ませた部長は、ドアを開けると、また私の腰に手を添えて、外へエスコートしてくれる。
エレベーターに乗ってる間も、左側に触れる部長の体温が心地よくて、そのまま寄りかかりたくなってしまう。
もしかして、私、珍しく酔ってる?
そんな自分を律して、外へ出ると、部長はタクシーを捕まえて、私を家まで送ってくれた。
タクシーの中では、ずっと部長の大きな手が、私の手を握っている。
「おやすみ、爽」
そう言った部長は、握った手にキュッと力を込めた。
「おやすみなさい」
私がそう言うと、部長はその手をそっと開く。
部長の手を心地よく感じてしまった私の手は、部長が手を開いているのに、なんとなく離れ難くて、困ってしまう。
でも、このままでいるわけにもいかない。
私は、そっと手を引いて、部長から離れた。
私が一礼するのと、ドアが閉まるのは、ほぼ同時だった。
私は、そのまま、タクシーが見えなくなるまで、見送っていた。
部屋に入り、シャワーを浴びても、ベッドに入っても、なぜか、ずっと部長の事が、頭から離れない。
なんで?
ただ、お酒を飲んで帰っただけ。
何があったわけでもない。
結局、私は、なかなか寝付けないまま、寝不足で朝を迎えた。
部長は、相変わらず、私の髪で遊んでいる。
「え? 変ですか?」
飲みやすいから、いつも頼んでたけど……
「お前、それ、最初、男に勧められなかったか?」
そう言われて、私は記憶を辿る。
「ああ、そうです。昔、カクテルとかよく分からなくて、何を頼めばいいか分からなかった時に、甘くて飲みやすいよって、勧めてもらってから、よく飲むようになりました」
あの時も、相手の男の子の方が先に潰れたんだよね。
「くくっ、それでお持ち帰りされなかったか?」
「は!?
されるわけありませんよ!
私、そういう所は、堅いんですから!」
失礼な!
「じゃあ、ほんとに強いんだな。モスコミュールは、ウォッカベースで、わりと強いカクテルなんだ。女を酔い潰して口説こうとする時によく使う酒だよ」
「えっ……!
それは……知りませんでした。
じゃあ、私、今まで、期待はずれで申し訳ない事をしてたんですね」
道理でおかわりをどんどん勧めてくるはずだ。
「ま、いいんじゃないか?
酒の力を借りないと口説けないようなヘタレな男に引っかからなかったって、事だろ?」
そう言って、部長は、私の頭を優しく撫でる。
どうしよう!
その大きな手に、私の心臓が跳ね上がる。
キュンと締め付けられて、苦しくなる。
何で、こんなにドキドキするの?
私は、その後も、ずっと部長にドキドキさせられ続け、カクテルを3杯ほど飲んだ所で店を出た。
「部長もお酒、強いんですね?」
「ああ、これくらいなら、問題ない」
会計を済ませた部長は、ドアを開けると、また私の腰に手を添えて、外へエスコートしてくれる。
エレベーターに乗ってる間も、左側に触れる部長の体温が心地よくて、そのまま寄りかかりたくなってしまう。
もしかして、私、珍しく酔ってる?
そんな自分を律して、外へ出ると、部長はタクシーを捕まえて、私を家まで送ってくれた。
タクシーの中では、ずっと部長の大きな手が、私の手を握っている。
「おやすみ、爽」
そう言った部長は、握った手にキュッと力を込めた。
「おやすみなさい」
私がそう言うと、部長はその手をそっと開く。
部長の手を心地よく感じてしまった私の手は、部長が手を開いているのに、なんとなく離れ難くて、困ってしまう。
でも、このままでいるわけにもいかない。
私は、そっと手を引いて、部長から離れた。
私が一礼するのと、ドアが閉まるのは、ほぼ同時だった。
私は、そのまま、タクシーが見えなくなるまで、見送っていた。
部屋に入り、シャワーを浴びても、ベッドに入っても、なぜか、ずっと部長の事が、頭から離れない。
なんで?
ただ、お酒を飲んで帰っただけ。
何があったわけでもない。
結局、私は、なかなか寝付けないまま、寝不足で朝を迎えた。
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