どうにもならない社長の秘密
第十一章 七年前の重い扉 5
「――え?」
「紫織はその子とは結婚できなかったのよ。戸籍上は問題ないけれど」
「や、やだ。なに言ってるの?」
全く意味がわからなかった。
いったい母は何を言っているのだろう。
「彼のお母さんは、彼を生んだ当時銀座のクラブで働いていたホステスだったの。『藤乃屋』のいいお得意さんでもあったわ。お父さんはそのクラブの客でね。まぁ要するに浮気をしていたのよ。資産家の男には愛人のひとりやふたりいて当然だと思っていたから、私は責めたりはしなかったけど」
「ちょ、ちょっと待ってお母さん?」
「彼女は子供を産みたいって言って。でも、籍を入れることだけは、お母さんは許せなかった。それでもその代わりに、その子が成人するまでの養育費は責任を持つ約束をしたの」
そこまで聞いても、母はいったい何を言っているのかと。紫織には理解できなかった。
「だから、大学を卒業したあなたがあの子と結婚したいと言った時、名前を聞いて本当に驚いた。鏡原なんて、そうよくある名字じゃないから気づいたけど。だから必死に反対したのよ」
紫織は息をのんだ。
多分どこかを聞き違っているに違いない。
つい一昨日まで彼と抱き合っていたのだ。キスをして愛を囁き合って、睦み合い。
―ーそれなのに?
そんなはずがあるはずはない。
だから、ゆっくりと聞き返した。
「宗一郎と、私が、きょうだい? 違うわよね?」
「あの時には、そんなこととても言えなかった。ふたりが引き寄せ合ったのは血のせいなのかしらと思ったわ」
――宗一郎と私が兄妹? そんな……。
「違うんです! それは」
その声に紫織と紫織の母は振り返った。
「あ、あなたは」
「紫織はその子とは結婚できなかったのよ。戸籍上は問題ないけれど」
「や、やだ。なに言ってるの?」
全く意味がわからなかった。
いったい母は何を言っているのだろう。
「彼のお母さんは、彼を生んだ当時銀座のクラブで働いていたホステスだったの。『藤乃屋』のいいお得意さんでもあったわ。お父さんはそのクラブの客でね。まぁ要するに浮気をしていたのよ。資産家の男には愛人のひとりやふたりいて当然だと思っていたから、私は責めたりはしなかったけど」
「ちょ、ちょっと待ってお母さん?」
「彼女は子供を産みたいって言って。でも、籍を入れることだけは、お母さんは許せなかった。それでもその代わりに、その子が成人するまでの養育費は責任を持つ約束をしたの」
そこまで聞いても、母はいったい何を言っているのかと。紫織には理解できなかった。
「だから、大学を卒業したあなたがあの子と結婚したいと言った時、名前を聞いて本当に驚いた。鏡原なんて、そうよくある名字じゃないから気づいたけど。だから必死に反対したのよ」
紫織は息をのんだ。
多分どこかを聞き違っているに違いない。
つい一昨日まで彼と抱き合っていたのだ。キスをして愛を囁き合って、睦み合い。
―ーそれなのに?
そんなはずがあるはずはない。
だから、ゆっくりと聞き返した。
「宗一郎と、私が、きょうだい? 違うわよね?」
「あの時には、そんなこととても言えなかった。ふたりが引き寄せ合ったのは血のせいなのかしらと思ったわ」
――宗一郎と私が兄妹? そんな……。
「違うんです! それは」
その声に紫織と紫織の母は振り返った。
「あ、あなたは」
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