独身男と世界一知らない国のお姫様
第2話 お嬢ちゃん。いいビンタ持ってるじゃねえか。
剛の言葉を聞いて女の子はテーブルを強く叩きながら怒りを露にした。その勢いで、茶碗の中に入っていたスプーンが飛び出し、テーブルの上に転がり落ちる。
「ちょっと、メガネ! ご飯がもうないとはどんな了見ですの!?」
「さっき君が食べたのは、昨日の残りだったし。俺が今日の晩飯にしようと思ってたから。………それを食べさせてやったんだからありがたく思え」
「そんなことは知りませんわ! あんな美味しいものをちょっとだけ食べさせるだけなんて、やり方汚いですわよ!生き地獄ですわ!!」
「図々しいぞ。そもそも、行き倒れてた君を助けてたんだから、感謝はされど君に怒鳴られる筋合いはない。………あと、ほっぺにご飯粒が付いてる。………はい、取れた」
「あら、申し訳ないですわね。……しかし、このままではまたわたくしは行き倒れますわよ! 死んだらあなたを呪って差し上げますわ! 毎晩、顔に卵液を塗りたくってやりますわ!」
「うるさいな、分かったよ。冷やご飯がないってだけで、今からまたご飯を炊けば、」
「あら、そうでしたの。どのくらい待てばよろしいのかしら?」
「うーん……1時間くらい?」
「どうしてそんなに時間が掛かりますのよ!? もっとちゃっちゃっと作れませんの!?」
「しょうがないじゃん。今から米を洗って炊飯器にセットしてなんやかんやなんだから。そういうもんなんだよ」
剛にそう説明された彼女は、恨めし気味に、親指の先を噛んだ。
そしてそれと同時に、まとわりつくような嫌悪感を思い出す。
「ご飯が炊けるまで暇になりますわね。………そうですわ、お風呂を貸して頂けませんこと?いかにも庶民的なこんな狭い部屋にも浴室くらいおありでしょう?」
「風呂?  まあ、あるけど。………でも」
「でもなんですの? ……人が1人やっと入れるくらい狭いことは想像に容易いですわ。……あの奥のドアの方ですわね。お借り致しますわ」
女の子はテーブルに手を着きながら立ち上がり、優雅に歩を進めながら浴室、脱衣所へと向かっていった。
豪華絢爛なドレスを脱ぐ音がプラスチックのカップで計った生米を炊飯器に移す剛の耳に届く。
そして、浴室のドアが開けられた音が聞こえた。
その少し後………。
「ぎょおげぇっ、ぎゃああああっ!!」
剛の耳に容赦なくつんざく、地底まで響き渡るようなわりと汚い悲鳴が浴室から響いた。
その後すぐに、ドタドタと慌てて向かってくる女の子の足音。その様子は鬼気迫るものだった。
「ちょっと!あなた正気ですの!? お風呂場の壁中に、黒い虫がウジャウジャと這い回っているかと思いましたわ!!」
「ああ、あれは虫じゃなくて、黒カビ」
体の前をバスタオルで隠すだけの姿。
まるで地獄に落とされかけたような顔をする女の子を見ても、剛は冷静にそう返した。
すると事の重大さを理解していない剛を見て、女の子の怒りボルテージはさらに増した。
「そんなことは見れば分かりますわ!! あんな汚いお風呂で気持ち悪くはなりませんの!?」
「ほら。俺、メガネ外したらほとんど何も見えないから気にならないし」
「この………大バカ者ー!!」
剛の右頬にビターンと。
左手でバスタオルを押さえて極力体を見えないようにしながらも、少し濡れた足の裏でしっかり、床を捕まえた強烈な右ビンタが炸裂した。
「…………痛い。けど、悪い気はしない」
年頃のそして裸の女の子にビンタしてもらえるなんてそんなことはめったに体験出来ない。
そう考えれば、もう1発くらいはもらっておきたいくらいである。
「掃除道具は?」
「………はい?」
「お掃除の道具はありませんの!? このままではお風呂に入れませんわ!」
「掃除道具ねえ………。あ、そういえば……」
何かを思い出した剛は、台所の下の棚扉を開ける。そして、少し奥に手を突っ込み、ビニール袋に包まれた何かを取り出した。
「そういえば少し前に、商店街の福引きで当たった水回りお掃除セットがあったよ」
合わせて400円程で揃えられる、大きめのスポンジと液体洗剤のセット。雑貨屋の売れ残り商品である。
「貸しなさいですわ!」
女の子はそれを奪い取るように受け取った。
そしてそれを開けて、バスタオルを体に巻き付けて浴室にしゃがみ込み、洗剤を染み込ませたスポンジでゴシゴシと、壁から汚れを落とし始めた。
本当に一国の姫なのだろうか。
剛はそんな疑問を抱きながら、こっそりと浴室を覗く。
スラッとした背中に、やや大きめに育っているプリンとしたお尻。背中越しにでも十分に、ふっくらと育った胸の大きさも察することが出来る。
その色白の体には、1つも傷などはなく、年頃の女の子としても、十分に大人びた女性らしい体つきをしているのがよく分かる。
剛はそれを理解すると、2合分だけ炊くつもりだった炊飯器の米をさらに1合足して、炊飯開始のスイッチを押した。
「ちょっと、メガネ! ご飯がもうないとはどんな了見ですの!?」
「さっき君が食べたのは、昨日の残りだったし。俺が今日の晩飯にしようと思ってたから。………それを食べさせてやったんだからありがたく思え」
「そんなことは知りませんわ! あんな美味しいものをちょっとだけ食べさせるだけなんて、やり方汚いですわよ!生き地獄ですわ!!」
「図々しいぞ。そもそも、行き倒れてた君を助けてたんだから、感謝はされど君に怒鳴られる筋合いはない。………あと、ほっぺにご飯粒が付いてる。………はい、取れた」
「あら、申し訳ないですわね。……しかし、このままではまたわたくしは行き倒れますわよ! 死んだらあなたを呪って差し上げますわ! 毎晩、顔に卵液を塗りたくってやりますわ!」
「うるさいな、分かったよ。冷やご飯がないってだけで、今からまたご飯を炊けば、」
「あら、そうでしたの。どのくらい待てばよろしいのかしら?」
「うーん……1時間くらい?」
「どうしてそんなに時間が掛かりますのよ!? もっとちゃっちゃっと作れませんの!?」
「しょうがないじゃん。今から米を洗って炊飯器にセットしてなんやかんやなんだから。そういうもんなんだよ」
剛にそう説明された彼女は、恨めし気味に、親指の先を噛んだ。
そしてそれと同時に、まとわりつくような嫌悪感を思い出す。
「ご飯が炊けるまで暇になりますわね。………そうですわ、お風呂を貸して頂けませんこと?いかにも庶民的なこんな狭い部屋にも浴室くらいおありでしょう?」
「風呂?  まあ、あるけど。………でも」
「でもなんですの? ……人が1人やっと入れるくらい狭いことは想像に容易いですわ。……あの奥のドアの方ですわね。お借り致しますわ」
女の子はテーブルに手を着きながら立ち上がり、優雅に歩を進めながら浴室、脱衣所へと向かっていった。
豪華絢爛なドレスを脱ぐ音がプラスチックのカップで計った生米を炊飯器に移す剛の耳に届く。
そして、浴室のドアが開けられた音が聞こえた。
その少し後………。
「ぎょおげぇっ、ぎゃああああっ!!」
剛の耳に容赦なくつんざく、地底まで響き渡るようなわりと汚い悲鳴が浴室から響いた。
その後すぐに、ドタドタと慌てて向かってくる女の子の足音。その様子は鬼気迫るものだった。
「ちょっと!あなた正気ですの!? お風呂場の壁中に、黒い虫がウジャウジャと這い回っているかと思いましたわ!!」
「ああ、あれは虫じゃなくて、黒カビ」
体の前をバスタオルで隠すだけの姿。
まるで地獄に落とされかけたような顔をする女の子を見ても、剛は冷静にそう返した。
すると事の重大さを理解していない剛を見て、女の子の怒りボルテージはさらに増した。
「そんなことは見れば分かりますわ!! あんな汚いお風呂で気持ち悪くはなりませんの!?」
「ほら。俺、メガネ外したらほとんど何も見えないから気にならないし」
「この………大バカ者ー!!」
剛の右頬にビターンと。
左手でバスタオルを押さえて極力体を見えないようにしながらも、少し濡れた足の裏でしっかり、床を捕まえた強烈な右ビンタが炸裂した。
「…………痛い。けど、悪い気はしない」
年頃のそして裸の女の子にビンタしてもらえるなんてそんなことはめったに体験出来ない。
そう考えれば、もう1発くらいはもらっておきたいくらいである。
「掃除道具は?」
「………はい?」
「お掃除の道具はありませんの!? このままではお風呂に入れませんわ!」
「掃除道具ねえ………。あ、そういえば……」
何かを思い出した剛は、台所の下の棚扉を開ける。そして、少し奥に手を突っ込み、ビニール袋に包まれた何かを取り出した。
「そういえば少し前に、商店街の福引きで当たった水回りお掃除セットがあったよ」
合わせて400円程で揃えられる、大きめのスポンジと液体洗剤のセット。雑貨屋の売れ残り商品である。
「貸しなさいですわ!」
女の子はそれを奪い取るように受け取った。
そしてそれを開けて、バスタオルを体に巻き付けて浴室にしゃがみ込み、洗剤を染み込ませたスポンジでゴシゴシと、壁から汚れを落とし始めた。
本当に一国の姫なのだろうか。
剛はそんな疑問を抱きながら、こっそりと浴室を覗く。
スラッとした背中に、やや大きめに育っているプリンとしたお尻。背中越しにでも十分に、ふっくらと育った胸の大きさも察することが出来る。
その色白の体には、1つも傷などはなく、年頃の女の子としても、十分に大人びた女性らしい体つきをしているのがよく分かる。
剛はそれを理解すると、2合分だけ炊くつもりだった炊飯器の米をさらに1合足して、炊飯開始のスイッチを押した。
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