【書籍化】勤め先は社内恋愛がご法度ですが、再会した彼(上司)とまったり古民家ぐらしを始めます。
終章 秘密の恋のたどる道 1 ※R-15
その日は家の最寄りの駅から一緒に車に乗って帰ることになった。
駅前のロータリーで車を待っていると、創太郎の車が入ってきて、あずみの目の前が助手席になるようにきれいに停車した。
ドアを開け、助手席に乗り込む。どちらかといえば寒がりなあずみのために、創太郎がエアコンの設定温度を何も言わずに上げてくれた。
この前車で出かけたときにあずみが「ごめん、ちょっと寒いからエアコン弱めて欲しいです」と言っていたのを覚えてくれているようだった。
「…でも、西尾さんに味方になってもらうのは意外だったかも」
窓の外を流れる景色に畑や水田が多くなってきたところで、あずみは考えていたことをつぶやいた。
「篠原さんと付き合う前から、俺は考えてたよ。もしこういう事態になったらまずは西尾さんに頼ろうって」
「え、付き合う前から!?それは用意周到というかなんというか…」
「…用意周到っていうか、たぶん陰湿なんだと思うよ、俺。あの二人よりもずっと」
創太郎が自分の内面についてこんな風に言うのは意外な気がして、あずみは彼を見た。
まっすぐ前を向いて運転する創太郎の切れ長の瞳には薄く西日が射しこんで、彼の端正な横顔をより際立たせている。
その横顔はぞくりとするほど綺麗だった。
彼のいった『あの二人よりも陰湿』というのがどういう意味なのかを確かめたかったのに、一瞬彼が知らない人に見えた気がして、声が出ない。
「どこかに寄らなくて大丈夫?買うものとかない?」
「うん。まっすぐ帰って大丈夫」
結局、詳しい意味を聞くタイミングのないまま、車は家に着いた。
家に入ってまずは、ふたりで手分けして家じゅうの窓を開け、風が通りやすいようにする。
日本家屋というのは基本的に夏を快適に過ごせるように造られているのだそうで、こうすればたいていの場合は今時期でもほぼエアコンなしで過ごせた。
日中、陽が入りすぎないようにカーテンを閉めている薄暗いリビングに戻ると、いつの間にか後ろにいた創太郎に抱きしめられた。
あずみは振り向いてすっぽりと彼の腕の中に納まり、背中に手を回した。
つむじに創太郎の唇が触れた後、おとがいを優しく持ち上げられて二人の唇が重なる。
「ん…」
キスはすぐに深くなり、視界が揺れて、ソファに押し倒されたのがわかった。スカートの裾から手が入ってきて、太ももから腰まわりの線をたどった後、ストッキングをするりと脱がしにかかる。
「…っ、まだ、シャワー浴びてないから。着替えもしたいし」
いつもだったらそう言えば止まってくれるのに、彼は手を止めなかった。薄暗いソファに押し倒され、あっという間にストッキングを脱がされてしまう。
「ごめん、破けた。弁償する」
彼があずみの膝を割って、体を密着させてくる。
「ま、待って…」
「待てない」
あずみが必死に突っ張った手はたやすく外されてしまった。
手首をつかまれ、まぶたの上にキスをされる。唇はそこから目尻の線をなぞるようにして耳の敏感なところをたどり、熱い吐息が触れた。
「あ、…」
あずみの肩がぴくりと跳ねる。
創太郎はそんなあずみの反応に煽られたのか、首すじのやわらかいところに噛みついた。
「あ、ぅ」
どうしよう。このままされてしまうのだろうか。近くには避妊具がない。
周期的なことを言えば、今日はいわゆる安全日だった。
でも医学的には安全日というものは存在しないということも知っている。性的な興奮で、イレギュラーに排卵が起こるのは特段めずらしいことではない。
遠くない将来、彼と結婚するだろうとは思っているし、もちろん子どもも欲しい。けれど、まだそのタイミングじゃない。今はもっと頑張りたいことがあるのに。
とうとう下着が足先から引き抜かれ、服は脱がないままふたりの身体が重なりかけたとき、彼と目が合う。
その途端、彼はぴたりと動きを止めた。
「…ごめん。俺、どうかしてた」
そう言ってあずみの体を起こし、創太郎はすらりとした指を伸ばしてあずみの目尻に触れた。
「…あ、」
自分でも気がつかないうちに、涙が出ていた。創太郎が思いとどまってくれたのは、あずみの涙に気づいたからだろうか。
「泣かせるつもりはなかった。ごめん…」
「…ううん、だいしょうぶ。ちょっと焦っただけだから」
二人して息を整える。
お互いに熱に浮かされたようになっていたのが冷静になって、もうこのまま続けられるような雰囲気ではなかった。
「わたし、シャワーに入って着替えてくるね」
「…うん」
なんだか気まずいし、恥ずかしい。
あずみは創太郎の顔をまともに見られないまま、乱れたブラウスの胸元をおさえて立ち上がった。
駅前のロータリーで車を待っていると、創太郎の車が入ってきて、あずみの目の前が助手席になるようにきれいに停車した。
ドアを開け、助手席に乗り込む。どちらかといえば寒がりなあずみのために、創太郎がエアコンの設定温度を何も言わずに上げてくれた。
この前車で出かけたときにあずみが「ごめん、ちょっと寒いからエアコン弱めて欲しいです」と言っていたのを覚えてくれているようだった。
「…でも、西尾さんに味方になってもらうのは意外だったかも」
窓の外を流れる景色に畑や水田が多くなってきたところで、あずみは考えていたことをつぶやいた。
「篠原さんと付き合う前から、俺は考えてたよ。もしこういう事態になったらまずは西尾さんに頼ろうって」
「え、付き合う前から!?それは用意周到というかなんというか…」
「…用意周到っていうか、たぶん陰湿なんだと思うよ、俺。あの二人よりもずっと」
創太郎が自分の内面についてこんな風に言うのは意外な気がして、あずみは彼を見た。
まっすぐ前を向いて運転する創太郎の切れ長の瞳には薄く西日が射しこんで、彼の端正な横顔をより際立たせている。
その横顔はぞくりとするほど綺麗だった。
彼のいった『あの二人よりも陰湿』というのがどういう意味なのかを確かめたかったのに、一瞬彼が知らない人に見えた気がして、声が出ない。
「どこかに寄らなくて大丈夫?買うものとかない?」
「うん。まっすぐ帰って大丈夫」
結局、詳しい意味を聞くタイミングのないまま、車は家に着いた。
家に入ってまずは、ふたりで手分けして家じゅうの窓を開け、風が通りやすいようにする。
日本家屋というのは基本的に夏を快適に過ごせるように造られているのだそうで、こうすればたいていの場合は今時期でもほぼエアコンなしで過ごせた。
日中、陽が入りすぎないようにカーテンを閉めている薄暗いリビングに戻ると、いつの間にか後ろにいた創太郎に抱きしめられた。
あずみは振り向いてすっぽりと彼の腕の中に納まり、背中に手を回した。
つむじに創太郎の唇が触れた後、おとがいを優しく持ち上げられて二人の唇が重なる。
「ん…」
キスはすぐに深くなり、視界が揺れて、ソファに押し倒されたのがわかった。スカートの裾から手が入ってきて、太ももから腰まわりの線をたどった後、ストッキングをするりと脱がしにかかる。
「…っ、まだ、シャワー浴びてないから。着替えもしたいし」
いつもだったらそう言えば止まってくれるのに、彼は手を止めなかった。薄暗いソファに押し倒され、あっという間にストッキングを脱がされてしまう。
「ごめん、破けた。弁償する」
彼があずみの膝を割って、体を密着させてくる。
「ま、待って…」
「待てない」
あずみが必死に突っ張った手はたやすく外されてしまった。
手首をつかまれ、まぶたの上にキスをされる。唇はそこから目尻の線をなぞるようにして耳の敏感なところをたどり、熱い吐息が触れた。
「あ、…」
あずみの肩がぴくりと跳ねる。
創太郎はそんなあずみの反応に煽られたのか、首すじのやわらかいところに噛みついた。
「あ、ぅ」
どうしよう。このままされてしまうのだろうか。近くには避妊具がない。
周期的なことを言えば、今日はいわゆる安全日だった。
でも医学的には安全日というものは存在しないということも知っている。性的な興奮で、イレギュラーに排卵が起こるのは特段めずらしいことではない。
遠くない将来、彼と結婚するだろうとは思っているし、もちろん子どもも欲しい。けれど、まだそのタイミングじゃない。今はもっと頑張りたいことがあるのに。
とうとう下着が足先から引き抜かれ、服は脱がないままふたりの身体が重なりかけたとき、彼と目が合う。
その途端、彼はぴたりと動きを止めた。
「…ごめん。俺、どうかしてた」
そう言ってあずみの体を起こし、創太郎はすらりとした指を伸ばしてあずみの目尻に触れた。
「…あ、」
自分でも気がつかないうちに、涙が出ていた。創太郎が思いとどまってくれたのは、あずみの涙に気づいたからだろうか。
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