【書籍化】勤め先は社内恋愛がご法度ですが、再会した彼(上司)とまったり古民家ぐらしを始めます。
奇跡と奇跡の起こる家 3
応接間でお茶をいただいた後、家の中を見せてもらった。
タイル張りのキッチンはこの家の雰囲気を損なわないように使いやすくリフォームされていて、IHヒーターでの調理が出来るようになっている。
トイレ(水洗の最新式だった)と、白いタイル貼りがなんとも可愛らしい浴室を見せてもらう。水回りを優先して案内してくれたのは若いあずみへのおばあさんの気づかいなのだろう。こまやかな人だなぁと感心する。
庭の見える、ラタンのチェアセットが置かれた縁側を歩く。このあたりでは今が紫陽花の花どきらしく、紫や青、桃色のこんもりとしたまるい花が、雨上がりの濃緑の葉に映えていた。
次に向かったのは書斎つきの奥座敷だった。
大きな掃き出し窓の上には蔦をモチーフにした透かし彫りの欄間があって、葉の部分に緑の色ガラスがはめこまれていた。目にとまりやすい欄間だけでなく、よく見れば襖の引手にも細かい装飾が施されていてる。
日本家屋についての知識はまったくないけれど、おばあさんのご主人だった人は風流人と呼ばれるようなたぐいの人だったことが想像できた。
(すごい…物語に出てくる家みたい)
心の底から良いなと思えるものに出会うと、陳腐な感想しか出てこなくなる。あずみの昔からの癖だった。
「ここが奥座敷ね。うちに来るならここに住んだらいいわ」
8畳の和室には何も荷物などは置かれておらず、黴臭さなどもいっさい感じない。
書斎には壁いちめんを使った作り付けの本棚とソファがあって、ゆったりと読書を楽しめる空間になっているようだった。
おばあさんはあずみが住むことが既に決まっているかのように、押し入れの襖は外した方が若い人には使い勝手が良いかもしれないだとか、箪笥や鏡台がいるなら持ってこさせるだとか、いろいろとあずみに気を回してくれた。
あずみの中にも、ここで暮らしてみたいという期待感がどんどん芽生えている。
あの縁側のラタンの椅子で、庭に咲く季節の花々を眺めながら読書をしたり、お茶を飲んだりしてみたい。
「あの…私、ここに住みたいです。でも本当に良いんですか…?」
おばあさんはにっこり笑った。
「あなたみたいな可愛らしい子、むしろこっちからお願いしたいくらいよ。あ、そうそう!」
やや大仰な仕草で胸の前で手をたたくと、思い出したように言う。
「もう一人同居人がいて、私の孫なんだけどね。良かったら仲良くしてやって。歳も同じくらいだから」
「そうなんですね」
あっさりあずみの同居を許すということは、女の子だろう。気が合って友達になれたら良いな、とあずみは考えた。
「もしかしたら、あなたと同じ会社かしらと思うのだけど。ええと、あなたはどこにお勤めするんだったかしら?」
「ヤマノ化成です。隣の市の」
「あら!やっぱり一緒だわ。ご縁ねぇ…」
おばあさんは目を細めて笑った。なんだかうきうきしているように見える。
その後あずみは美味しいお茶と生菓子をごちそうになり、宅建の資格を持っているという高橋氏がいろいろと契約について説明してくれた。
帰りの新幹線の時間がせまっているため後は郵送でやり取りをしようということになって、あずみはおばあさんに見送られ高橋氏の車に乗り込むと、おばあさんの家を後にした。
タイル張りのキッチンはこの家の雰囲気を損なわないように使いやすくリフォームされていて、IHヒーターでの調理が出来るようになっている。
トイレ(水洗の最新式だった)と、白いタイル貼りがなんとも可愛らしい浴室を見せてもらう。水回りを優先して案内してくれたのは若いあずみへのおばあさんの気づかいなのだろう。こまやかな人だなぁと感心する。
庭の見える、ラタンのチェアセットが置かれた縁側を歩く。このあたりでは今が紫陽花の花どきらしく、紫や青、桃色のこんもりとしたまるい花が、雨上がりの濃緑の葉に映えていた。
次に向かったのは書斎つきの奥座敷だった。
大きな掃き出し窓の上には蔦をモチーフにした透かし彫りの欄間があって、葉の部分に緑の色ガラスがはめこまれていた。目にとまりやすい欄間だけでなく、よく見れば襖の引手にも細かい装飾が施されていてる。
日本家屋についての知識はまったくないけれど、おばあさんのご主人だった人は風流人と呼ばれるようなたぐいの人だったことが想像できた。
(すごい…物語に出てくる家みたい)
心の底から良いなと思えるものに出会うと、陳腐な感想しか出てこなくなる。あずみの昔からの癖だった。
「ここが奥座敷ね。うちに来るならここに住んだらいいわ」
8畳の和室には何も荷物などは置かれておらず、黴臭さなどもいっさい感じない。
書斎には壁いちめんを使った作り付けの本棚とソファがあって、ゆったりと読書を楽しめる空間になっているようだった。
おばあさんはあずみが住むことが既に決まっているかのように、押し入れの襖は外した方が若い人には使い勝手が良いかもしれないだとか、箪笥や鏡台がいるなら持ってこさせるだとか、いろいろとあずみに気を回してくれた。
あずみの中にも、ここで暮らしてみたいという期待感がどんどん芽生えている。
あの縁側のラタンの椅子で、庭に咲く季節の花々を眺めながら読書をしたり、お茶を飲んだりしてみたい。
「あの…私、ここに住みたいです。でも本当に良いんですか…?」
おばあさんはにっこり笑った。
「あなたみたいな可愛らしい子、むしろこっちからお願いしたいくらいよ。あ、そうそう!」
やや大仰な仕草で胸の前で手をたたくと、思い出したように言う。
「もう一人同居人がいて、私の孫なんだけどね。良かったら仲良くしてやって。歳も同じくらいだから」
「そうなんですね」
あっさりあずみの同居を許すということは、女の子だろう。気が合って友達になれたら良いな、とあずみは考えた。
「もしかしたら、あなたと同じ会社かしらと思うのだけど。ええと、あなたはどこにお勤めするんだったかしら?」
「ヤマノ化成です。隣の市の」
「あら!やっぱり一緒だわ。ご縁ねぇ…」
おばあさんは目を細めて笑った。なんだかうきうきしているように見える。
その後あずみは美味しいお茶と生菓子をごちそうになり、宅建の資格を持っているという高橋氏がいろいろと契約について説明してくれた。
帰りの新幹線の時間がせまっているため後は郵送でやり取りをしようということになって、あずみはおばあさんに見送られ高橋氏の車に乗り込むと、おばあさんの家を後にした。
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