冷たい部長の甘い素顔【完】
第19話 ビールを飲みながら
私は、部長にお酌をしながら、声を掛ける。
「部長は、ビールのままでいいですか? 他にも日本酒とか酎ハイとかいろいろありますよ」
そう言いながら、視線で、ドリンクメニューを指し示す。
すると、
「お前は? ビールでいいのか?」
逆に部長が聞いてくれた。
「私は何でもいいんです。何飲んでも、ほとんど同じなので…」
もちろん、味の違いはあるけれど……
「同じ?」
部長は、不思議そうに尋ねる。
「ふふふっ、あまりかわいくないので、言いたくないんですけど、何飲んでも、ほとんど酔わないんですよね。赤い顔してしなだれかかってる女の子を見ると、羨ましくなっちゃいます」
私も、ああやって男性にチヤホヤされてみたかったな。
「くくっ、そういえば、お前、いつもしっかりした足取りで他の奴の世話を焼いてたな」
「見てたんですか!?」
そんな変なところを見てたなんて……
「これでも若い頃は、いろいろ誘われたんですよ。だけど、相手が私を酔い潰して口説こうとしてるのに、私、全然平気で……」
ほんと、残念。
「だから、結局、大抵、男性の方が先に潰れるんです。そうすると、仕方ないから、いつも駅まで肩を貸して連れて帰ってあげる羽目になるんですよね」
さっきまで無表情だった部長が、私の話を楽しそうに聞いてくれる。
「くくくっ。お前の話は、飽きないなあ。お前、『若い頃は』って言ってるけど、まだ十分若いだろ?」
部長は不思議そうに尋ねる。
「そう言っていただけるのは嬉しいんですけど、実は、もう28なんですよ〜。まぁ、中身は、未だ大人の女にはなりきれてませんけど」
すると、スッと手を伸ばした部長は、私の肩にかかった長い髪に触れながら、小声で呟く。
「お前は、そのままで十分いい女だよ」
部長の端正に整った顔で見つめられながら、そんな事を言われると、どうしていいか分からなくなる。
心臓の音がトクトクと早くなり始めると、もう、どこを見ていいか分からなくて、私は目を泳がせることしかできない。
何!?
部長、どうしたの?
お酒のせい?
私は、どうすればいいの?
戸惑う私をよそに、部長は全く余裕な態度で、こちらを見ている。
「くくっ……、お前、顔、赤いけど、酒のせいじゃないんだよな?」
なっ、何を言って……
「部長のせいです!!」
図星を突かれていらついた私は、思わず、部下としては言ってはいけないことを言ってしまった。
私は、ぷいっと身をよじって、部長から顔を背ける。
「くくくっ」
相変わらず、私の背後で部長が笑ってる。
「かわいいな、お前」
後ろから、耳元で囁かれた。
はっ?
どこが? なんで?
もう頭の中がパニック状態。
何をどうしていいのか、さっぱり分からない。
心臓がさっき以上にバクバクと大きな音を立てる。
私、どうしたの!?
ついさっきまで平気だったのに。
部長の方を全然見られない。
部長に背を向けてると、反対側にいる真由と目があった。
真由が心配そうに立ち上がる。
「爽、どうしたの? 顔、赤いよ? 体調、悪い? 爽が、こんなビールくらいで酔うはずないし……」
そばまで来た真由は、私の額に手を当ててくる。
だから、私は、真由の手をやんわりと返して、答える。
「大丈夫、何でもないから」
「部長は、ビールのままでいいですか? 他にも日本酒とか酎ハイとかいろいろありますよ」
そう言いながら、視線で、ドリンクメニューを指し示す。
すると、
「お前は? ビールでいいのか?」
逆に部長が聞いてくれた。
「私は何でもいいんです。何飲んでも、ほとんど同じなので…」
もちろん、味の違いはあるけれど……
「同じ?」
部長は、不思議そうに尋ねる。
「ふふふっ、あまりかわいくないので、言いたくないんですけど、何飲んでも、ほとんど酔わないんですよね。赤い顔してしなだれかかってる女の子を見ると、羨ましくなっちゃいます」
私も、ああやって男性にチヤホヤされてみたかったな。
「くくっ、そういえば、お前、いつもしっかりした足取りで他の奴の世話を焼いてたな」
「見てたんですか!?」
そんな変なところを見てたなんて……
「これでも若い頃は、いろいろ誘われたんですよ。だけど、相手が私を酔い潰して口説こうとしてるのに、私、全然平気で……」
ほんと、残念。
「だから、結局、大抵、男性の方が先に潰れるんです。そうすると、仕方ないから、いつも駅まで肩を貸して連れて帰ってあげる羽目になるんですよね」
さっきまで無表情だった部長が、私の話を楽しそうに聞いてくれる。
「くくくっ。お前の話は、飽きないなあ。お前、『若い頃は』って言ってるけど、まだ十分若いだろ?」
部長は不思議そうに尋ねる。
「そう言っていただけるのは嬉しいんですけど、実は、もう28なんですよ〜。まぁ、中身は、未だ大人の女にはなりきれてませんけど」
すると、スッと手を伸ばした部長は、私の肩にかかった長い髪に触れながら、小声で呟く。
「お前は、そのままで十分いい女だよ」
部長の端正に整った顔で見つめられながら、そんな事を言われると、どうしていいか分からなくなる。
心臓の音がトクトクと早くなり始めると、もう、どこを見ていいか分からなくて、私は目を泳がせることしかできない。
何!?
部長、どうしたの?
お酒のせい?
私は、どうすればいいの?
戸惑う私をよそに、部長は全く余裕な態度で、こちらを見ている。
「くくっ……、お前、顔、赤いけど、酒のせいじゃないんだよな?」
なっ、何を言って……
「部長のせいです!!」
図星を突かれていらついた私は、思わず、部下としては言ってはいけないことを言ってしまった。
私は、ぷいっと身をよじって、部長から顔を背ける。
「くくくっ」
相変わらず、私の背後で部長が笑ってる。
「かわいいな、お前」
後ろから、耳元で囁かれた。
はっ?
どこが? なんで?
もう頭の中がパニック状態。
何をどうしていいのか、さっぱり分からない。
心臓がさっき以上にバクバクと大きな音を立てる。
私、どうしたの!?
ついさっきまで平気だったのに。
部長の方を全然見られない。
部長に背を向けてると、反対側にいる真由と目があった。
真由が心配そうに立ち上がる。
「爽、どうしたの? 顔、赤いよ? 体調、悪い? 爽が、こんなビールくらいで酔うはずないし……」
そばまで来た真由は、私の額に手を当ててくる。
だから、私は、真由の手をやんわりと返して、答える。
「大丈夫、何でもないから」
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