クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

魔界らしいモンスター

「よし、若いのを集めろ! 土砂を片付けに行くからな!」

「はい、おやっさん」

日が傾き掛けた時間、村の中央に集められた若者が、何台かの車に分乗して出発していった。

「とりあえず、道が通るまで私の家に泊まっていって下さい。兄の部屋が空いていますし」

「マジで? ありがとう」

断る理由はなかった。元々、そちら側の手違いで連れて来られたわけだし、宿はどこに? という質問は皮肉になってしまうくらい、この村は寂れていた。

少女に案内された彼女の家に入り、晩ご飯を頂いた頃には、すっかり夜になっていた。

「お茶、いかがですか?」

「ありがとう。頂きます」

陶器に入った温かいお茶を俺の前に置くと、少女はテーブルの向かい側に座った。

「3カ月前から、兄の行方が分からないんです」

少女はうつむきながら悲しそうにそう言った。

「そうか。お兄さんが………」

「これが兄の写真です」

少女が差し出した写真を見て、俺は愕然とした。

写真の中に写る少女の兄は、俺と瓜二つだったのだ。

「おじさん達があなたと兄を間違えるのも無理はありません。ですから、どうかおじさん達を恨まないで」

「あはは。恨みはしないけどさ」

他人の空似。そっくりさん。

そんな言葉で片付けてしまうのは、あまりにも安易過ぎる。

そう思ってしまう程、少女の兄と俺はまるで同一人物のようだった。



「そろそろお風呂の時間です。村の真ん中に温泉が湧いているんで、どうぞゆっくりしていって下さい。着替えも用意しました。兄のお古ですけど」
「とんでもない、とんでもない。めちゃ助かるよ」

少女から、下着とシャツを受け取り、温泉を求めて外へ。すると、土砂崩れのあった現場へ向かっていった人達の車がちょうど帰ってきたようだ。

「おやっさん、お疲れ様」

「おお、お前か。思っていたよりもひどい有り様だった。ありゃあ、土砂をどかしても、道を舗装しなきゃならねえ。復旧まで、1週間は掛かるぜ」

なんと………。マジで帰れねえじゃん。

まあ、いいや。風呂でも入ろうっと向かった先は、村唯一の風呂場である、露天風呂だった。

崖の向こう側、柵の向こう側の遠くには、俺が帰るべき街がある。

しかし、天然温泉に浸かってしまえば、そんな事はわりとどうでもよくなった。アネットさんは、相当ぶちギレているだろうけどね。

「おう、ボウズ。てめえも風呂か」

ガタイのいいおやっさんチームが現れた。

「くそっ。鉱石は取れねえし、今度は土砂崩れかよ。やってらんねえぜ」

おやっさんは、頭からお湯をかぶり、体をゴシゴシ洗いながらそうぼやいた。

「鉱石?」

「あん? てめえ、ランゴラ細工を知らねえのか?」

「何? ランゴラ細工って」

「ランゴラってのは、この村の名称だ。まあ、通称ドラーフ村って言われてるがな。この辺りには、いくつかの質のいい鉱山口があってよ。そこで取れた鉱石を加工し、売りざはくのが俺達の収入源だったんだ」

「だった………?」



「10年前に、鉱山口に続く山道でガーゴイルが出るようになっちまったんだ。どういうわけか、そいつは俺達の前に立ち塞がった。中には無理に通ろうとして、ケガをした奴もいた。それ以来、貯蓄していた鉱石でなんとか凌いでいたが、そろそろ限界だ………」

ガーゴイル。図書館の資料でしか見た事はないけと、翼と角が生えた凶暴な魔物だ。しかし、生息地は険しい山の中や、谷。人間の前には滅多に姿を現さないはずなんだけど。

「他の鉱山で取れる鉱石は年々減ってきている。そろそろ別の場所に移住する事も考えなければいけないな」

この村の人口は30人程。その中のほとんどの住人がランゴラ細工関係の仕事に就いており、鉱石が取れないとなると、本当にヤバいらしい。

「ようやく魔王が応任したとはいえ、そう簡単に世界は変わらねえか! 兄ちゃんも、これから何か手に職をつけた方がいいぞ」

「そっすね」

このランゴラ村に住む人達は、ドワーフという種族らしい。しかし、見た目は俺と何ら変わりはない。腕っぷしが強く、手先も器用なのがドワーフ族の特長みたいだ。

しかしガーゴイルか。

魔界らしい死活問題だ。

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