クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。
魔物にも言い分はあります。
静かな夜。酒場から聞こえた賑やかな声も、夜0時を過ぎる頃には、虫の声が気になる程、めっきりと静かになった。
つまりは眠れないという事だ。
しかし今回は、豪華なベッドでもなければ、寝返り1つで、床に落ちそうな小さなベッド。寝心地はちょうどよかったのだけれど、風呂場で聞いたドワーフ村の問題が頭から離れなかった。
ならば、行こう。
ただでさえ、屋敷に帰った時のアネットさんの怒り満ちた様子を創造しただけで、身震いしてしまうんだ。
俺はベッドから立ち上がり、隣の部屋にで眠る少女を起こさぬように、外に出た。
酒場以外の全ての家の照明が消えており、村を照らすのは中央にある1本の街灯だけ。
俺は村外れで見つけた立て札に従い、鉱山に続く山道に足を踏み入れた。
崖の方から風が吹き抜け、山々に反射し、足元からも砂埃が立ち上がる。
しかし、俺を包み込む風は、なんだか気持ちよかった。
そんな心地よい風。澄んだ空気。知らない土地。
俺はその先に待ち構える赤い瞳に気付いても、自らの足を止めたりしなかった。
「グヴヴヴ………」
明らかに警戒し威嚇するような鳴き声だった。
それでもだ。暗闇の中、目の前に聳え立つ魔物の心を感じ取った。何故感じ取れたかは分からない。
分からずとも、その心が冷たく哀しいものに押し潰されそうになっている。
だから俺は抱き締めてやった。その魔物を。
氷のように冷たく、海の底よりも暗い、魔物の心ごと。
「グヴヴヴ……………グル…………ヴヴ………」
魔物はどう思っただろうか。突然現れた得体のしれない「人間」に自らの冷たい心に触れられて。
そう考えた俺の頭にその魔物はそっと顎を乗せた。
どうやら、俺の気持ちが通じたらしい。
このご都合主義。魔王パワーだな。
あーあ。食われなくてよかった。
慣れない道を歩いた俺は、近くの木に寄り掛かるようにして地面に腰を下ろした。
「どうしてこんな所で、ドワーフ達の邪魔をするんだ。ガーゴイルってのは、もっと山奥に居るものなんじゃないのか?」
「………」
俺がそう言うと、ガーゴイルはゆっくりと翼を広げ、さらに山道に向かって動き出した。
俺はまた立ち上がり、着いていく。
俺の歩くスピードに合わせるように、時折振り返りながら、ガーゴイルは山道を進んでいく。
さらに15分くらい行った場所。そこには、土の壁。周りの様子から察するに、山の中をくり抜いたような洞窟の入り口に見える。
そして、土の壁には真新しい紫色の液体のようなものが付着している。僅かながら壁を掘ろうとした跡がある。
そして、月明かりに照らされたガーゴイルの口元には、見るに絶えない傷。真新しいものもあり、そこからは、紫色の血液が滴り落ちていた。
「まさかお前、ここを掘る為に、威嚇して誰も通さなかったのか………」
「グルヴヴヴ……」
俺がそう口にすると、ガーゴイルは大きく頭を振り、鋭い嘴を土の壁に突き立てた。その瞬間、ガーゴイルの口元から血が飛び、俺の足元にべちゃりと落ちた。
しかし、土の壁はびくともしない。小さな石が壁からこぼれ落ちただけだ。
「グルヴヴヴ! グルルル!!」
それでもなお、ガーゴイルは嘴を壁に突き立てた。
「バカ、止めろよ!!」
「グルヴヴ!!?」
俺が体を押さえても、ガーゴイルは止めようとしない。
自らの体が朽ちようとも、土の壁の向こう側にあるもの何かにたどり着こうとしていた。
つまりは眠れないという事だ。
しかし今回は、豪華なベッドでもなければ、寝返り1つで、床に落ちそうな小さなベッド。寝心地はちょうどよかったのだけれど、風呂場で聞いたドワーフ村の問題が頭から離れなかった。
ならば、行こう。
ただでさえ、屋敷に帰った時のアネットさんの怒り満ちた様子を創造しただけで、身震いしてしまうんだ。
俺はベッドから立ち上がり、隣の部屋にで眠る少女を起こさぬように、外に出た。
酒場以外の全ての家の照明が消えており、村を照らすのは中央にある1本の街灯だけ。
俺は村外れで見つけた立て札に従い、鉱山に続く山道に足を踏み入れた。
崖の方から風が吹き抜け、山々に反射し、足元からも砂埃が立ち上がる。
しかし、俺を包み込む風は、なんだか気持ちよかった。
そんな心地よい風。澄んだ空気。知らない土地。
俺はその先に待ち構える赤い瞳に気付いても、自らの足を止めたりしなかった。
「グヴヴヴ………」
明らかに警戒し威嚇するような鳴き声だった。
それでもだ。暗闇の中、目の前に聳え立つ魔物の心を感じ取った。何故感じ取れたかは分からない。
分からずとも、その心が冷たく哀しいものに押し潰されそうになっている。
だから俺は抱き締めてやった。その魔物を。
氷のように冷たく、海の底よりも暗い、魔物の心ごと。
「グヴヴヴ……………グル…………ヴヴ………」
魔物はどう思っただろうか。突然現れた得体のしれない「人間」に自らの冷たい心に触れられて。
そう考えた俺の頭にその魔物はそっと顎を乗せた。
どうやら、俺の気持ちが通じたらしい。
このご都合主義。魔王パワーだな。
あーあ。食われなくてよかった。
慣れない道を歩いた俺は、近くの木に寄り掛かるようにして地面に腰を下ろした。
「どうしてこんな所で、ドワーフ達の邪魔をするんだ。ガーゴイルってのは、もっと山奥に居るものなんじゃないのか?」
「………」
俺がそう言うと、ガーゴイルはゆっくりと翼を広げ、さらに山道に向かって動き出した。
俺はまた立ち上がり、着いていく。
俺の歩くスピードに合わせるように、時折振り返りながら、ガーゴイルは山道を進んでいく。
さらに15分くらい行った場所。そこには、土の壁。周りの様子から察するに、山の中をくり抜いたような洞窟の入り口に見える。
そして、土の壁には真新しい紫色の液体のようなものが付着している。僅かながら壁を掘ろうとした跡がある。
そして、月明かりに照らされたガーゴイルの口元には、見るに絶えない傷。真新しいものもあり、そこからは、紫色の血液が滴り落ちていた。
「まさかお前、ここを掘る為に、威嚇して誰も通さなかったのか………」
「グルヴヴヴ……」
俺がそう口にすると、ガーゴイルは大きく頭を振り、鋭い嘴を土の壁に突き立てた。その瞬間、ガーゴイルの口元から血が飛び、俺の足元にべちゃりと落ちた。
しかし、土の壁はびくともしない。小さな石が壁からこぼれ落ちただけだ。
「グルヴヴヴ! グルルル!!」
それでもなお、ガーゴイルは嘴を壁に突き立てた。
「バカ、止めろよ!!」
「グルヴヴ!!?」
俺が体を押さえても、ガーゴイルは止めようとしない。
自らの体が朽ちようとも、土の壁の向こう側にあるもの何かにたどり着こうとしていた。
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