VRゲームはこうしたら最強に成れると聞いたので〜世界を喰らい尽くす粘液〜

毒肉

#1 最強に成れると聞いたので

俺、佐藤蓮。普通科の普通の男子高校生。
趣味は読書とネットサーフィン。


俺はついこの間発売されたVRMMORPG『ファンタジー・ライフ・オンライン』通称:FLOをプレイしようとしていた。
何故ゲームも普段やらない俺が新発売のこのゲームをやろうと思ったか、理由は単純だ。


触発された、だ。
普段ラノベやネット小説ばっかり読んでいるが、最近ハマった小説がゲーム無双ものだった事と、好きなネットの活動者グループがやっているゲーム実況動画を見た事により、俺の中のゲーム欲が高まってしまった。
そして、更新されたネット小説の新ページを読み終わり、「ゲームやりたいな、でもどのゲームやろうかな」と考えていたその時、丁度評価ボタンの下に新しいゲームの先行予約広告があるではないか!
この運命的な出会いを信じ、俺はハードとゲーム予約を早速ポチッた。


そして遂に、今日が正式サービスの開始日である。




◆◆◆




俺はダンボールからフルフェイスヘルメットの様な機械を取り出す。
これこそがVRゲームの今最も売れてるハード、『バチャルヘメル』だ。
横には外部操作用のタブレット端末が置いてある。
思わず「おぉ、」と声が漏れてしまう。
恥ずかしい事に、あらゆる事でVRが主流のこの時代に、VRゲームをした事が無かったのだ。少し気持ちが昂ってしまう。
早速、FLOのデータをダウンロードする。この時、携帯端末に送られてきたFLOのコード番号を打ち込んでおく。


『購入データを確認しています。』
『購入データが確認できました。』
『データダウンロードを開始します。』
『データダウンロードが完了しました。』
『ログインが可能です。』


画面に映し出された『ログインが可能です。』の文面を確認し、俺はゲーム機を被る。


視界は暗転し、やがて見知らぬ部屋に居る事に気が付く。
俺の目の前にはやはりコチラも見知らぬ女性が立っている。


「ようこそ、佐藤蓮様。私は管理AI5号“レオン”でございます。」


女性が喋り出す。


やっぱりAIって中に人が入ってるんじゃないかってくらい動作から声の発音まで人間ぽいよな。
随分昔の動画に機械的な動きをするAI搭載ロボで遊ぶ動画を見てから、今のAI見る度にを科学の力ってすげーって思うようになったな。


しかし、5号とはこのゲームを作った会社は相当マネーをかけてらっしゃる。
実況動画で見たAIは多くても三体位だったのに、これは本当にゲームの広告を見たのは運命の出会いだったのかもしれんな。


「……あの、聞いていらっしゃいますか?」


「へ?」


いけないいけない。ちょっと自分の世界に浸ってしまっていたようだ。


「すいません、ボーッとしてて。『レオンでございます』までは聞いてたんですけど……」


「では、もう一度説明させて頂きます。」


「よろしくお願いします。」


なんか申し訳ない。


「これから蓮様にはキャラメイクをして頂きます。キャラメイクについてはご存知ですか?」


「はい、勿論。」


「では、まずプレイヤーネームを決めて下さい。ゲーム世界での貴方の名前ですね。」


目の前に半透明の文字の書かれた板の様な物が現れる。


「えーと、それじゃあ…」


俺は文字を打ち込んで行く。
今回俺はこのゲームで無双して勇者とか魔王とか知る人ぞ知る達人的な、とにかく俺TUEEEE系主人公の行動を真似てトップ層に入り込む寸法である。
ネチケットは守るが。


「よし、出来た。」


「了解しました。ナターロ・モゥキィ・オリッシュ様、でよろしいですか?ゲーム開始後に名前の変更は出来ません。」


「その名前で大丈夫です。それと長いのでナターロで良いですよ。」


「了解しましたナターロ様。それでは次に種族の選択を選んで下さい。種族についての説明をさせていただきます。種族とはキャラクターの姿やスキルに影響する物です。種族は派生種や上級種に進化する事も出来ます。また、種族は条件を満たすと他系統の種族に転生したり、種族を二つ持ったりする事が可能です。」


再び半透明の板が現れる。そこには【人間ヒューム】【森耳人エルフ】【山小人ドワーフ】etc……沢山の種族名が書かれている。
事前情報では、FLOは種族や職業が兎に角多い。
魔物や動物等の人外にもなる事が出来るらしい。
何にするのか、実はもう決めてあるのだ。
スクロールして行き見つけたその種族を選ぶ。


小粘魔リトル・スライム
やっぱり無双すると言ったらスライムであろう。


「了解しました。【小粘魔】でよろしいですね?ゲーム開始後に種族の変更は進化等の手段以外では出来ません。また、人外プレイヤーは初期スポーン位置が始まりの町の外になります。更に、人間や森耳人等の幾つかの種族の町に入る事が困難となります。よろしいですか?」


「はい。大丈夫です。」


『種族スキルとして、《液状躰》《擬態》《物理耐性》《消化》《酸弾吐き》《スライム語》《状態異常耐性》《毒耐性》《酸無効》《悪食》《酸素不要》《火脆弱》《雷脆弱》を習得しました!』


初期プレイは中々にハードコアだが想像の範囲内だ。
その代わりにスキルなんかは大盤振る舞いだけど。


「では、次は職業をお決め下さい。職業についての説明をさせていただきます。職業とはスキルや行動に補正のかかる物になっています。職業は派生職業やより上級の職業への転職が可能です。また、条件を満たすと兼業として他の職業に就く事も出来ます。」


板の表示内容が切り替わり、【魔術師ウィザード】【剣士ソードマン】【盗賊シーフ】等の職業が表示される。
確か職業も馬鹿みたいに沢山あるはず。
職業はwikiなんかを見てもイマイチ決まらない。
ええい、めんどくさい。あんまり使いたくなかったけど、このゲームには種族や職業をランダムで決める機能がある。それにしよう。
スロットの様に文字がぐるぐると高速で入れ替わり、表示されたのは【戦士ファイター】。
【戦士】は前衛職で物理攻撃によっているが魔法も少し使えて、色々な武器を使ったり体術を使ったり出来る器用貧乏なバランスの取れた職業だったはずだ。
【剣士】や【拳士ボクサー】【槍士ランサー】等の特化した職業には劣るものの、色んな手段で戦えるのが魅力だ。
器用貧乏という如何にも無双出来そうなワードに惹かれてしまう。
良し、これにしよう。


「決まりました。」


「了解しました。【戦士】でよろしいですね?ゲーム開始後に転職等の手段以外では変更が出来ません。」


「大丈夫です。」


『職業スキルとして、《武器使用》《火事場》《物理攻撃強化》のスキルを習得しました!。』


こういう同じ台詞を何回も言う所とかは機械的なんだな。


「では、次にステータスの振り分けを行ってもらいます。ステータスの説明をさせていただきます。ステータスとはこのゲームの世界に置ける身体能力の様な物です。職業や種族のレベルが一つ上がる毎に10のステータスポイントを獲得出来ます。それを消費し、各ステータスに割り振って頂きます。今から50のステータスポイントを配布しますので、ステータスを割り振ってみて下さい。」


ステータスポイント:50
HP(体力):0
MP(魔力):0
SP(持久):0
STR(筋力):0
DEX(器用):0
AGI(俊敏):0
VIT(頑丈):0
MND(精神):0
INT(知力):0
LUK(運気):0


これがステータスの一覧か。ご丁寧に横にはそれぞれの意味が書かれている。
ステータスポイントは50、これをどうしようか。
無双小説のセオリーでは極振りか平均振りのどちらかだ。後はプレイスタイルに合わせて分野特化振りもあるな。
魔法使いならMPとINTとMNDに全部振るとか。
やるなら平均振りか極振りだけど、やっぱりここはロマン溢れる極振りにしておこう!


ステータスポイント:0
HP(体力):0
MP(魔力):0
SP(持久):0
STR(筋力):0
DEX(器用):0
AGI(俊敏):0
VIT(頑丈):0
MND(精神):0
INT(知力):0
LUK(運気):50


これでいい!運気極振りでドロップウハウハでぼろ儲けだ!


「問題が発生しています。ステータスが0の場合、ゲーム続行不可能なデメリットが発生します。」


「え?出来ないの?デメリットってどんな?」


「体力が0なので開始と同時にリスポーンを繰り返します。筋力が0なので体が動かせません。頑丈が0なので重量や空気抵抗に耐えきれず潰れます。俊敏が0なので体が動きません。器用が0なので武器等を握れません。その他にも……」


「その辺で大丈夫です。振り直します、はい。」


「尚、ステータスは1さえ振られれば、問題無く機能します。」


「分かりました。」


確かに、俺TUEEEE系の小説でよく出るステータスが0とかマイナスとかで生きてるのは有り得ないもんな。こんな事にも気が付か無いとか馬鹿馬鹿しい。
完全に盲点だったわ。


なんか、極振りの気持ちが薄れた。
平均振りしようかな。でも極振りしたいな。


そうか!なら運気以外を均等に割り振って余りを運気に多く降ればいいんだ!


ステータスポイント:0
HP(体力):3
MP(魔力):3
SP(持久):3
STR(筋力):3
DEX(器用):3
AGI(俊敏):3
VIT(頑丈):3
MND(精神):3
INT(知力):3
LUK(運気):23


これなら問題ないだろう。


「了解しました。ステータスの振り直しは特殊なアイテムを使う等の手段以外でする事が出来ません。よろしいですか?」


「はい。」


『プレイヤー用スキルとして《ステータス閲覧》を習得しました!』


「それでは、アバターを作ってください。尚、アバターは種族によって変更出来る要素に限度が有ります。」


レオンさんがそう言うと目の前に丸っこい液体が集まったかのようなテニスボールの二倍位の物体が目の前に現れる。
弄る所、無くね?色とか薄い水色の半透明から少し色の濃さとか透明度を変えれるだけだし。
出来るだけ透明にしとこ。見えにくいって強そうだし。


「では、次にスキルポイントの配布をさせていただきます。スキルポイントの説明をさせて頂きます。スキルポイントとはスキルを獲得、進化等をする際に消費するポイントの事です。種族や職業のレベルが一つ上がる毎に5ポイントを獲得出来ます。それを消費し、現在習得出来るスキルの一覧から選んでスキルを習得したり、スキルのレベルを上げたり、スキルを進化させたりする事が出来ます。また、他のイベントやクエストや条件のクリアによってスキルポイント消費無しで新しいスキルを習得出来たり、スキルポイントを獲得出来たりします。どんな条件かは、是非貴方の目で確かめてみて下さい。」


『スキルポイントを10獲得しました!』


「なるほど、消費をせずにスキルを取ることも出来るのか。進化にも使うとなると使い所に困るな。」


「では、次にポイント消費無しで10個のスキルの習得をして頂きます。」


板には《剣術》《火属性》《魔法適正》《工作》《毒耐性》等のスキルが表示される。
スクロールして有用そうなスキルを探していく。
おお、《運気上昇》ってのがあるな。これは取るしかないだろう。
《言語学》か、さっきもらったスキルに《スライム語》ってのがあったから、下手したら他種族のプレイヤーと意思疎通が出来ない、みたいな事があるかも知れないから取っておこう。
《水属性》や《魔法適正》《水魔法》ってのがあるな。スライムと親和性が高そうだし取っておくか。
《毒生成》とか《酸生成》もスライムと相性が良さそうだから取ろう。
あとは《隠密》とか《鑑定》みたいな無双出来そうなスキル達だ。
選んだのは
《運気上昇》《言語学》《水属性》《魔法適正》《水魔法》《隠密》《毒生成》《酸生成》《鑑定》
あと一つスキル枠が余ってるし、ここはギャンブルしてみよう。
無双ものではここでチートスキルが出る所だ。
スロットの様に文字が入れ替わり、出てきたその文字は
《早食い》。


なんだそれ!チートでも何でもないだろ!
そんなに上手くいかないか。
まあ、このスタミナシステムあるみたいだし、有用そうだから別にそれでいいか。


「出来ました。」


「了解しました。選ばれたのは《運気上昇》《言語学》《水属性》《魔法適正》《水魔法》《隠密》《毒生成》《酸生成》《鑑定》《早食い》で間違いありませんね?」


「はい、大丈夫です。」


『《運気上昇》《言語学》《水属性》《魔法適正》《水魔法》《隠密》《毒生成》《酸生成》《鑑定》《早食い》を習得しました!』


「では、次にインベントリについては説明します。インベントリとはプレイヤーだけが持つ異空間収納スキルの様な物とお考え下さい。インベントリの中のアイテムは時間経過がありません。しかし容量には限りが有ります。《窃盗》等のアイテムを奪うスキルの影響は受けません。」


無限に入る訳では無いんだな。だから沢山運ぶ為に鞄の様なアイテムに入れて運ぶけど、盗まれる可能性があるって感じか。


「最後に、初期装備をお渡しします。コチラは種族や職業によって異なります。」


『獅子の女神“レオン”から「初心者の鉄長剣」「革の上着」「革のズボン」「革の下着」「低級HPポーション」×10「低級MPポーション」×10を渡されました!』


獅子の女神?5号とか言ってたけど、もしかして管理AIって12体居たりする?……んな馬鹿な。
てか、革装備はどうやって使えってんだ……


「では、キャラメイクは終了となります。貴方のゲームライフが寄り良い物になる事を我々は心からお祈りします。」


「あれ?チュートリアルは無いんですか?」


「はい。手探りでゲームをお楽しみ頂きたいのが我々の趣向でございます。では、初期スポーン位置へ転送させて頂きます。行ってらっしゃいませ。」


再び視界が徐々に暗転して行く。




◆◆◆




目を覚ますとそこは森の中でした。
さあ、俺の無双覇道の幕開けだ!






▶to be continued

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