VRゲームはこうしたら最強に成れると聞いたので〜世界を喰らい尽くす粘液〜

毒肉

#7 大会準備開始

「さてと、今日もやりますか。」


 俺は何時もの様にFLOにログインしようとしていた。
 そこで一通のメールが届いている事に気付く。





件名:第一回公式イベント開催のお知らせ
差出:運営
宛名:ナターロ・モゥキィ・オリッシュ
本文:
何時もファンタジーライフオンラインをプレイして頂き有難う御座います。
プレイヤーの皆様に第一回公式イベント開催のお知らせをさせて頂きます。
参加方法はゲーム内外からアクセス出来る特設サイトよりエントリーして頂く事が出来ます。
内容については特設サイトで御確認する事が出来ます。





◆◆◆




 なるほど、バトロワ形式か。
 どうやら今回のイベントは、俺の名前をプレイヤー全体に知らしめる事が出来るチャンスの様だ。
 形式はバトルロワイヤル。
 参加者は一つのフィールドに集められ他のプレイヤーと一定距離離れたランダムな位置からスタートする。
 マップは特設の円形マップ。
 中心に大きな湖があり、それを取り囲む様に南に森林、北に雪の山脈、東に高原、西に火山と、エリアが広がる。
 体力や魔力、スタミナを回復するアイテムはイベント用に支給される物以外は持ち込み不可らしい。
あんまり俺には関係無いけど。
 レベルや新たなスキルを獲た等はイベント後も引き継ぐが、アイテムの消費や取得は引き継がないらしい。
 他のプレイヤーやPOPしたモンスターを倒すと【イベント・メダル】なるものアイテムが入手出来るみたいで、それを消費してアイテムやスキルと交換出来るようだ。
 中にはメダルでしか交換出来無いスキルやアイテムもあるみたいなので、中々魅力的だ。
 それに加え、参加人数÷10から自分の順位を引いた枚数のメダルを貰えるらしい。
 俺こういう記念品とか上位しか貰えないとかに弱いんだよな。
 目指すならでっかく、最多キルと最終生存を目標としてやって行きますか。




◆◆◆




 さて、イベントに向けての準備と行こうか。
 先ずはこの中途半端なレベルをカンストさせて進化と転職をしてしまおう。
 とは言ってもフィールドモブは弱い。
 ならば、初めてのダンジョンとやらに挑んでみようと思う。




◆◆◆




 俺がそこら辺のモンスターを食べながらダンジョンを探していると、それっぽい洞窟を見つけた。
 山の斜面に空けられた洞穴。いかにもって感じだ。


 中に入ると空気?雰囲気?みたいなのが変わって壁の松明が独りでに燃え始めた。
 この微妙な違和感が、多分ダンジョンに入った感覚なんだろう。


「「「ギギギッ!!!」」」


御出迎えしてくれたのは【群れ洞窟小鬼ケイヴ・ゴブリン・メンバー】達。


 痩せ細った子供に筋肉が少し張り付いた様な体格。
 くすんだ深緑の肌に大きく尖った耳。
 不揃いでボロボロだが相手を傷付ける事は容易に出来そうな牙と爪。
 黄色の目に蛙の様に横に伸びた瞳孔。
 ボロボロの麻布の様な布切れを体に巻き、錆びた金属や粗削りの木材で出来た様々な種類の武器を手に握っている。
 VRとは言え完成度が高過ぎて耐性が無い人はその醜悪さに悪寒が走るだろう。


 が、平然と人や蟲に絡み付いて溶かす様な人間がゴブリン如きにビビる事は無かった。


「へー、剣持ちは《剣術》槍持ちは《槍術》斧持ちは《斧術》をちゃんと持っているんだな。」


 下級のモンスターと武器は容易く溶かされて行く。


「お、投槍に投石に弓に魔法……近距離は溶かされる事に気付いて距離を取ったか、少しは賢さが有るんだな。」


 でも、無意味だ。


「《ウォーター・アロー》!……なんだ、一発か。」


 水を集めて矢形にした魔法はゴブリン達の心臓や脳天に《急所突き》されて行く。


「グギギッ!グギャッ!ギャッ!」


「ギャァ!ギギャァァァ!」


「ギャ!グギャ!ギャッ!」


 なんだコイツら、いきなり騒ぎ出したぞ。
 おいおい、ビビって慌てふためいてるんじゃ無いよな?


「ゴギャァァァ!グアァァァ!」


「ちっ、増援か!?《鑑定》!」


群れ洞窟上級小鬼ケイヴ・ホブゴブリン・メンバー】……不味いな。
 コイツらは10レベ以上、つまり俺の格上。
 ゴブリンに人質作成が効く訳ないし、ダンジョンの壁や床は特別削られない様になっている。
 つまり、前から攻撃だと思った?ザンネーン!足元だよッ!が出来ないのである。


「チッ!仲間呼びやがったか。《呼応》ってスキルか?厄介だな。俺は格下の範囲殲滅と小細工が常套手段なのに、格上とのタイマンは苦手なんだよッ!」


グキャギャガォアメイス・スタンプ!」


「クッ!早い!近い!」


 咄嗟の事に戸惑っていている俺に、ホブは勢い良く棍棒を振り下ろし、俺は躱しきれず直撃では無いものの、被弾を許してしまう。


「躱しきれない!《ウィップ・パリィ》!《ワーム・スタンプ》!《回し蹴り》!」


 触手を伸ばしてスキルに内包されている技で攻撃を弾きながら少しづつホブの体を溶かしていく。


「ギャグッ!ギッ!……ガァァァァ!」


 攻撃が当たらない事に遂に痺れを切らしたホブが構えをとる。


「させるかよ!《酸だn「グァアァルァァアバーサク!」何っ?!グハッ!」


 あからさまに攻撃力が上がった薙ぎ払いをまともに食らってしまう。
 壁に直撃した俺は落下しながら体制を整える。


「グギャルオァァ!」


「チッ!職業は【狂戦士バーサーカー】か!めんどくさいな!」


「ガギィィア!」


「クソ!格上にバフ付けんなっての!」


 空振って床を叩き付けた隙に胸元に飛び込む!


「グギギャッ!」


 ホブはすかさずに棍棒とは逆の手でパンチをしようとする。


「素手とは悪手だな!」


「ギヤァァァァ!グギァ!ゴァァァア!」


 ホブは片腕を溶かされて痛みに耐えきれず泣き叫ぶ。
 おっと、棍棒で振り払われてしまった。


「ギィ!ギィ!ガャァァァ!」


 随分と御立腹の様だ。
 面倒だな。こうして格上の相手をこなしながら触手で少しづつ雑魚を減らして行くのは。


ギギッギヤァ落石一撃!」


「ほいっ、《酸弾吐き》!」


 俺に向かって地面ごとカチ割らんとばかりに棍棒を振り下ろす。
 紙一重で躱し、その隙に酸弾を御見舞する。


ギャルァゴァスクリュー・ピアシング!」


「っぶねっ!《酸生成》《毒生成》《ウォーター・アロー》!」


 距離を取ろうとすると棍棒を勢い良く回転させながら突きをしてきた。
 横に飛んで躱す。
 毒と酸を混ぜてウォーターアローを撃ち込む。


「グガッ!ギシャァァァ!ギギギァラァァァスピン・バッティング!」


「頭を下げればぶつかりませんっと、」


 棍棒を両手に持ちぐるぐると素早く回転しながらこちらに迫って来る攻撃をしゃがんで躱し、触手を伸ばしてホブの片足を食らう。


「ガァギャァァァ!」


 痛々しく叫びながら回転しながら片足を失った事でバランスを崩し勢い良く横転する。
 その隙に残っている腕と足の付け根を食いちぎっておく。


「ギャガラァァァァ!ガァッ!ガギグッ!ゴァァ!」


 四肢を無くしたホブを怒り狂い痛みに打ちひしがれ、俺を攻撃しようとするが、その手段はコイツには残っていない。


「ガァァッ!ガァァ!」


「はい、さようなら。」


 胸の辺りにまとわりついて心臓等を溶かしてホブの体力が完全に消滅する。






▶to be continued

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